デジタルオシロスコープを活用した実験

日時:2016年 8月24日(水)9:00~12:30
会場:M308 担当:川角 博

 研修の目標は、「実験のデジタル化により、多様な実験を精度よく、短時間で行える。これにより、考える時間を授業中に確保できる生徒実験の実現を目指す」とした。
 デジタルオシロスコープは、株式会社NF回路設計ブロックから寄付していただいた4台を含め、5台を利用した。これにファンクションジェネレータや各種実験器具を接続して5班編成で実際に実験を体験・分析していただいた。振動電流実験は2組しか用意できなかったので、他班と調整しながら実験していただいた。他の実験では、実験器具を5班分作り、各班が同時に実験できるようにした。
 はじめにデジタルオシロスコープの特長として、測定設定の自動調整、データ・波形の保存、瞬時現象の記録、コンピュータとの連携活用などを中心に、具体的な測定場面を通して説明した。
 主な実験内容は、以下の項目である。

・音の三要素
この実験を全班同時に行うことで、デジタルオシロスコープの使い方に慣れていただいた。ここでの共通課題は、各自の声の波長を求めることである。画面上の音声波形から振動数を求め、音速から波長を算出し、具体的な波長のイメージをとらえていただいた。さまざまな音をデジタルオシロスコープで捉え、音の要素と振幅・振動数・波形などとの関係を捉えるとともに、FFTにより高調波成分の分析も行った。
・音速の測定 位相差利用、時間差利用
この実験も全班同時に行うことで、デジタルオシロスコープの使い方、ファンクションジェネレータの使い方を理解していただいた。
音速測定の実験は二つある。一つは、風船の破裂音を2ヶ所のマイクで捉え、2チャンネルの到達時間差とマイク間距離から測定する方法を紹介した。これは直感的に原理が分かりやすい。しかし、測定精度が悪いことと、波動という概念学習の効果はあまり期待できない。二つ目は、40kHzの超音波の2ヶ所の位相差をデジタルオシロスコープで検出する方法を実施した。この方法は、精度が高いとともに、波動の時間的・空間的な様子を理解しながら解析する必要があり、波動概念が具体的なイメージとして理解できる。この理解を深めるために、生徒実験と同様に温風・冷風・風向によるオシロスコープ上の波形の変化、音速の変化などを班毎に議論し、その考えと結果の予測を発表していただいた。これに正しく答えるには、波動概念と計測原理の理解から、演繹的に推測する必要がある。その考えが正しいかどうかは、実際に検証実験をして確認できる。特に、画面上のデータをカーソルリードアウトにより精密に測定することで、仮説が正しいかどうかを定量的に検討した。
・誘電体中の電波の速さ測定
1本2mの同軸ケーブルを25本直列接続し、これにファンクションジェネレータから2~20MHzの高周波電圧を加え、同軸ケーブル内にさまざまな定常波や進行波を作り、各ケーブル接続点の電圧波形から、内部の電波の様子を探る。考え方は、進行波では位相差を利用した音速測定の原理と同様であり、定常波では気柱の振動と同様なので、実験、推論、分析もしやすく、同軸ケーブルのポリエチレンの比誘電率まで求めることができた。ただし、使用したオシロスコープが350MHzの時間分解能という驚くべき性能があったので、進行波での速さが測定できたが、高校にあるオシロスコープでは難しいかもしれない。

 以上を共通実験とし、以下については各班での自由選択実験とした。

・ドップラー効果によるスピード測定
 超音波を運動体に入射し、ドップラー効果の影響を受けた反射波と入射波とのうなりから、運動体の速さを算出した。うなり波形をデジタルストレージすることで、短時間の現象でも精密に測定、解析ができた。入試問題に出てくる現象そのものを実際に確認することとなり、さまざまな検証も可能であり目の前で生じている現象なので、練習問題を解く以上に理解が深まる。
 ・気柱に定常波が生まれる仕組みから、気柱の端で音波が反射していなければならないことが推測できる(仮説)。この仮説を検証するためにデジタルオシロスコープが使える。ここでは、まず基本的な反射について班毎での議論をし、管口からパルス音を入射し、反射時間、反射波形変化などの分析から、先に立てた仮説の検証を行った。次に、先にえら多実験結果から閉管と開管での反射が自由端反射か固定端反射かの推論をし、それを検証するにはどんな実験でどんな結果が得られるべきなのかの仮説を立て、全体で議論の後、検証実験をした。
・コンデンサの充放電
 コンデンサの充放電実験、コンデンサの接続替え実験等を、さまざまな容量のコンデンサ、抵抗により容易に短時間で実験できた。さらに、デジタルオシロスコープから測定データをCSVファイルで取り出せば、表計算ソフトを使って電流積分をして電気量も簡単に求めることができた。
・LC回路による振動電流
 二重コイルとコンデンサ、乾電池で極短時間の振動電流(減衰波形となる)を作り、シングルトリガによりこれをストレージし、画面上で波形を分析して、振動電流と電気容量、自己インダクタンス、電気抵抗、コンデンサが蓄えるエネルギーとコイルが蓄えるエネルギーの関係、電圧などについて分析した。

 以上の実験データは、USBメモリに保存して持ち帰ることもできる。