walking man's statue with a long cane

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Last update 2003.06.01

歩行訓練のページ

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2003年6月1日最新版

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歩行訓練とは?

 歩行訓練とは、目の見えなくなった人が安全に確実に歩く方法を確立するために援助をする仕事です。
 目が見えなくなると自由な行動がとれず、消極的になりがちですが、まずは自宅から一歩踏み出す勇気を持つことが大切です。
 第一歩をどう踏み出すかをアドバイスするのが歩行訓練の最初の活動ともいえるでしょう。一歩を踏み出せば、自宅の前の道路は世界に通じているかもしれません。
 歩くための道具としては、主に白杖(はくじょう)が用いられます。盲導犬や電子補助具などが用いられることもあります。
 また、目の見える人の誘導による歩行「手引き」も歩行方法として確立しています。
 ここでは、白杖歩行訓練を簡単に説明します。


歩くための技術を磨く

 人間が外界から受け取る感覚のうち、およそ8割程度を視覚に頼っている、といわれるほど、視覚は重要な感覚なのですが、その能力が低下すると残りは2割?
 いえ、決してそうではありません。様々な能力を使い分けることが可能です。
 たとえば音を聞き取り活用する、手足で触れて確かめる、周囲の風や雰囲気を感じ取るなど、自らが持っているはずの能力をできるかぎり活かしていけば、歩くために必要な情報を入手し、能力を発揮することはできるはずです。
 自らの能力に気づき、磨いていけば必ず輝く瞬間がやってきます。
 たとえば、音をしっかりと聞いてみましょう。音はいろんな情報源です。人が動作すると、必ずなんらかの音を発します。特徴ある足音で「誰それさんだ!」と、分かることがありますよね。街の中では、車の音もいろいろなことを教えてくれます。エンジン音が近づいてくる、遠ざかる、通過する・・などなど。信号が青になれば、発車し、赤になれば停まります。縦方向や横方向に通過する音で、交差点があることが分かります。
 あるいは、コーヒーの香りがすれば、喫茶店かな、とか、手や足に触れる感触に注意すれば、道路の舗装の違いもわかることがあります。
 そういう、諸々の感覚を総動員して、歩くための技術を磨く、それが歩行訓練で引き出されていくのです。

適切な道具を用いる

 道具も必要になるでしょう。たとえば白杖(はくじょう)は一人で歩く時に限らず、安全を確保するための有益な道具の一つです。ですから使用者の必要に充分応じるだけの道具でなければなりません。
 白杖には、3つの役割がある、と言われています。

 これらの3つの役割を、適切に活用すれば、安全・情報・理解が確保できるようになるでしょう。

工夫をする

 いろんな工夫も必要です。周囲の、見える人たちの目を気軽に借りて案内を受けたり、交通機関の乗り降りはホームのどの位置が安全かを考える、乗る駅と下りる駅で便利な乗車位置を考える、なども必要でしょう。つまり、普段何気なく見過ごしてきたかもしれない、さまざまな工夫をすることで、安全性を高めることもできるし、情報をキャッチすることもできるのです。
 周囲の人に道を尋ねるのも、同じ方向へ移動する人に聞くと、案外と「ご一緒しましょう」という声が返ってきたりするのです。また、自分自身が、どこへ行こうとしているかをはっきりとつげたり、曖昧な答えをかえさずにすむような質問を考えるだけでも、まわりの人たちの反応はかわってきます。

 つまり、自己努力、適切な道具の使用、そして絶えざる工夫をし続けることが大切なのです。それらをお手伝いし、アドバイスを提供するのが、歩行訓練なのです。

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白杖とは?

 歩くための道具、白杖(はくじょう)は、足を運ぶ先を充分確認できる長さと、丈夫で耐久性があって、しかも地面の状態をよく伝えるものが必要です。歩行訓練では、この条件を満たすために、グラスファイバー製やアルミ合金製の白杖が主に使われています。

 材質
 グラスファイバー製は、丈夫でしなりもよく、伝達性もほどほどです。アルミ合金製は軽くて丈夫、伝達性もあります。
 最近はカーボンファイバー製の白杖も出始めています。アルミ合金よりさらに軽く、グラスファイバーより丈夫でしなやかなものです。
 ただし、歩行訓練に向いた杖は、白杖を持った時に重量のバランスが良いかどうか、適度な軽さ、重さ、安定感が得られるかどうか、振りやすいかどうかなど、歩行訓練に適した様々な用件を満たした杖を選択しましょう。

 長さ
 一人ひとりの身長や体格が違えば、白杖も使用者にあわせて「処方」する必要があります。使用者の身長から42〜45センチを減じた長さに調節するとよいようです。まっすぐに立つとわきの下にちょうど入る長さです。身長以外にも、腕の長さなどの体格の特徴、歩く速さ、杖が何かに触れてから反応できるまでの反応の速さなど、いろいろな条件を加味して決めます。みぞおちから2、3cm上、という決め方をしていたこともありましたが、平均的には上の計算で間に合うようです。

 直杖と携帯用
 丈夫な「直杖(ちょくじょう)」という一本の杖と、携帯に便利な「折りたたみ」式があります。歩行訓練の進め方や、歩く範囲など、これもいろいろ条件を考えて決めることが大切です。一般的には直杖の方が丈夫で耐久性も伝達性も良好です。携帯用は、折り畳み部分で折れやすかったり、重量配分が直杖と違ったりしますが、携帯用で訓練をはじめても充分なこともあります。歩行訓練士とよく相談して決めましょう。理想は、両方を手に入れて使い分けることでしょう。歩くことが主ならば直杖を、乗り物に乗ったり、座る時間が長い、誰かの家を訪問する、劇場へいくなどなら、携帯用、というふうに。

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白杖歩行訓練とは?

 リズム歩行
 長い白杖を用いる方法がいろいろと考案されています。長さいっぱいに、人差し指の延長のように構えて、手首を支点にし、先端を左右均等に、肩幅より少し広めにふりながら歩きます。リズミカルに振りながら歩くので、リズム歩行といいます。
 直線歩行
 公園や遊歩道など、安全で静かな場所でまっすぐに歩く練習から開始することが多いです。この時、まっすぐのつもりでも、斜めに曲がったり、道路の端に寄ってしまったり、なかなかうまくいかないこともありますが、肩の力を抜いて、淡々と歩きます。
 さらに訓練
 そしてだんだんと歩きなれてきたら、街路樹などをよける、交通量が少ない歩車道の区別のない道路をまっすぐ歩く、近づいてくる車の音を聞いて安全によける、歩車道の区別のある道路の歩道を歩く、交差点を確かめて手前で停まる、安全で確実な横断の判断をし、安全に渡る、信号機のある交差点を横断するなどの訓練などを行います。
 信号横断
 信号に従ってゴー、ストップを繰り返す車の音を聞いていると、信号機のタイミングが分かってくるでしょう。道路を走る車と平行を保ちながら横断完了です。信号機があるかないかも、車の音を聞いていると分かるようになるものです。もちろん、何事も一足飛びに上達できるものではありません。時間をかけ、ステップごとに確実に、です。
 目的地発見
 目的の店へ向かって歩く訓練では、どういうてがかりが役に立つかを考えます。喫茶店なら、看板や足ふきのマット、ドアやノブの形や、コーヒーの香り、人の出入りなど、いろんな手がかりがあるものです。どうやっててがかりをキャッチし、利用することができるのかを繰り返します。
 目的の店で飲むコーヒーの味は「格別!おいしい!」かもしれませんね。
 交通機関の利用
 交通機関の利用も安全で確実な方法が限りなく考えられています。バス、電車、地下鉄、列車、路面電車などなど、様々な交通機関を、必要に応じて利用できるように、訓練を繰り返していきます。もちろん、乗り降りだけではなく、プラットホームの上を安全に歩く、混雑した場所を歩く、切符を買う、自動券売機を使う、案内を受けて手引きで歩く、なども訓練の重要な要素です。

 このように白杖歩行訓練を受けて、街の中を颯爽(さっそう)と白杖で歩くあなたの姿がみられるようになるわけです。
 確かに一筋縄ではいかないでしょう。でも、何事も最初の一歩を踏み出すことが大切。チャレンジしましょう。そして、新しい世界を探しに出かけましょう!

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手引きとは?
 目の見える人が誘導して一緒に歩く方法です。誘導する人を手引き者といいます。手引き者は自然体で視覚障害者の半歩前に、同じ方向を向いて立ち、肘を貸します。視覚障害者は手引き者の肘をきちっとつかみ、歩調をあわせて歩きます。

 「歩行訓練は手引きにはじまり、手引きに終わる」という言葉があります。歩行訓練の一番最初に、歩行訓練士が手引きをして歩き慣れる時期があります。手引きを受けて自由自在に歩くことができのも歩行技術の一つなのです。もちろん、不安なく歩くことができるように、また、様々な能力を引き出すための大切な時間であることも確かです。
 歩行訓練が進むにつれ、周囲の、見ず知らずの人たちに援助を受けることもでてきます。交通機関を利用するようになると、なおさら周囲の人たちとどう接していくかも非常に大切な要素です。見ず知らずの人が手引きの方法を知っているとはいいきれません。初めて誘導する人も多いはず。そういう時に、正しく手引きを受けることもまた技術なのです。

 ハインズ・ブレーク
 誘導する人が、視覚障害者を後から抱きかかえるように誘導したら、あるいは、肘をかかえるように持ったら、これは非常に歩きにくく、不安も強く、安全性にも影響がでます。そういう時に、正しい手引きに持ち換える方法を「ハインズ・ブレーク」といいます。アメリカの歩行訓練発祥の地、ハインズ陸軍病院で、間違った誘導をブレークする(断る)方法として導入されたのにちなんで、この名前で呼ばれています。
 間違った誘導を受けた場合は、まず、「肘をつかませてください」と、はっきりと言いましょう。そして、手引き者に半歩前に立ってもらい、手引き者の肘をみずからつかんで、正しい「手引き」で歩きましょう。


歩行訓練は誰が担当するの?

 日本ライトハウス視覚障害リハビリテーションセンターで「視覚障害者歩行指導者養成課程」(厚生省委託)を実施しています。また国立身体障害者リハビリテーションセンター学院でも養成コースを開講しています。この二つのコースのいずれかで専門的な知識と技術を習得し、自らアイマスク歩行を体得した「歩行訓練士」が担当しています。下記のリンクで、それぞれのホームページへ移動できます。

 日本ライトハウス養成部
 国立身体障害者リハビリテーションセンター学院


歩行訓練を受けたいが・・

 お近くの福祉事務所か視覚障害者更生訓練施設などへお問い合わせ下さい。下記のリンクで、VIRN内の訓練施設紹介ページへ移動できます。

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このページの担当は新井宏でした。
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