休みを「自分時間」で過ごそう

 

                    保健管理センター 大森美湖

 

 

ドイツの児童文学作家、ミヒャエル・エンデの小説「モモ」の中にこんな一節があります。「人間はじぶんの時間をどうするかは、じぶんじしんできめなくてはならない」「人間には時間をかんじとるために心というものがある。そして、もしその心が時間をかんじとらないようなときには、その時間はないもおなじだ」と。

 「モモ」の中には、「灰色の男たち」という時間貯蓄銀行からやってきた人物が登場します。日々時間を節約して銀行に貯蓄し、将来預けた時間を増やして戻せば、たくさんのコトができ、たくさんのモノも手に入り、成功を手にできると言って、人間を次々と変えていってしまいます。時間をふんだんに持っている浮浪児の「モモ」以外の人間は皆、成功を夢見て時間を節約し、余暇の時間さえも少しの無駄をせず、行動をつめこみ、怒りっぽい、落ち着きのない人に変わってしまう、そんな様子が描かれています。

 メンタルヘルスの仕事をしていると、日々他者にせかされて子供時代を過ごしてきた学生たちに多く出会います。その親御さんにもお会いすることがありますが、もう頑張れないとサインを出している子供に対して、「今は厳しい時代だから、もっと頑張らないと」「今の道が違うなら別の道で輝いてみたら?」と話しているのだと聞かされます。おそらく、その学生は小さな頃から、輝くこと、成功することを期待されて時間に追われてきたのでしょう。これでは、「本当に自分のやりたいことは何だろう?」「自分らしさとは何だろう」と悩んだ時、見つかるまで時間をかけて自分に問いかけるということが難しくなってしまいます。




 社会に出ると、嫌でも他者と時間を共有しなくてはならないですし、時間に追われることは避けられなくなってきます。そんな中で、自分らしく歩いている人とは、自分の考えで過ごす「自分時間」と他者が基準になる「社会時間」とを上手にバランスをとっている人ではないかと思います。

夏休みは、1年で最も長く、「時間に追われること」から解放される貴重な期間です。是非この夏休み、旅行をする、部活やスポーツをする、普段読めない厚い本の読破をする、自然に触れるなど、自分が好きだと思うこと、興味のあることに没頭して時間を過ごしてほしいと思っています。       (ホケカンだより 7月)









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