同窓会ニュース 

No.2 (2002年9月29日発行)

東京学芸大学生物科同窓会には今春53人の卒業生が新たに加わり、会員数は現在1913人となりました。今回の卒業生は歴史の節目となる第50期生です。

平成14年度生物科同窓会総会

一昨年まで2月の修論発表会終了後に行われていた同窓会は、昨年度より大学が企画する同窓生集いの日「ホームカミングデー」に合わせて行うことになりました。「ホームカミングデー」とはクラスや研究室、サークル、恩師を囲んでの会、有志など、さまざまなつながりで卒業生が同日同時刻に母校に集まり旧交を温め、また、これを契機に卒業生の力を結集して教育に関する今日的諸問題を克服する力をつけるという大学の企画で本年は11月3日(日)に行われます。

生物科同窓会の企画講演のお知らせ

今回の生物科同窓会総会に先立ち、退官された先生のお話と、同窓生の研究発表を計画いたしました。お一人は1997年にご退官され、今なお精力的に活躍されている名誉教授の藍 尚禮 先生で、「土から学ぶ生き物の自然−環境教育への手がかり」という演題で、ミミズなどの土壌に生きる生物からどのように環境をとらえていくことができるのかについて講演していただきます。もう一人は、生物科24期の同窓生で、新宿区立落合中学校教諭の金井塚恭裕氏で、「海藻の光合成をどう教える?−中学校理科における開発とその実践」という演題で、生物学ベースの内容を中学校理科へどのように導入し実践するかを、長年にわたるご自身の研究からお話していただきます。

 平成14年度生物科同窓会総会

  日時:平成14年11月3日(日)

15:00〜15:30 講演「土から学ぶ生き物の自然−環境教育への手がかり」

               講師: 藍 尚禮 先生

15:30〜16:00 講演「海藻の光合成をどう教える?−中学校理科における開発とその実践」 

               講師: 金井塚 恭裕 氏

      16:00〜16:30   同窓会総会 議題:役員改選(H.14-16年度)、その他

  場所:生物学第7実験室(東京学芸大:自然館2階)

<同窓会員からのお便り>

同窓会ニュースを、より皆さんに親しんでいただくため、同窓生からの寄稿の場を設けました。昨年の生物科同窓会総会では、お二人の先生に講演をしていただきました。その感想を第25期同窓生の藤田 昇さんに寄稿していただきました。また、恩師の先生を迎え、研究室の同窓会を開いているところもあるようです。今回は旧石川研究室と旧藍研究室の同窓会の様子を、お二人の同窓生に報告していただきます。

平成13年度学大生物科同窓会企画講演の感想

常に学びたいという願望は、同窓会からのお知らせを頂いた時も強くあったが、総会に出席してその思いは一層強まった。また、久しぶりの自然館は、学窓懐かしい想いと新しい研究施設に時の流れを感じた。企画講演は実に参考になるものであった。

井上勤先生の「バイテクで戦略本部構想」は、生物競争とアメリカ経済資本の行方が富の独占をいかに効率的に結びつけいるか、日本が約15年から20年国際社会で出遅れているかを改めて痛感させられた。

日本は小渕内閣以来、バイオテクノロジーを含めたライフサイエンスを国家戦略とする会議で検討してきたが、今年1月にようやく内閣府の総合技術会議で今後5年間の推進戦略会議を策定した。確かに、テロはよくないが、アフガニスタン討伐(?)もよくない。しかし、肯定するわけでもないが、アメリカ経済政策に与した戦争はいかに日本が先見性を持たずに技術に追随した研究開発に終始しすぎてきたかを示す結果となった。つまり、無知な人間・日本人の育成につとめてきたのではないかと疑わざるを得ない。少子化の日本にあって、科学嫌いな人間を育てていたのではないかと反省する。少しお荷物な総合的な学習や選択教科を技術立国に足をおいた日本の将来を託す人物の育成という視点から、理科教育における見方・判断力に育成を考えれば卒業生として意欲見地を持てるのではないだろうか。

総合的な技術の後れと先端的な技術革新には、日本の頭脳と技術が優れているということは理解できるが、過去の遺産だけでは日本はアジアの小国に過ぎなくなると思うと将来が不安である。中等教育におけるDNA・タンパク質の基礎を、歴史の必然性から教える必要性を感じた。

岡崎先生の「生物教材の進化を的取り扱いの重要性について」では、あらためて花の造りと進化と言うことを復習した。葉から花への進化については既習しているが、果実の視点からの考察は見過ごしてきた感がある。確かに、花の生殖器官を簡単に「有性生殖器官」と即答するのは愚かであった。形態学的な回答の他に、進化論的な考察を加えねばならない。

岡崎先生の近発行の問題集はなかなかよくできている。ぜひ、ご参考あれ。私は、資料集の他に、図鑑を持たせている。安易に要求する質問に自ら答を探せる環境を整える観点と、図鑑の活用のし方と、総合的な学習の活用に、教科での備品の不足に副教材を一生の宝物とする、自書を大切にする心を育てたいと思って採用している。

大学は、卒業生にとって最高のデータベースであり、多様なものの見方を育てるために、教師の研修(?もっと気楽な勉強)を深めることができればよいと思う。ぜひ、今後ともこのような研究交流や講演の機会を設けていただき、卒業生の親睦も深められたらよいと願っている。

                     井上勤研 卒業生 藤田昇

石川研同窓会

旧石川研究室の同窓会が、初夏の日差しが勢いを感じさせる、平成14年7月28日、新宿で開かれました。石川依久子先生は昭和63年に大阪大学から東京学芸大学に着任されて以来平成9年に退官なさるまでの9年間、研究と学生の指導にあたられました。先生の専門は藻類の生理学で細胞レベルでみたカサノリの情報発現調節に関する先進的な仕事をなさってきました。しかし、学芸大学の石川研究室では対象となる藻類も幅広く、また解析の手段も形態レベルから分子レベルまでを広く網羅していました。その中から学生が自分で好きなテーマを選んで卒業研究にとりくめて、とてもやりがいがあったことを記憶しています。

今回の同窓会が開かれた直接的なきっかけは、先生のライフワークである藻類の普及と教育のための啓蒙書「人も環境も藻類から」(裳華房, ISBN4-7853-8740-8,1600円)を出版されたことでした。先生から「研究室のOB, OGのみなさんにも、本のことを伝えたいので同窓会を開いてもらえないだろうか」という打診をいただき、幹事を引き受けました。

今回の集まりではインターネットが色々な意味で重要な役割を果たしてくれたように思っています。同窓会を開くに当たって、まずインターネット上に掲示板をつくり、開催案内の葉書にはその掲示板のアドレスを記載して、みなさんに送りました。やはり、何人かの方は連絡先が分からなくなってしまっていたのですが、インターネットを通じて連絡先が判明した方もいました。また、今回の同窓会には残念ながら参加出来なかった方々も掲示板の上でコミュニケーションをとることが出来て、ネット上で同窓会の雰囲気を少しでも味わってもらえたかなと思っています。幹事である私自身も、掲示板で参加者の雰囲気をリアルタイムに感じながら楽しく同窓会の準備をすることが出来ました。

当日は前日に挙式したばかりなのに飛び入りで参加してくれた方あり、遠方からお子さんを連れきてくださった方もあり、総勢13名の方々が集まって下さいました。本当は予定さえ合えば是非とも参加したいと言ってくださった方も多くいて、幹事として嬉しいとともに申し訳なく思いました。宴会が始まると、それぞれの顔はすぐに学生時代に戻ってしまい、研究室時代の話に花が咲きました。中には当時の実験の失敗を今頃になって、みんなから糾弾されている人も..。遠方で参加出来なかった卒業生から携帯電話での参加もあり、先生を囲んで楽しい時間を過ごすことが出来ました。まだまだ語り尽くせない気持ちを残して(一部の人は結局夜中まで飲んでしまったのですが...)新宿を後にしました。  

岡本 忍(第42期生:平成6年卒)

藍研同窓会

藍先生が御退官され7年になります、藍研究室の同窓会は毎年という訳にはいきませんが「藍先生を囲む会」という名称で開いています。同窓生は学校教員が多いので皆さん都合のつけやすい時期の10月に開催していましたが、ホームカミングデイに合わせて、同窓会を開催するようにとのことで、昨年は11月3日、生物科同窓会総会終了後に行ないました。同窓生は全国各地にいらっしゃるので、できれば都心で交通の便が良いところで行った方が皆さん参加しやすいのではとも考えたのですが、同窓会総会の後で時間的にきついということもあり国分寺のレストラン(メランツァーネ)で行うことになりました。私は実は数年ぶりに同窓会に出させてもらったのですが、藍先生をはじめ26名もの方がお忙しいところ出席してくださいました。当日は、残念ながら雨でしたが、遠くは静岡から子供を連れて参加してくれた方もいました。久しぶりに藍先生や同窓生と顔を合わせ、皆さんすっかり話がはずみ大変盛況な会となり、2時間があっという間に過ぎて行きました。

 実は、藍先生が御退官される前から、その後のことを見据えて、この「藍先生を囲む会」は開催されていました。藍研究室の80名あまりの卒業生がまとまって、藍研究室同窓会が組織立っているのには、同窓生の山口直己・公代さん御夫妻の御尽力に依るところが大きいのです。毎回、同窓会を開くときには積極的に働きかけ、同窓生をまとめてくれました。それだけでなく卒業後は頻繁に研究室を訪れてくださり、研究室の学生の指導もして下さいました。残念ながら山口公代さんは亡くなられました。あらためて、公代さんの限り無い情熱に敬意を表し感謝申し上げたいと思います。

藍先生は現役のころから学生の教育、指導に大変力を注がれました。今も「科学教育研究会」の理事を勤められ環境教育の分野でご活躍されています。現役時代の姿勢は今も変わることなく、御退官後もBM(Bi-Monthly)セミナーと称して卒業生のために勉強会を開いて下さっています。ホームカミングデイの同窓会、そしてこのような会を通して藍研究室は先生御退官後もかなり高いactivityで活動を続けております。   

M.I.記

<大学での出来事>

最近、東京学芸大学で起きたこと、これからのことについて、同窓会事務局からお伝えします。

生物学科主催の大学公開講座実施される

平成14年8月22日から3日間、東京学芸大学公開講座「生命の不思議実体験―身近な生き物の観察から遺伝子DNAまで−」というタイトルの公開講座が実施されました。この公開講座は理科の各学科で毎年順番に行われているものですが生物学科としては平成8年以来6年ぶりの実施となりました。現職の先生と一般市民を対象に自然科学のおもしろさを体感し感動体験をして頂くことを目標に掲げて、企画したもので内容は以下のようでした。


1日目:紅色のトサカノリや褐色のモズクも光合成をする(片山)

人・水・生物−河川環境の創造と珪藻によるその評価−(真山)

ニワトリ胚を用いた「命」実体験」(高城・原)

2日目:校庭で見られる見られる身近な“虫”の観察(高森)

   植物の「抗酸化力」に迫る!〜植物が作るポリフェノールのパワー(中西)

   3日目:DNAに親しむ(飯田・岡田)

     コオロギの感覚神経の活動を眼で見て音で確かめよう(吉野)


生物学科の教官(今回は9名)により実施された本公開講座はおおむね好評のうちに終了しました。参加者は現職の先生がほとんどでしたが朝9時から夕遅くまで実験・観察に熱心に取り組む姿に教官もつい熱が入り充実した3日間となりました。最後に20周年記念会館2階で懇親会を開き幕を閉じました。宣伝が足りなかったせいもありますが同窓生の参加が今回はなかったのが残念でした。本学の公開講座は大学のホームページ上でお知らせしていますので機会あればチェックされることをお勧めいたします。懐かしい母校を訪れリフレッシュをはかるのもよいのではないでしょうか。独法化の間近い国立大学ですが学芸大の将来を考えますと、他学科と比較しても歴史ある本生物科同窓会組織と大学との連携をより強固なものにしてゆく必要があると思います。公開講座も同窓生への連絡体制なりがもう少し検討されていれば参加者も増えていたにちがいありません。同窓生の皆様の知恵を結集し大学と同窓会との連携をより緊密にするための積極的な方策、ご提言がありましたらご一報下さい。

 

平成14年度卒業論文および修士論文発表会のお知らせ

昨年度より、同窓会からのご案内がこの時期に変更されたため,1月中旬に卒論発表時間の詳細を、ハガキ通知できなくなりました。発表時間の詳細は決まり次第(1月上旬を予定),生物科同窓会のホームページでお知らせします(経費節減のためご迷惑をおかけしていますが、ご了解願います)。

平成14年度学部卒業論文発表会

  日時:2003年2月8日(土)・9日(日)

  場所:講義棟(N411)を予定

平成14年度大学院修士論文発表会

  日時2003年2月15日(土)

  場所:未定