同窓会ニュース 

No.3 (2003年9月28日発行)



東京学芸大学生物科同窓会には今春45人の卒業生(第51期生)が新たに加わり、会員数は現在1954人となりました。まもなく会員数が2000人を越えますが、1期生からの名簿があり、かつ同窓会活動を行っているところは、学芸大の中でも数科しかありません。今秋、全学的な同窓会組織、東京学芸大学全国同窓会(仮称)が設立されることになりましたが(同封別紙を参照のこと)、今回の生物科同窓会ニュースは、この全国同窓会とのタイアップにより発送しています。生物科同窓会としては従来にも増して、細やかな情報提供を行っていきたいと思いますので、会員の皆さまのご協力をよろしくお願いします。

◆平成15年度生物科同窓会総会

本年も昨年同様、生物科同窓会総会を大学企画による「ホームカミングデー」に合わせて行います。当日は学園祭である「小金井祭」の中日(11月3日)にあたりますので、旧友を誘って、また、ご家族連れで久しぶりに大学を訪れてみてはいかがでしょうか。会員の多数来場をお待ちしております。

生物科同窓会の企画講演のお知らせ

例年好評をいただいている、退官された先生のお話を、今回も同窓会総会に先立ち企画しました。今年は、2000年に退官され、今なお精力的に研究を続けておられる名誉教授の武田幸作先生に、花の色の発現の仕組みについて、最新の研究の話題を盛り込みながら講演していただきます。

 平成15年度生物科同窓会総会

  日時:平成15年11月3日(月:文化の日)

16:30〜17:10 講演「花色の発現の仕組みにつ いて -青色を中心として-」

  講師 武田幸作 先生

17:10〜17:30 同窓会総会 議題:F類卒業生の同窓会加入について、その他

  場所:S310教室 東京学芸大(講義棟)3階




◆同窓会員からのお便り

昨年の生物科同窓会総会で開催した藍先生(97年ご退官)と金井塚氏(24期76年卒)の講演には40名近い参加者が集まりました。この講演の感想を同窓生の石井雅幸さんに寄稿してもらいました。また、今年の研究室同窓会の報告は、旧鶴原研究室にスポットを当てました。レポーターは同研究室卒業の笠原秀浩さんです。

平成13年度学大生物科同窓会企画講演の感想 −「学び」、「学ぶ」を考える機会を得て−

新建物であるS棟310教室のパソコンが並ぶ部屋に、同窓生が一堂に会して催された総会並びに講演であった。我々が在籍していた頃にはなかった新しい部屋でありながら、なぜか懐かしさを感じながら講演が始まった。在籍を共にした同窓生もあれば全く在籍年度を同じくしない同窓生もありながらなぜ、このキャンパスで学んだ時を思い出しながらこの席に座っているのだろうか。そんな自分としては不思議な思いを抱きながら講演のなぜか心地よい先生の声を聞いていた。

講演の第一演者は、藍 尚禮先生である。演題の「土から学ぶ生き物の自然−環境教育への手がかり」は、藍研究室の同窓会のおりに伺った内容を更に発展させたものであった。このお話を最初に伺ったときには「環境ホルモン」といった言葉がまだ世にあまり知れていないときであった。「雌雄のバランスが極端に変わってきてしまっている海にいる生物種」の話から始まった。そして、この危機はいずれは我々人類にも及ぶであろうと言うことであった。そして今回の講演から、その物質が300種類を越していることが、また、その危険は子どもたちが最も好む「泥遊び」「砂遊び」の対象である土壌中にあることも分かった。かつて、環境問題は「大気」「水」「音」に限られていた。しかし、陸上生物の生態系の基盤である土壌にその危険が及ぶと言うことは改めて「環境」をより「グローバルに」また、「ミクロに」見ていく力を養うことが求められることを実感し、環境教育を推進すべき生物科出身の現場教員の責任の重さを感じながら講演を聞き終えた。第二演者である金井塚恭祐さんの、海藻の光合成を中学で教える教材開発と実践についての講演からは、現場の生活指導等課題多き公立中学校教員をやりながら、自らが追い求めてきた植物の研究を続けながらそれを教材へとつなぐ意気込みを強く感じさせられた。金井塚さんとは、東京都の教員研究生で同期であっただけに、私個人にとっては刺激的であった。いつもながらの「これをやり抜いているぞ」と言う気迫を感じた。

講演の内容に引き込まれている内に講演会は終わりを迎えていた。ふと我に返ると、最初の「なぜ懐かしさを感じたのか」という疑問に1つの答えが見えてきた気がした。

かつて、私が本学を卒業する際に「現場の教員生活は、忙しさに振り回されるかもしれない。しかし、常に自分の位置を見定め、自分はこれができるという自信がもてるものを持ち続けることが大切である」と言われた先生がいらした。その先生の口癖は「小学校教員こそ、自分の専門をしっかりともって、子どもたちの前に立つべきだ」であった。だからこそ「本当の学問を学ぶ」のであり、「本当の仕事ができる」ということなのであろう。

大学を卒業してある程度の時間を過ぎて、今、「学ぶ」楽しさと、意義を感じ、自らの「学び」を作る時が来ている。そのことを改めて思い返し、強く実感する時をこの講演を通して感じた。この雰囲気が、かつての「学ぶ」を思い出させ、懐かしい顔、懐かしい声が、そして刺激的な話が私の脳裏を過去の時間に戻させ、「学ぶ」から「学び」をつくっていったそれが懐かしさであったと感じている。

藍研究室卒業生 石井雅幸 (29期81年卒)(千代田区立九段小学校教諭)



鶴原研同窓会

鶴原喬先生が東京学芸大学をご退官されて3年の月日が経とうとしています。思い出多い鶴原研究室が学芸大になくなりたいへん残念ですが、実はまだ鶴原研究室は積極的な活動を続けていますので、ここでは紙面を借りて、その一端をご紹介したいと思います。

 先生はご退官後、東京学芸大学名誉教授となられ、新潟県環境衛生研究所で所長をなされました。私たちは、ご定年後は杉並の豪華な自宅で、悠々自適な毎日を過されるのだろうと勝手に想像していたのですが、先生は、なんと東京から新潟に毎週車で通勤される日々を選ばれたのです。平日は新潟で所長として激務をこなし、週末は東京へ戻って、研究室の学生にいつも手作りのパンやピザなどご馳走してくれた奥様と楽しい時間を過ごされていたのだと思います。

 しかし、この間、先生はたいへんな難病にかかってしまったのです。2002年夏、病名が確定しました。頚椎後縦靭帯骨化症。別名、脊椎管狭窄症です。人体の重要な部分である脊髄が圧迫され、各部位に支障をきたします。先生はすぐに入院・手術することにしました。脊椎管にセラミックスの板を入れ脊椎管を拡大し、脊髄の減圧を施す大きな手術でした。術後はたいへん順調でリハビリの後、2002年秋には退院されました。今のところ、先生には杖が欠かせませんが、大柄なお体には杖がたいへん似合っており、その姿は西洋のどこかで見たことのある紳士のようです。

 新潟県環境衛生研究所の2年間のお勤めの後、今度こそゆっくりされるかと思えば、先生は今春新設されたばかりの山梨にある健康科学大学へ、教授として開校と同時に赴任されたのです。この大学は高齢化社会へと続く日本の現状にまさに見合った4年制の大学で、理学療法学科、作業療法学科などからなる学部をもっています。先生曰く、「患者として行っているわけではありません」とのことでした。

 学芸大学に鶴原研究室は既にありません。しかし、インターネット上には鶴原研究室は今でも存続し、積極的に活動を続けています。研究室の名前は「居酒屋つるちゃん」と少々名前の変更はあったもの、懐かしいメンバーでいつも言葉を交わしています。インターネット上ではなく、実際に鶴原研メンバーが一同に会し鶴原先生を囲む会も、盆と正月のほか、年数回にわたって開催しています。何かにかこつけて、みんなで集まるという体質は学大当時から変わっておりません。学大の鶴原研当時もいろいろな研究室の方々が鶴原研に顔を出されていたかと思いますが、現在も来室を受け付けております。ぜひ一度お顔を出してみてください。鶴原先生を筆頭に鶴原研メンバー全員、皆さまを心よりお待ちしております。まずはインターネット上からどうぞ!

http://www9.big.or.jp/~kasah/turuhara/

鶴原研究室卒業生 笠原秀浩 (47期99年卒)(西東京市立保谷小学校教諭)



◆近年の同窓生の就職状況

過去3年間に卒業した同窓生の就職状況をお伝えします。昔は卒業生の9割以上が教職に就いていた時代もありましたが、教員免許取得を必要条件としない教養系のJ類(11年前に最初の卒業生が誕生)ができたこと、また、少子化に伴う教員採用減のあおりを受けたこともあり、卒業生に占める教員就職率は近年では半分を下回っています。その反面、大学院への進学者が増加しています。また大学院で修士を得た後、他大学の博士課程に進む卒業生も増えてきました。実際に就職した者に限っていえば、教職の占める割合は53%(12年度)、48%(13年度)、63%(14年度)となっています(図1)。企業への就職は、経済不況も手伝って、やや低調気味ですが、企業社会で活躍する同窓生の数は年々増加しています。時代の変化と共に、同窓生の卒業後の進路も多様化してきたようです(表1)。 



◆大学での出来事

平成16年度から本学もいよいよ法人化されます。これに伴い大学の設備・施設の安全管理に関する法規が人事院規則から労働安全衛生法に変わります。その為、自然館もこの法に対応する実験室の整備工事を余儀なくされることになりました。手始めに、C棟(もともとEの字型に作られた研究棟に昭和54年新たに増設された研究棟の一角)の工事が本年末頃より始まります。当座は実験室を2方向非難口を持つ部屋に改造したりドラフトチェンバーを集約化するなどの工事で、来年3月に完成予定です。次年度以降予算が付き次第、耐震補強を含む自然館全体の大型改修工事が開始されます。そうなると1年近くは、学生も教員も不自由を強いられることになりそうですが、万物流転の掟に抗ずるすべもなく静観している状況です。来年の同窓会ニュースでは、より具体的な状況をお伝えできるものと思います。

社会人大学院コース

東京学芸大では現職教師を主な対象とした、社会人向け大学院修士課程のコースを充実させています。従来は14条特例制度を利用しない限り、現職の修士入学は困難でした。しかし、現在はこの制度を利用せずとも修学可能な、昼夜間コース、夜間コース、短期コース、長期コースが開設されています。これらのコースにより学位を取得した生物科同窓生はすでに4人となりました。また、現在4名の現職教員の方が生物系の研究室で修士の勉強をされています。

問い合わせ・入学相談は大学院室大学院教務係まで。 電話: 042-329-7704



卒業論文・修士論文発表会のお知らせ

 平成15年度学部卒業論文発表会

   日時:2004年2月7日(土)・8日(日)

   場所:講義棟(S103)を予定

 

 平成15年度大学院修士論文発表会

   日時:2004年2月14日(土)

   場所:未定


 プログラム詳細は来年1月中旬に,生物科同窓会のホームページでお知らせします。



◆同窓会新役員

 平成14年度の生物科同窓会総会において役員改選が行なわれました。4年に渡り幹事長として同窓会の発展・充実に貢献していただいた小林徳夫さん(9期)の後任として遠藤純夫さん(10期)(現都国分寺市教育委員会科学センター嘱託)が選出されました。小林さんは甲類理科を昭和37年にご卒業され立川市立第一中学校校長、都国分寺教育委員会科学センターの嘱託員として活躍される一方、東京学芸大の非常勤講師として中等理科教育法Iを教えておられます。副幹事長、書記、会計、及び会計監査は各2名が引き続き留任ということが決定しました。遠藤幹事長の新たな体制のもと、さらなる会の充実、発展のため、役員始め会員の皆様の一層の御協力をお願い致します。



編集後記

今年も研究室の同窓会の記事を掲載しましたが、いかがでしたでしょうか。現在は卒業研究は必修ですが、過去には必修でなかった時代もあり、研究室とのつながりを持たない会員も多くおられると思います。そのような会員の近況も伝えられるようにすることも大切です。一人100字〜200字程度の近況報告を、各期同窓生から頂戴し掲載することなども現在検討中です。同窓生に有益な紙面作りをするため、ご意見、ご提案等、皆さまからのご一報をお待ちしております。