生徒の相互作用を重視した物理授業

日時:2016年 8月29日(月)13:30~17:00
会場:M308 担当:川角 博

 研修の目標として、「生徒に能動的学習をさせる物理教育研究の動向を理解し,ピアインストラクションなどの相互作用型授業を実践的に体験し、実践できるようにする」とした。本研修での主な内容は、以下の通りである。

 生徒・学生に実施している物理基礎調査を、受講者にも実施し、素朴概念に関して認識を深めていただいた。FCI (Force Consept Inventory )のゲイン測定を用いて、伝統的な講義と相互作用型授業での理解度の違いについて示した。高校生向け力学問題を利用して、受講生相互によるピアインストラクションを実施し、その理解度の深まりを確認した。この中で、生徒の思考を把握しながら授業をする重要性とそのための1つの方法としてのクリッカーの利用について説明し、体験した。さらに、具体的な現象を課題として設定し、班の中での議論から、仮説の設定、検証実験の実施と分析などを通して、自ら正解の確信にいたるアクティブラーニング型授業を体験した。この体験を通して、自分の考えを他者に説明するために文章を書いたり、図を作ったりして理解の過程を見えるようにするといった行為、いったん理解の内容と過程を「脳から出してみる」(外化する)ことの重要性を理解した。つまり、学んでいることについて話をし、書き、描き、過去の経験と関連付け、日常に応用する。さらにそれを通して、自分自身の理解を学ぶのである。
 力学を中心として、ピアインストラクションを体験したが、単なるピアインストラクションだけでは、理解の効果が上がらない場面や、かえって逆効果につながる場面も用意し、形式的なピアインストラクションの危険性も示した。つまり、真の科学的確信には、自然現象の分析的理解が必須であり、目的意識をもって観察・実験を行い、そこからデータを読み取り、法則性を抽出し、推論するなど、科学の方法を身につけつつ、科学的な知識も身につけていくことの大切さを理解した。議論の前に、自ら自然界について疑問を持ち解決すべく学び、それをベースに議論を展開すべきである。
 これを実践すべく、いくつかの現象に対して、なぜそうなるのか仮説を立て、検証を求めた。生徒が納得する仮説、検証実験、実験結果を班ごとにホワイトボードを使って発表し、説明の説得力を増すために定量化も求めた。
 最後に、大学で実施しているアクティブラーニング型授業を例に、具体的な問題点を示した。学生に事前に提示する課題に対して、説明を困難と感じる原因を分析する。一概には言えないが、およそ以下のような原因が考えられる。

(1)科学の知識不足?・・・実は、小学校の知識が結構使える(支点、力点、作用点)のだが、知識が使えない。
(2)科学的問題解決の手法が未熟・・・学校・日常で育む。試行錯誤・検証・議論・発表など:根拠を持って相手を納得させる機会不足。
(3)問題解決の必然性の無さ・・・不思議だなと思える感性(価値観として育てる)が育っていない。
(4)時間不足・・・しつっこく・たっぷりと考える機会の不足。

上記(1)~(4)解決のために大学の授業でやっていることを以下に示す。
①事前の課題→②がレポート(予習)
②解決のための仮説、仮説の検証提案を書かせる・・・このために、周辺の勉強が必要→必然性ある学習(調べ学習とは違う)
③議論、検証、発表、報告をする・・・相手に説明できるまでの理解、分からないことの顕在化
④正解の判断・・・検証結果をみんなが認めるかどうか

 このようにして、事前課題を通した授業が目指す理科教育は以下のとおりである。

 科学的なものの見方・考え方を活用して、問題に気付き、主体的に問題を解決し、判断していく能力を育てる。これが科学教育として必要であり、それがアクティブラーニング型授業と言われているのかもしれない。
 アクティブラーニング型授業への需要はあるが、どうしてよいかわからない、道具もない、との声がうかがえる。しかし、研修では色紙による意見提示なども示しており、工夫次第で多くの問題は解決する。肝心なことは、生徒に本当の科学教育をすべきだと思うことである。そのためには、どんな授業が必要であるのかを具体的な授業場面で研修する必要がある。観察・実験のノウハウを教える研修も必要であるが、児童・生徒にいかにして科学の方法を学ばせるのか、その本質に迫る研修の充実が必要であろう。