東京学芸大学 男女共同参画推進本部
Office of Promoting Gender Equality at Tokyo Gakugei Univ.

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第20回男女共同参画フォーラムを開催しました。

【掲載日】2015.11.17

2015年11月1日(水)、第20回男女共同参画フォーラムを開催した。小金井祭期間中を利用して午後1時から4時30分まで 「若者の貧困とジェンダー~複合的な排除の現状~」をテーマに、本学教員(社会科学講座)の山口恵子さんと、社会福祉 法人子供の家アフターケア事業「ゆずりは」所長の高橋亜美さんにご講演いただいた。

まず山口恵子さんには「若者の貧困とジェンダーを考える」と題して50分ほどのお話をお願いした。日本において「貧困」が問題化する経緯や地域差をおさえつつ、貧困が貧困だけにとどまらない複合的な問題であること、なかでも若年女性の貧困が見えにくい状況にあることなどをふまえ、非正規労働化の進行や職住一体化した仕事の減少、ケア労働の拡大、性産業からの引力といった問題と未婚化や離婚率が増加するなか、結婚していないと生きにくい日本社会の状況や、女性の地位の低さ、性別役割分業の拘束など、企業福祉と家族福祉の双方から女性が排除される現状が指摘された。報告ではそれらを心の問題や自己責任論に回収するのではなく、社会構造の問題として批判的にとらえ、性別役割分業を解消すること。そして家族に頼らなくても非正規労働であっても、生活を維持できる収入が得られるような労働機会を確保することが重要であることが強調された。

高橋亜美さんには「子どもの貧困の実態と課題~社会的養護の子どもたちの支援を通じて~」と題して、やはり50分ほどの講演をお願いした。絶対的な貧困に陥る手前の相対的な貧困下にある子どもは、見た目ではそれと識別できずSOSも発信されにくいこと。また、学歴が重視される社会にあって進学率が児童養護施設で特に低いこと。退所後も安心できる状況にはなく、虐待のトラウマをかかえ親や家族を頼ることができず失敗も立ち止まりもできない緊張状態にあること。低学歴で資格のないハンディを背負っていることなどが説明された。そして、にもかかわらず福祉の窓口ではそれらに気づくことができず、また気づこうとしないがために問題が存在しないかのように扱われる現状をふまえ支援活動としては一歩踏み込んだ取り組みが重要であることが強調された。

後半の部では今後の展望や教員としての対応についての質疑応答を経て、本学教員(生活科学講座)の馬場幸子さんと専門研究員(児童・生徒支援連携センター)の林明子さんにコメントしていただいた。馬場さんからは両報告に共通する事項として、問題が見えにくい・見ようとしない・見えない状況があることをふまえ、ソーシャルワーカー育成や教員の意識を高める観点から、学級運営においてさまざまな問題が「現象」として顕在化する背景に、貧困の問題が隠れていることに配慮すべきであることなどが指摘された。また林さんからは貧困家庭においては親を支えるという形で子どもが福祉制度の不足を補っていることや、日常的に家事をしている子どもに対していかなる声かけをすべきかといった問題が指摘された。

さらに男女共同参画支援室で協力してもらっている学生サポーターから備瀬珠代さん・井上敦司さん・徳光有沙さん・中村彦斗さんに参加してもらい、学生座談会を開いた。セクハラ問題について相談窓口の対応が劣悪である点や、親の手を離れる年齢の子どもが警察や児童相談所を逃れて閉鎖的なコミュニティを作る状況、また「可視化」することにともなうステレオタイプな貧困イメージをいかに回避するかといった問題が議論された。その他性別分業観の根強い職場への対応策として、問題をそのつど指摘するにとどまらず、女性同士が連帯することの重要性などが指摘された。参加者は82名(本学教職員16名、本学学生35名、地域住民7名、その他24名)。(文責 及川英二郎)

山口恵子さん

山口恵子さん

高橋亜美さん

高橋亜美さん

コメンテーター:馬場幸子(右)さんと林明子(中)さん

コメンテーター:馬場幸子(右)さんと林明子(中)さん

学生の質問に答える山口さん

学生の質問に答える山口さん

セッション中の学生サポーター

セッション中の学生サポーター

会場の様子

会場の様子