太陽と月・星の動き

日時:2014年 7月31日 13:30~17:00 会場:M102
担当:西浦 慎悟

 小学校の理科における天文領域の内容は、星の明るさや色の多様性も取り上げられているものの、地球上から観察される太陽・月・星の動きとその位置関係に関わるものが主となっている。これらを理解するためには、観察者の視点を様々な場所に移しつつ、天体同士の相対的な運動や位置関係を把握する必要があり、現場の学校教員だけでなく、児童にとっても複雑な単元となっている。特に、太陽・月・星の動きや見え方が取り上げられる際には、これらの空間的・時間的スケールの広大さを模倣(シミュレート)する上で、目的に応じて何らかのディフォルメがなされており、理解が十分でない教員・児童に対しては、かえって混乱を招く元になっている可能性がある(例えば、月の満ち欠けの説明図は、満月の時には必ず月食に、新月の時には必ず日食になるように見える、など)。
 このような点に加えて、太陽や月・星の動きといった内容は、「宇宙」や「天文学」という言葉から連想される華やかさや雄大さに比べて、非常に地味なものであるため、小学校の理科の中でも人気の悪い単元となってしまっている。しかしながら、このような天体の運行は、暦の作製や時刻の決定という社会生活において必要不可欠な活動と密接に関連しており、古代から中世(そして厳密には現代)に至るまで、人間社会が天文学を必要とした理由そのものである。
 そこで、本研修では、小学校理科における「天文現象の模倣(シミュレート)とディフォルメ」およびその功罪をキーワードとし、合間に「人類はどのようにして天体の運動を理解してきたか」という歴史的経緯を説明する形で、現場で取り扱えるような教材・教具による実験・演習を行った。具体的な内容は以下の通りである。

 1) プラネタリウムの紹介と学習投影の活用方法
 2) 太陽・月・星の動きの要因たる地球の自転運動・公転運動の基本
 3) 太陽の天球上での動き
  簡易日時計の製作とそれを用いた演習
 4) 月の形と位置、動きの基本
  ピンポン球と紐を用いた地球-月間の距離の体感実習
  ピンポン球と黒マジックを用いた月の満ち欠けのシミュレーション
 5) 星までの距離とその日周・年周運動の基本
  星座早見盤と理科年表を用いた星(および月)の観察シミュレーション
 6) 屋外における天体観察の基本
 7) 古代・中世から近代までの天文学概略史(特に惑星の運行に関して)

 本研修で取り上げた演習や実験は、いずれもオーソドックスなものであり、それ故に、現役教員は一度でも経験しておくべきものと思われるものである。実験材料についても100円ショップなどで容易かつ安価に入手できるものを用いて、現場での導入の参考になるように配慮した。また、演習や実験は同じ机についた2~3名の受講者を1グループとして、互いに相談・情報交換を行いながら実施できるようにした。
 特に、天文領域で頻繁に言及される月の満ち欠けの理解の難解さについては、天文学的な難しさというよりも、対象物をスケッチする際にどのように陰影を施すかという美術(図画・工作)的な問題であることを強調した。これによって、「天文領域は面倒で難しい」という先入観を取り除き、月の満ち欠けの理解に関する問題点がどこにあるのかを、受講者である現役教員の方々に明確に把握させることを狙った。