理科教育特別講演会および第5回理科教育シンポジウム

日時:2014年11月15日 14:00~16:00 会場:東京学芸大学講義棟C410

 平成26年11月15日に東京学芸大学講義棟C410 講義室において、東京学芸大学主催・理科教員高度支援センター企画の理科教育特別講演会および第5回理科教育シンポジウムが開催されました。
 出口利定 東京学芸大学学長のご挨拶に引き続いて、竹内慎一 NHKエデュケーショナル教育部シニアプロデューサーに『「何を伝えるか、どう届けるか ~理科教育番組制作の中で考えたこと~』と題してご講演をいただきました。
 竹内慎一氏は、NHK「考えるカラス」「ふしぎがいっぱい」「大科学実験」などの番組を紹介され、会場の参加者がビデオを見ながら実験の結果をいっしょに予想しました。これまで多くの番組制作に携わってこられた経験から、視聴者はただ知識を教えただけでは喜ばず、自分で考え、発見する場面を作り込むことによって初めて興味・関心を引くことができることに気づいたこと、そして子供たちに考えるきっかけを与えることが重要だという点では学校での理科教育も番組制作と共通する部分があるのではないかとの考えを述べられました。会場から多数の質問と意見があり、活発な討論が行われました。

竹内慎一氏による理科教育特別講演会

 引き続き「科学的な思考力・表現力の育成 Ⅱ」と題して理科教育シンポジウムを開催しました。金子真也氏(東京学芸大学 附属小金井中学校)、川角博氏(東京学芸大学 理科教員高度支援センター)、高畠勇二氏(エネルギー・環境理科教育推進研究所 副代表理事)戸田道寿氏(江戸川区立東小岩小学校)をパネリストとしてお招きしました。
 吉原伸敏氏(東京学芸大学 理科教員高度支援センター)より、これまでの4回のシンポジウムについて紹介があり、平成20年1月中央教育審議会 理科の改善基本方針の中で「科学的な見方や考え方を養うことができるよう改善を図る」こと、「科学的な思考力や表現力の育成」が課題として挙げられていること、そして平成24年度全国学力・学習状況調査結果を観察・実験の結果などから整理分析した結果、子どもたちの解釈・考察し説明する力に課題が見られることから、学校現場における「科学的な思考力・表現力の育成」への取り組み、課題、今後の展望を昨年のシンポジウムにおいて話し合ったが、重要なテーマであるため今回も引き続きこの議題で話し合うことを提案したいとの趣旨説明がありました。
 高畠勇二氏は、「これからの教師に求められる資質」と題して、子供たちに単に知識を与えるのではなく、科学的に調べる能力や態度を育てるとともに科学的な見方や考え方を養う能力が教師に求められているとの考えを「考えるカラス」の例を挙げて述べられました。二連手回し発電機を使って、仮説を立てて検証する実験を実際に参加者が行いました。

高畠勇二氏による発表

 金子真也氏より、「課題で始まる授業-到達目標・学習課題方式の理科授業」と題して発表がありました。東京学芸大学附属小金井中学校における化学領域授業の実践例のご紹介があり、教育実習を指導する立場から、子供たちの科学的な思考力・表現力を育成する資質を備えた教員の養成が必要であるとの考えを示されました。

金子真也氏による発表

戸田道寿氏より、小・中・高・大へと繋げる理科教育を目指す時、小学校における教育において知識・技能を習得するとともに思考力・表現力を身につけた主体的な学びができる子供を育むことが必要であるとの考えが述べられました。理科教材・設備を整えること、理科好きな先生を増やすこと、実験や観察のための専任教員を配置すること、児童生徒が観察実験の企画や準備、片付けにも係わるような授業展開をすることにより感性豊かな理科好きな子供を増やすことができるとの理念で取り組んでおられる江戸川区立東小岩小学校の理科準備室の工夫についてのご紹介がありました。

戸田道寿氏による発表

 川角博氏は、「不思議」から科学の考え方へと題して発表をされました。解決への道筋が見えていない、科学的解決能力を育てていない、真の知識と能力を獲得できていないという現在の科学教育への問題提起から、知識を教えるだけの授業から科学的知識を解決の過程で学習するスタイルへの転換を目指すべきとの提言をされました。そのためには、不思議に気付く感性を育てることがまず重要であるとの考えを述べられました。

川角博氏による発表

 その後、会場の参加者と共に討論が行われ、松川正樹 理科教員高度支援センター センター長による総括とご挨拶があり閉会しました。86名の参加がありました。