VIRN視覚障害リソース・ネットワークVision Impairments' Resource Network
Last update 1997.3.21 |
「点字」ということばは、みなさんご存じですね。目の不自由な人のための文字です。 目で見る代わりに指で触って、効率よく“読み”と“書き”ができる文字です。
ここでは、
についてご紹介いたしましょう。「え、目が見える人もいるの?」 −− そうです。弱視者というのは、どんな眼鏡を かけても、視力が0.1以下の人や、見える範囲が狭い人などです。 一方、現在は視覚障害となる原因のトップが糖尿病性網膜象症で、40代以降に失明 する方が増えています。
小さい頃に失明して点字を学んだ方と比べて、年を経てから失明者すると、 触わって読み取るのにはたいへんな努力が必要になります。 そのため、中途失明者で点字をすらすらと読めるようになる人は数パーセントに すぎず、全体として点字を読める人の割合が少なくなっているのです。
でも、比率は少なくても、3万人以上の方が点字で読み書きしているのです。 やはり、点字は目の不自由な人にとって、情報を得たり伝えたりする重要な手段の 一つであることはいうまでもありません。 なお、この日本の点字使用者の数字は、実は世界でも最高の水準の数字なのです。
ここで、二つの言葉を紹介しましょう。 一つは「墨字」です。「すみじ」と読みます。(「ぼくじ」とは読まないで下さい。) 点字に対して、目で見る文字すべてを指します。「活字」「インクプリント」の言葉 も使われます。 もう一つは「晴眼者」です。「せいがんしゃ」と読みます。 視覚障害者に対して、目の見える人を指します。 (なお、教育関係では「正眼者」の文字も使われています。)
このように、六つの場所(一マス)のどこに点があるかによって点字の文字が 作られています。 その六つの場所を約3ミリずつあけて横に並べると言葉に、文になります。 点字は横書きで、1行は30〜32マスです。
(次の黒丸は、3行をセットにして見て下さい。)
●− ●− ●● ●● −● ●− ●− ●● ●● −● −− ●− −− ●− ●− −− ●− −− ●− ●− −− −− −− −− −− −● −● −● −● −● 「あ」「い」「う」「え」「お」 「か」「き」「く」「け」「こ」 ●− ●− ●● ●● −● ●− ●− ●● ●● −● ●● −● ●● −● ●● ●● −● ●● −● ●● ●● ●● −● −● −● −● −● ●− ●− ●− ●− ●− ●● 「さ」「し」「す」「せ」「そ」 「た」「ち」「つ」「て」「と」 「め」・・・
六つの点の組み合せはいくつでしょうか? −− 答えは63です。 一つの場所に点があるかないかの二通りで、六つの場所がある、つまり 2×2×2×2×2×2=64 で、六つの場所すべてに点がないのを除くと 63になります。 |
−− ●− −− ●− −− ●● −− ●● −− −● −● −− −● ●− −● −− −● ●− −● ●− −− −● −− −● −− −● −− −● −− −● 「が」 「ぎ」 「ぐ」 「げ」 「ご」 −● ●− −● ●● −● −● −− −− −− −− −− ●− −− −● −− −● −− −● 「きゃ」 「きゅ」 「きょ」 −● ●− −● ●● −● −● −● −− −● −− −● ●− −− −● −− −● −− −● 「ぎゃ」 「ぎゅ」 「ぎょ」「ぎゃ」「ぎゅ」「ぎょ」の作り方におもしろさを感じませんか? 「が」「ぐ」「ご」と「きゃ」「きゅ」「きょ」を足したのがよく分かります。
点字の手紙を書いたり、読んだりするのはそんなにむつかしくはありません。 でも、きちんとした点字の本を作るには、きちんとした「点字の文法」を修得 する必要があります。(「文法」なんて言葉を聞くとぞっとする?) 長音(伸ばす音)等や連濁、そして、マスあけ・・・。 日本語の点字のマスあけは、超ベテランでも日によって言うことが変わる?ほどです。 (超ベストセラーの『点訳のてびき』は各点字図書館でどうぞ。約700円です。)
でも、コミュニケーションのための点字なら、そこまでいいでしょうね・・・?。
点字を考えたのはフランス人、ルイ・ブライユが1825年に考案しましたが、その ときの年齢は、なんと16歳でした。高校生と同じ年代のブライユが考えた点字が いまや全世界で使われ、英語その他で彼の名前が「点字」という言葉にもなって います。 日本の点字を考案したのは、石川倉次という盲学校の先生でした。「五十音」や 「が」「きゃ」の作り方でも分かりますように、特殊な日本の文字を大変うまく 構成したので、日本の盲教育は大きく前進しました。 |
いまでは目の不自由な方でも次のようなことができるようになっています。 点字でワープロを使って墨字(一般の文字)をプリントしたり、 合成音声を併用して表計算ソフトやデータベースのソフトを使ったり、 墨字から点字へ、点字から墨字へと相互に変換したり、 光で墨字を読み取って点字や合成音声で読んだり、 通信で文書を送ったり受け取ったり、
でも、コンピュータをフルに使っても、目の見える方とまったく同じように、とは まだいきません。点字や音声では使うことのできない操作の方がずっと多いのです。 自動的に墨字を点字に変換する技術にしても、英語などではほぼ完ぺきに点訳 できますが、日本語はまだ完全ではありません。
晴眼者の世界は、グラフィックや映像が中心になってきました。「絵」は、たとえ 触わる図になったとしても、視覚障害者にとっては分かりにくいのです。
見えない方には使えなかったWINDOWSも、もうすぐ音声で少しは使えるようになろうと しています。 いろいろな開発がもっともっと進められていくことを期待したいですね。
「マック」といってもマッキントッシュではありません。 ファーストフードのマクドナルドです。(宣伝ではありませんので、念のため。) 10軒でコーヒーを飲むと、1,2軒程度でしょうか、最近は少なくなりましたが、 マックのドリンクの蓋に、点字が付いているのにときどき出くわします。 数十軒で無理にコーヒーを飲んで?聞いているうちに、熱心な店長が調査をして くれました。なんと、これはアメリカにおける視覚障害者の就労支援の一つでした。 英語の点字で「DEC」と「OTHER」と書かれている蓋で、その日の需要を 調べるのに使われたようです。(実際に使ったのかなあ?) でも、50店以上行きましたが、最初から知っている店長はおられませんでした。 あの有名なマックでも、そこまでの教育は無理なのでしょうね・・・。 |
駅の点字運賃表、自動販売機の金額表示、銀行の自動支払い機、階段のてすり表示、 街の中の点字表示もずいぶん増えてきています。 でも中には、中途半端でも点字表示さえつければ視覚障害者対策は終わり、という ような点字表示も少なくありません。
点字は視覚障害者が晴眼者と対等に生きていくための重要な手段の一つです。 もっといろいろなところで点字が墨字と対等に扱われるように働きかけたいものです。
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