「におい、匂い、臭い 〜嗅覚について〜 」

    

 

この季節、コンビニの「おでん」や、アツアツ「ラーメン」、宴会の「なべ料理」など何かと食欲をそそる「におい」が、私たちの周りに漂っています。

においを感じる感覚を「嗅覚(きゅうかく)」といい、空気中の化学物質を鼻腔の奥にある嗅細胞(感覚細胞)で神経細胞活動に変換し、嗅皮質というところで認識する一連の活動を指しています。外界にあるいろいろな植物や動物などからは、様々な揮発分子が飛び出しています。しかし、これらすべてが「におい」となるのではなく、嗅細胞が備えている受容体で受け取られ、嗅細胞から脳へと「その分子を受け取った」という情報が伝わった分子だけが「におい分子」になります。例えば、人間は二酸化炭素の「におい」は感じませんが、マウスを含めた一部の動物は、二酸化炭素の受容体を持っており、「におい」として感じているようです。つまり「におい分子」は「におう分子」であり、におい分子かどうかという性質は、人や動物の嗅覚神経系で受け取る受容体があるかどうかによって決定されます1)

「がん探知犬?!」                    

 

がん患者特有のにおいが分かる「がん探知犬」が、精度9割超でがん患者を当てた、という新聞記事を目にしました2)。海難救助犬として飼育されていた「マリーン(ラブラドルレトリバー)」は、集中力や嗅覚が特に優れていたため、がん患者のにおいを嗅ぎわける訓練を受けているそうです。九州大学医学部第二外科 前原教授らのグループの実験で、がん患者の1検体と非がん患者の4検体を1セットにして、「呼気」と「便汁」でそれぞれ挑戦させたところ、呼気では36セット中33セット、便汁では38セット中37セットで「正解」を嗅ぎ分けたそうです。動物には、病気を嗅ぎ分ける能力が、本来備わっているのかもしれません。

 「匂いと思い出」

嗅覚と感情や情動・意欲などの関連は、まだ未解明な点が多いのですが、ある「におい」をきっかけに昔のことをありありと思い出す、という実体験をしたことがある人も多いのではないでしょうか?子供のころ良く遊んだ草むらの匂い、香水の香りや、バイト先の御店の臭い、、、。マルセル・プルーストの長編小説「失われた時を求めて」の中の一節「紅茶に浸したマドレーヌを口にしたとたん、遠い昔の子供の頃を思い出す」という記載から、このような現象を「プルースト現象(効果)」と呼ぶこともあり、嗅覚が記憶領域と密接に関連している可能性を示唆する経験といえるでしょう。

嗅覚には、まだまだ未解明な部分が多いのですが、「におい」に敏感な現代社会においては、「空気読めない(KY)」ではなく、「空気かげない(KK)」という言い方となる日も近いのかも知れませんね。

1)森憲作「脳の中の匂い地図」PHPサイエンスワールド新書

2)20101211日 読売新聞

    



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