デジタルオシロスコープを利用した物理実験

日時:2015年 8月 27日(木) 9:00~12:30 会場:M102
担当:川角 博

 研修の目標は、「実験のデジタル化により、多様な実験を精度よく、短時間で行える。これにより、考える時間を授業中に確保できる生徒実験の実現を目指す」とした。
 デジタルオシロスコープは、株式会社NF回路設計ブロックから寄付していただいた4台を利用した。これにファンクションジェネレータや各種実験器具を接続して4班編成で実際に実験を体験・分析していただいた。ただし、実験器具などはほとんどが研修担当者による手作りで十分な個数が無いため、実験セットを順番に班が回って実験していくスタイルとした。

主な実験内容は、以下の項目である。

・音速の測定 位相差利用、時間差利用
 一つは、風船の破裂音を2ヶ所のマイクで捉え、2チャンネルの到達時間差とマイク間距離から測定する方法を実施した。これは直感的に原理が分かりやすい。しかし、測定精度が悪いことと、波動という概念学習の効果はあまり期待できない。2つ目は、40kHzの超音波の2ヶ所の位相差をデジタルオシロスコープで検出する方法を実施した。この方法は、精度が高いとともに、波動の時間的・空間的な様子を理解しながら解析するので、波動概念が具体的なイメージとして理解でた。また、温風・冷風・風向によるオシロスコープ上の波形の変化、音速の変化などを波動概念と計測原理の理解から、演繹的に推測し、検証できる。画面上のデータは、カーソルリードアウトにより精密な測定が可能であった。
・ドップラー効果によるスピード測定
 超音波を運動体に入射し、ドップラー効果の影響を受けた反射波と入射波とのうなりから、運動体の速さを算出した。うなり波形をデジタルストレージすることで、短時間の現象でも精密に測定、解析ができた。
・気柱端からパルス音を入射し、反射時間、反射波形変化などの分析から、気柱に定常波が生まれる仕組みなどを、仮説を立てながら推論、検証した。
・誘電体中の電波の速さ測定
 1本2mの同軸ケーブルを20本直列接続し、これにファンクションジェネレータから2MHz以上の高周波電圧を加え、同軸ケーブル内にさまざまな定常波や進行波を作り、各ケーブル接続点の電圧波形から、内部の電波の様子を探る。考え方は、気柱の振動と同様なので、推論も分析もしやすく、同軸ケーブルのポリエチレンの比誘電率まで求めることができた。
・コンデンサの充放電
 コンデンサの充放電実験、コンデンサの接続替え実験等を、さまざまな容量のコンデンサ、抵抗により容易に短時間で実験できた。さらに、デジタルオシロスコープから測定データをCSVファイルで取り出せば、表計算ソフトを使って電流積分をして電気量も簡単に求めることができた。
・LC回路による振動電流
 二重コイルとコンデンサ、乾電池で極短時間の振動電流(減衰波形となる)を作り、シングルトリガによりこれをストレージし、画面上で波形を分析して、振動電流と電気容量、自己インダクタンス、電気抵抗、コンデンサが蓄えるエネルギーとコイルが蓄えるエネルギーの関係、電圧などについて分析した。
・音の三要素
 さまざまな音をデジタルオシロスコープで捉え、音の要素と振幅・振動数・波形などとの関係を捉えるとともに、FFTにより高調波成分の分析も行った。