ザルツブルグ・モーツァルテウム大学教授バーバラ・ドブレツベルガー博士 音楽分析特別セミナー実施報告書

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音楽・演劇講座主催により、ザルツブルグ・モーツァルテウム大学教授バーバラ・ドブレツベルガー博士を招聘し、3回にわたる音楽分析特別セミナーを下記の通り実施した。学内外より延べ150名ほどの参加者があり好評を得た。各回の講座では、さらに30分の質疑応答の時間が設けられた。

第1回 10月30日(水)6限 18:00〜19:30 音楽教育講義室1
J. ハイドン:交響曲第45番Hob.I:45「告別」より第4楽章
担当:山本訓久・中地雅之   
第2回 10月31日(木)5限 16:10〜17:40 音楽ホール
W. A. モーツァルト:ピアノ・ソナタ イ短調KV310より第1楽章
担当:椎野伸一・中地雅之
第3回 11月6日(水)6限  18:00〜19:30 音楽教育講義室1 
W. A. モーツァルト:ドン・ジョヴァンニ KV527より XV場
担当:石崎秀和・中地雅之 

今回のセミナーでは、「音楽修辞法」の観点から、交響曲・ピアノ曲・オペラの3作品の楽曲分析が行われた。
「音楽修辞法」は、特にルネッサンス後期からバロック期にかけて西洋音楽において重要な役割を果たした。ヨーロッパにおける修辞法は、古代ギリシャ・古代ローマ時代からの伝統を持ち、音楽修辞法は特定の「音型」がある種の「意味」を示す作曲技法である。その成立・発展には、バロック・オペラにおけるレチタティーヴォなどのモノディ様式の広がりなどが背景にあった。ドイツ語圏では、「音型法Figurenlehre」として、より厳格に作曲に用いられており、今回の講座では特に25の音型に着目して、古典派の作品を対象に楽曲分析が行われた。
さらに、各曲の背景や演奏習慣の変容についても言及があった。ハイドン作曲の「告別」交響曲では、最終楽章で演奏者が徐々に退場する演奏が現在広く行われているが、これは作曲者の指示によるものではなく、後年の出版の際に加筆されたものである。音楽的内容に照らしても、この演奏習慣は疑問視されるべきものである。また、W. A. モーツァルトのピアノ・ソナタイ短調の作曲の背景として、パリにおける母親の死が指摘されているが、それ以外にもザルツブルグで親好のあったオルガニストの死、マンハイムの保護者であった選帝侯の死、パリにおける自身の就職活動の失敗なども作曲者に大きな影響があった。歌劇「ドン・ジョヴァンニ」関しては、スペインを舞台としたダ・ポンテの脚本が、当時のオーストリアの様々なタイプの貴族の風刺となっており、音楽形式などがそれぞれの登場人物に対応している点が述べられた。
総じて、本学学生・教員にとって貴重な研究の機会を得る大変有益なセミナーであった。

セミナー通訳・報告文責:中地雅之(音楽科教育学研究室教授)

本セミナー各回の講座は、本学のシンポジウム・セミナー・講演会講師等謝金助成を得て実施された。