研究科案内

学長・研究科長挨拶

東京学芸大学 学長  出口 利定

東京学芸大学連合学校教育学研究科は、大学における教員養成の充実と学校教育の発展を目指して、我が国では初めての教員養成大学・学部に設置された博士課程です。初めて学位が授与された1999年3月以来、2017年度時点で380名を超える修了生を世に送り出し、その約8割は博士号を取得され常勤の大学・短大の教員として、あるいは研究者として教員養成に携わっておられます。現在の日本においては大学院博士課程修了者でも学位取得後の進路に苦労されている方が多い中、本研究科の実績は極めて高く、教員養成にあたる大学や学部の教育研究者の後継者育成という本研究科の趣旨は相当程度達成していると思います。

これからは教員養成系大学・学部に設置された博士課程修了者の使命として、教員養成の理論的、学問的基礎となる「教員養成学」を創出し、確立する地道な努力を切に願っています。大学における教員養成の意味を今一度振り返り、今日、教員養成系大学・学部が厳しい批判に晒されている現状に対して、その改革の一端を担って頂きたいと思います。

2018年度を以て全国の国立教員養成系大学・学部に教職大学院が設置されました。それによって教職大学院修了者が今後は博士課程へ進学してきます。日本の教員養成及び研修のあり方に果たす自らの使命と将来設計を改めて検討し、そのための改革を推し進め、日本の教育を先導する役割を担う東京学芸大学連合学校教育学研究科を構築しましょう。

埼玉大学 学長  山口 宏樹

まず,みなさんが連合学校教育学研究科で学問を志されることに深く敬意を表します。

私が土木工学分野の大学院博士課程に進学したのは1977年,40年以上も前のことです。自分の研究能力に自信が持てず,思い悩んだ末の,恩師に背中を押されての進学でした。このこともあり,研究に対する当時の新鮮な気持ちと決意は今でも記憶に残り,今の私にとってとても役立っています。みなさんも,博士への途はそれぞれに異なるでしょうが,最初に描いた博士課程での研究への想いをいつまでも大切にして下さい。

私は,埼玉大学長として,研究に関し3つのことを博士課程の方々にお話ししてきました。

第1は,研究は高みを目指した挑戦と失敗の繰り返しであり,情熱なしには為し得ない行為であること,第2は,偶発的な出来事や経験を意味するセレンディピティを研究で起こすには,旺盛な好奇心と執着心,観察力と洞察力が必要であり,単なる幸運ではないこと,そして第3は,研究活動の経験を通じて自らの研究の意味,すなわち「何のための研究か」について考え直し,社会との接点について問題意識を持つべきこと,です。

みなさんは大学院で多様な学問に触れ,研究を通じて多様な,時として融合的な経験を積みます。研究成果やセレンディピティに程度の差こそあれ,みな,情熱を傾け,高みを目指して挑戦と失敗を繰り返し,研究という行為を成し遂げます。そして,このことが研究者としての自信につながっていきます。

東京学芸大学連合学校教育学研究科は,単なる教科指導の域を超えて,広域科学としての新しい教科教育学の発展を追求する場です。広域科学の捉え方は,時代によっても異なるでしょうし,みなさん一人ひとりに委ねられます。このことは,まさに「何のための研究か」を考え直すことにもつながります。みなさんには,自分自身の広域科学としての教科教育学の研究にがむしゃらにチャレンジし,それを極めることを大いに期待します。

千葉大学 学長  徳久 剛史

東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科は,後期3年の博士課程のみから成る国立4大学の連合大学院独立研究科です。千葉大学は埼玉大学や横浜国立大学とともに,その設立時から参加しています。千葉大学では,世界と連携した教育研究活動を積極的に推進し,グローバル化社会をリードする人材の育成を目指しています。その中でも教育学部は,前身の千葉師範学校の時代から「学ぶ楽しさを伝える教育者の養成」をモットーとして,指導的立場に立つ教育者の養成を目指しています。本研究科では構成大学の一員として,学校教育の発展を担う研究者の養成を目指して,高度の研究能力とともに豊かな学識を養う教育を行っています。

さらに本研究科の特筆すべき点は,教育科学,教科教育学,そして教科専門科学に関する研究活動や研究指導が,本研究科を構成する4大学の研究者が一体となって連携しながら行われていることです。その結果,研究面では「広域科学としての教科教育学」を創造的に発展させてきたことや,人材育成面では研究能力ばかりでなくマネージメント能力を兼ね備えた博士人材の養成が行われてきました。修了生の多くは,教員養成系大学・学部の研究者や学校教育関係の専門職従事者など,日本の教育学分野のリーダーとして活躍しています。

学校教育は,人類の発展と豊かな社会基盤の形成にとって必須であると同時に,何時の時代にも科学の進歩や社会状況の変化への対応を強く求められています。特に今日の世界は,グローバル化やAIの進化などで急速に変化しており,学校教育に対する社会からの要請も著しく多様化しています。この多様な要請に応えるための研究課題の多くが,いまだ未解決で残されています。そのような現代社会の求める研究課題が本研究科で探究されることにより,学校教育の発展ばかりでなく新たな知の創造が加速されることを強く願っております。

横浜国立大学 学長  長谷部 勇一

連合学校教育学研究科は,大学における教員養成の充実と学校教育の発展を目指し,教育の理論と実践に関する諸分野について,高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養うことを目的としています。この目的実現のためには、教育と研究の両輪が必要ですが、実は、この研究の一翼を担うのが博士院生の皆さんです。研究とは勉強とは異なり、知られていることを基礎にして、今まで未解決だった課題や新しく発見された未知の課題に挑戦することです。そして、それは教員にとっても、問題意識の共有、先行研究のサーベイ、論文執筆などの研究指導を通じて大きな刺激となり、ひいては学内の研究の活発化に貢献することになります。そして、このプロセスは研究室単位で行われるため、修士、学部の学生に対する知的向上心の涵養にも大いに寄与することになります。

また、大学或いは研究科には学風があります。横浜国立大学は、実学の伝統と横浜という国際性を重視した教育と研究を行っていますが、それぞれの大学も特色ある研究分野、あるいは研究スタイルなどがあり、博士学生の養成は、この学風を後世に伝えるという意義も有しています。東京、千葉、埼玉、神奈川という日本の首都圏は、大都市固有の教育問題が先鋭的に現れる地域であり、またグローバルな教育の諸問題についても海外と積極的に交流できる可能性の広がる地域でもあります。今後、研究科を構成する4大学の学風をうまく融合することで、新しい学風が構築されるよう協力して下さい。

さらに、学生の皆さんが博士学位を取得し、研究者或いは高度専門職業人として活躍することは、サイテーション(学術論文の引用数)やレピュテーション(評判)を高め、本研究科の価値の向上に繋がります。皆さんが、今後の学校教育学におけるフロンティア分野を積極的に開拓していくことを期待しています。

連合学校教育学研究科長 新田 英雄

本研究科は,1996年に日本で初めての教員養成系大学・学部における博士課程として設置され,現在までに約300名の学位取得者を世に送り出してきました。本研究科は学位取得者の約6割が大学教員等の研究職へ就くという高い就職率を誇っていますが,このことは,4大学連合による本研究科の充実した指導体制のもとで,質の高い研究が行われていることの証左であると言えるでしょう。

本研究科は,「教育の理論と実践に関する諸分野について,研究者として自立して研究活動を行い,又はその他の高度に専門的な業務に従事するに必要な高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養うこと」を目的としています。「理論」と「実践」は教育研究の両輪をなすもので,どちらも欠かすことはできません。教科教育を例にとるならば,当該の教科内容の深い理解と洞察が研究の大前提ではありますが,教育現場で実践できないような理論は,絵に描いた餅に過ぎません。一方,名物授業と呼ばれるような評判の高い授業実践ができても,その教育効果を研究ベースで評価・分析し理論化しなければ,普及も発展もできずに職人芸的なものに終わってしまうでしょう。本研究科で行ってきた「広域科学としての教科教育学」の研究者の養成は,上記の意味での理論と実践を両立させた研究を遂行し発展させていくことのできる,次代の研究者の養成です。

教科教育学の研究は,近年,海外でも新たな視点から注目されています。たとえば米国では,DBER(Discipline-Based Education Research)という分野が急速に発展しています。例えば物理教育研究の分野では,従来の伝統的な講義型の授業による物理概念の獲得率は,相互作用型授業(アクティブ・ラーニング)の半分にも満たないことが定量的に示されました。また,研究で妥当性が示された授業方法や効果測定法が次々に開発され,授業実践に投入されています。

教育は地域に根差した要素が大きく,国ごとに事情が異なるのは当然です。その一方,例えば物理学習における生徒の概念形成の過程を様々な国で比較すると,驚くほど共通していることがわかってきています。次世代の教育の基礎となる教育研究は,世界に通用するものでなければなりません。

今後も,本研究科が実践的教育研究の拠点として,日本ひいては世界の教育のさらなる発展につながる,優れた研究成果を挙げ続けられるよう努力していく所存です。

 

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