出口利定 学長 The Deguchi Times

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2018年4月4日(水) 


平成30年度入学式式辞



ただいま入学を認証いたしました教育学部生1,061名、特別支援教育特別専攻科生18名、そして大学院教育学研究科教職大学院の課程生48名、大学院教育学研究科修士課程生284名、合わせて1,411名の皆さんに、あらためて、東京学芸大学の教職員を代表して心よりお祝いを申し上げます。また本日、この晴れの日をともにと、おいで頂きましたご家族の方へもお祝い申し上げます。
なお、本日、この会場にはおられませんが、大学院博士課程の方々の入学式は来週9日に行います。

いよいよ今日から、新しい学生生活が始まります。ご承知のように、本学は幼稚園教員から大学教員までの幅広い教育者養成を主たる目的とした大学であります。しかし、単なる教育者養成の単科大学ではありません。東京学芸大学は日本における教育系大学・学部の基幹大学、中核的大学と言われております。と同時に、教育の総合大学であります。教育の総合大学であるという意味は、教育を取り巻くあらゆる分野の専門家が揃っており、皆さん方の知的好奇心を満たすには十分なスタッフが揃っているということです。この点において、一般の総合大学とほぼ同じ規模の教育・研究体制を敷いています。

さらに、今日の日本の教育は大きな変革期を迎えており、情報化、グローバル化が進む現代社会のなかで、教育の課題も複雑化・多様化しています。こうしたなかで、学校と社会が一体となって教育をすすめていくために、教育マインドと様々な専門性をもつスペシャリストが連携しつつ、教育の営みを幅広く支援していく必要があります。このような時代的背景もあり、本学は教育支援課程という、日本では初めての極めて珍しい課程を平成27年度に設置しました。変革期の真っ直中にある教育現場の様々なニーズに応えうる、そして教育の基礎知識と教育支援の専門知識をもって学校の外部にあって学校現場と協働し、現代的教育課題の解決を支援する意欲、能力の育成を目指しています。この誕生間もない課程の成長と歴史を皆さんと一緒になって創成したいと願っています。
教員養成課程と教育支援課程、両課程の皆さんが、お互いにいい影響を与えあい、融合し、時には議論しながら、教育者としてのハイレベルな専門性、知性、教養を養って頂きたいと思います。

本学のような教育系大学でこれから学ぶ皆さんは、教育に情熱があり、子どもが好きであり、子どもへの愛情あふれる方が多くおられます。それ故に教育学を専攻する道を選択されました。教育現場を早い段階から知り、それによって、教育実践力を高めることが今日の教育系大学・学部には強く求められています。おのずと、学校訪問、ボランティアや様々な活動を通して子どもへの興味関心が強まり、子どもたちと共有する時間が多くなってきます。とても貴重な体験であります。
加えて教育者志望の皆さんにお願いしたいことは、専門の枠を越えて異なった分野の本を読み、同様に専門の枠を越え、違った分野の多くの人たちと意識的に交わりをもち、それによって深い思考力を養って頂きたいということです。言い換えれば、教養の学びです。教師を目指すとともに、成熟した大人への成長を期待しています。

東京学芸大学は、他の10の国立の教育大学と異なり、大学名に教育という名称はつけてありません。本学初代の学長である木下一雄先生は、昭和24年、1949年の師範学校から新制の大学への移行、つまり現在の国立大学制度への移行に際し「学芸」の名を冠する大学設立の理由として、菊地大麓の言葉を引用されています。

菊地大麓は明治時代から大正時代にかけて近代数学を初めて我が国にもたらした数学者であり、東京帝国大学、京都帝国大学の総長を務め、一方、文部行政官でもありました。木下学長は「高き知性と、豊かな教養に富む人物の育成を基盤とし、その上に、信念かたき教育の専門職を養成する明白な使命をもち、こうして皆さんを世に送り出す」と言われています。さらに「主としてスペシャリストを育成する従来の大学と趣を異にし、ジェネラリストを育成する、新しい時代の教養の大学である。こうしてはじめて新しい時代の教育者を育成することができる」と述べておられます。スペシャルな知識と共に、ジェネラルな、まさに将軍として、指揮官としての総合力、見識、実行力を育成することを目指されました。学芸、英訳しますと、リベラルアーツと、そこから醸成される教養の重要性に着目し、それまでの師範学校の反省に立って、「学芸」という名称を大学に冠することによって、新しい日本の教育の方向性を示しています。まさに本学建学の精神のコアの部分であります。草創期における木下初代学長のこの言葉は、今日なお私たちの進むべき方向を示しています。改めて皆さんにも、この学芸という言葉の重みを感じて頂きたいと願います。

さて、本学には、北海道から沖縄まで、全ての都道府県からの新入生の方がいます。新しい人とのつながりは、新しい学びと体験の場を作ります。具体的な体験から学ぶものは多くあり、リアルな問題意識や問題解決の新しい力を養います。未知の世界へ飛び込み、そこで皆さんが外来者として振る舞えることは若者の特権です。外来者は新しい文化を持ち込み、新しい実践への刺激を与えてくれます。民俗学者の柳田国男は、「漂泊者が新しい文化をもたらす」という言い方をしています。大学生は格好のよき漂泊者です。漂泊者となることは、自らの新しい知識の獲得にもつながります。
恐れることなく、未知の世界へ飛び込み、そこで賢く、生きた知識の獲得を、是非、在学中に学んでほしいと思います。新しい友人との触れ合い、サークル活動を通しての様々な外部の方との交渉、ボランティア活動、海外への一人旅、海外留学など、積極的に関わってほしいと思います。この生きた知識の獲得という点に関しては、私の経験からして、現在の大学生にやや欠けている点ではないかと思います。「知識の生きた活用の仕方」、いうならば、これまでの高等学校までの勉強の仕方と違い、現在自分が持っている知識、知恵を実社会で生かし、自らが賢く生きる糧とし、さらに自分が社会的存在として他者と交流していくことに生かしてほしいということです。突き詰めて言いますと、知識とか知恵というものが、いったい何のためにあるかということを考えてほしいということです。

現実の社会では、特定の専門家だけではとても解決できないような問題が溢れかえっています。環境危機、生命操作、医療過誤、介護問題、食品の安全、教育問題、家族とコミュニティの空洞化、性差別、民族対立など、これらの現代社会が抱え込んだ諸問題は、もはや政治レベル、経済レベルだけで対応できるものではなく、また特定の地域や国家に限定して処理できる問題でもありません。また、小手先の制度改革で解決できるものでもありません。このような時こそ、生きた知識、知恵、そして最も力となる教育の力が必要です。教育という営みは、様々な能力を身につけさせることであり、それによって、社会の中できちんと生きることができるためであります。とすれば、教育に携わる者が何をおいてもまず問わなければならないのは、人は何を知るべきなのか、何が本当に知るに値するのか、それを知ることが生きるということにとってどういう意味をもっているのか、ということであります。

最後になりますが、ここ東京学芸大学の所在地は、文学作品で有名な、武蔵野平野の南の端に位置し、平野に染みこんだ地下水が湧き出る地帯でもあります。本学の住所名は小金井市貫井北町と、井戸の井の文字が2カ所に使われており、近隣には同じ井の文字が付く地名が多くあります。地下水が豊富である証拠です。本学が使用している飲料水などの上水は、大学構内の地下から汲み上げた井戸水です。武蔵野の面影を残す本学のこの環境は訪問者からも称賛されています。是非、この自然の保全に皆様のご協力をお願い致します。
また、ここ首都、東京で学生生活を送ることは、他の地域では経験できない文化、教養社会との触れ合いのチャンスが一杯あります。是非、東京で生活することの利点を最大限に活用して下さい。
どうぞ充実した学生生活を送っていただき、卒業時には、東京学芸大学で過ごした時間はよかった、と思えるような思い出をつくってほしいと思います。
 

2014年4月1日(火)

学長就任にあたって
 村松前学長の後を受け、平成26年(2014年)4月より学長に就任しました出口利定です。東京学芸大学は日本の教員養成大学・学部の基幹大学として、「有為の教育者の養成」を基本的理念に掲げ、開学以来日本の教育界に大きく貢献してきました。東京都をはじめ、全国の学校園・大学、教育委員会、教育関連施設・企業などで、本学卒業の多くの方々が活躍されている姿に接すると、本学-東京学芸大学で学ぶなかで培われた「学芸大マインド」が深く根づいているのを感じ、大変心強く思います。   
 現代日本は少子化、グローバル化の波に洗われ、社会はますます多様化、複雑化、しています。学校を取り巻く状況も、同様に多様化、複雑化、そしてグローバル化が加速度的に進んでいます。こうした社会の変化に柔軟に対応できる学校教員の養成、教員養成システムの在り方が求められています。本学は、こうした課題に真摯に取り組んでいきます。
 学校がそのような社会の変化に対応できる教育をおこなうためには、学校そして教員を側面から支える人材の育成も不可欠です。そうした人材は、ICT活用、帰国生対応、カウンセリング、地域社会との連携、生涯学習などの領域で特に必要とされています。本学はこのような教育を支援する人材、即ち「教育支援人材」の養成にも力を注いでいきます。そして、学校教員を志す者と教育支援人材を志す者との交流を図り、「協働力」をもった、厚みのある人間形成を目指します。
 受験生のみなさんへ。本学には、教育科学、人文・社会科学、自然科学、芸術・スポーツ科学の幅広い第一線の研究者である教員達がそろっています。「学芸大マインド」をもって、これからの日本の教育界で活躍したい、という熱意と意欲をもった人を東京学芸大学は待っています。