u 東京学芸大学‖加賀美ゼミ【国内巡検報告】
国内巡検の報告 ヨーロッパ地誌ゼミでは例年,数回の国内巡検を実施しています.
地理学では,野外での調査活動であるフィールドワークが重視されます.
そのため地域についての知識を増やすためだけではなく,
聞き取り調査や景観観察のためのノウハウにも精通でき,
卒業論文作成に役立つような巡検になることもめざしています.



2019年度 夏巡検(19/07/20) 『東京都心にある教会を訪ねる』

 JR御茶ノ水駅の聖橋口に集合.まずは近くにある東京復活大聖堂教会(ニコライ堂)へ. 解説担当の方から日本でのロシア正教会の歴史や,由緒あるコンドル作の聖堂の構造についてうかがいました. 教会をあとにして,付近にある法政大学発祥の碑の前で,一帯が大学の集中地区であることを確認. 男坂の急な階段を下りてカトリック神田教会へ.重厚な石造りの教会の落ち着いた雰囲気に触れました.
 さらに弓町本郷教会に向かいました.ここは日本基督教団に属するプロテスタント教会. 1926年造の建物で,牧師さんから教会の歴史や活動について説明をいただきました. もともと東大の学生への布教が目的で設置されたとのこと. 御茶ノ水界隈に教会が多く立地する理由が,一帯にいくつもある大学の学生への布教であることがわかりました.
 最後に,新大久保の韓国系の東京中央教会を見学して,巡検は終わり.韓国料理屋で打ち上げました.

2019年度 春巡検(19/05/15) 『国分寺崖線に沿って歩く』

 東京学芸大学正門に集合.大学近くに残る新田開発の跡を観察してから,東京経済大学脇の急坂を降りて野川の畔へ. かつてあった水車を旧版地形図で確認し,一帯での川の役割を考えました. さらにお鷹の道を進み,うっそうとしたケヤキの林のなかで東京とは思えない風情を楽しみました.
 湧水である真姿の池を見て段丘の急崖を階段で登り,そこに残された堅穴式住居跡を確認. 縄文時代の歴史をふり返りつつ,再び崖を降りて国分寺跡に向かいました. 広々とした跡地を歩き,さらに国分尼寺跡を見て古代の景観を想像し,再び段丘崖を登って高台から東京副都心や東京スカイツリーを遠望. 古代から現代への歴史の流れに,しばし思いをめぐらせました. 最後に,大型住宅団地の脇に復元された東山道を経て,JR中央線北側の恋ヶ窪の湧水地帯を歩きました.
 段丘崖を降りたり登ったりしながら,景観の違いを確認する巡検でした.終わってからワインで親睦会を行いました.

2018年度 冬の巡検(19/02/22) 『横浜における外国人の記憶をたどる』

英連邦墓地  開港とともに日本の玄関となった横浜における外国人の記憶をたどる企画を立て,いくつかのスポットを見学しました. まず保土ヶ谷駅からバスで英連邦戦死者墓地へ.第二次世界大戦中に捕虜として日本に連行され,犠牲になった兵士が埋葬された墓地で, 戦争の犠牲者が広範に及んだことを改めて知りました.公園を思わせる広々とした苑内で,戦争の悲惨さに思いを寄せました.
 次に横浜市街に向かい,かつての横浜居留地の様子を,吉田橋・馬車道・横浜公園・日本大通・居留地遺跡・中華街で観察しました. 明治期になるまで村だった点で,横浜は日本の大都市でもきわめて珍しい存在です. しかも文明国としての体裁を外国人に見せつけるために整備を進めたことが,横浜の市街地を美しいものにしたといわれています. 街を歩きながら横浜の風情を楽しみました.巡検後は,川崎駅近くの中華料理屋で,1年を振り返りつつ打ち上げました.

2018年度 夏の巡検(18/08/06) 『墨田区・木下川の皮革産業地区で差別を考える』

きねがわ  JR総武線・平井駅集合.都バスで木下川地区へ.まず,東墨田会館にある「資料館きねがわ」を訪ねました. 資料館の岩田明夫さんに木下川地区の特徴を丁寧に説明いただいた後,ビデオを視聴.さらに,展示品を見てまわりました. 皮から革に加工するための皮なめし業のあらましとともに,部落差別の経緯についても解説いただきました.
 飼育されている豚が料理になって食べられるまでのプロセスのうち,飼育と料理については学校で学習する. しかし,豚が解体され,それが商品に加工される過程については学習されない. こうした教育の現場で欠落している部分こそが,家畜のおかげで命をつないでいるわれわれにとって大事なはず. 今回の岩田さんの説明のうちで,このことが頭に残りました. 「差別の原因は無知にある」というのは世界共通の問題ですが,まさに屠畜業や皮革業に対する差別の原因は, 学んでいない無知によるとあらためて理解しました. 見学後は新大久保に移動して,たらふく肉を食べました.

2017年度 冬の巡検(18/02/26) 『変わりゆく景観から東京の歴史を考える』

兜町  東京の歴史を現在の景観から読み取るために,築地市場,佃島,銀座,兜町,日本橋を歩きました. まず築地市場では,卸専門の場内市場へ.商店を訪問し,市場の概要をはじめ,売買についてのお話をうかがいました. また.秋に予定されている豊洲への移転をめぐる様々な問題にも触れ,魚市場の将来について考えました.
 市場から佃島へ.江戸時代に関西から移住した人々が培ってきた伝統に触れるとともに, 近隣の再開発によって出現した高層マンションとの対照的な景観を観察しました. さらに銀座から日本橋に向かって歩き,次々に建設される高層ビルと,いまだに残る古くからの商店が混在する景観を確認しました. 兜町では,金融街発展の経緯を示す建造物を見つけながら,歴史的景観を保存することの重要さを改めて知りました. 日本橋界隈の景観について参加者で意見を交わして,巡検は終了.新橋の居酒屋で1年間を振り返りました.

2017年度 夏の巡検(17/07/15) 『東京に暮らすアジアの人々―在日,中国人,クルド人―』

クルド人  麻布十番駅集合.まず在日韓人歴史資料館へ.充実した展示を前に在日の歴史について2時間にわたってじっくり説明いただきました. 差別に直面してきた彼らの実態を知り,多文化共生の問題を改めて考えました. 続いて在日の人々が多く住む三河島界隈に移動し,商店街を見学.大久保あたりとの違いを実感しました.
 お昼は韓国料理屋で本格的な味を楽しみ,さらに埼玉県の蕨へ. 西口にある中国人が多く住むUR団地に向かい,中国語表記の看板や中国系の店舗を観察しました. つぎに東口に移動し,クルド人が集まる飲食店へ.店頭でクルド人スタッフと話す機会がありました. トルコ人経営の店で働き,日本人女性と結婚して家族で楽しく暮らしているとか. 難民とは異なる様子に驚きました! 一概にクルド人でまとめられないことに気づきつつ,池袋の台湾料理屋で打ち上げました.

2016年度 夏の巡検2(16/08/02) 『夏の玉川上水を逍遥する』

旧豊島師範学校跡  JR中央線・三鷹駅に集合.そこから玉川上水の流れに沿って井之頭公園方面に向かって歩きました. 三鷹駅界隈の玉川上水を語るのに欠かせないのが,作家太宰治.彼が好んだ三鷹の風景を,JR線にかかる跨線橋や居酒屋跡などにたどりました. さらに最期の場となった入水現場付近に足を延ばし,当時を偲びました. ちょうど近くにある山本有三の立派な邸宅も見学して,文豪の世界に浸りました.
 井之頭公園の雑木林の中を上水に沿って歩くと,まるで何十年も前に戻ったような気分になります. そこから一気に井之頭池へと坂を降りると,湧水がつくった地形の大きさが圧倒してきます. 残念なのは,池のすぐそばに聳え立つ巨大マンションが景観をぶち壊してしまっていることで,都市行政の愚かさをあらためて実感しました.

2016年度 夏の巡検(16/07/16) 『東京のエスニック空間を体験する〜その2〜』

旧豊島師範学校跡  JR中央線・大久保駅に集合.冬の巡検に続けて都内のエスニック空間を観察するために,大久保エスニックタウンと西池袋のチャイナタウンを歩きました. 大久保界隈では,かつて韓国関係の店ばかりだったのが,イスラームやインドなど多国籍化している様子を観察しました. また,ネパールの店「ソルティカージャガル」を訪ね,日本にいるとは思えない現地そのままの雰囲気に触れました.
 つぎに池袋に移動して,ビルの上階で営業する中国系の店を注意深く観察しました. 山下清海氏作成の『池袋チャイナタウンガイド』(2007年)と比べて,店が大幅に変わっていることに驚かされました. 最後に池袋西口公園に向かい,東京学芸大学の前身の豊島師範学校があったことを示す石碑をバックに記念撮影をして,巡検を終えました.小竹向原で焼き鳥をつまみながら,にぎやかに打ち上げました.

2015年度 冬の巡検(15/12/06) 『東京のエスニック空間を体験する』

東京ジャーミー  小田急・代々木上原駅に集合.都内最大のイスラーム寺院である東京ジャーミーを訪問しました. オスマン風の巨大なドームと天を突くように聳えるミナレットは,世界三大宗教の一つであることを知るに十分すぎるほど立派なものでした. 日本語による案内を受けながら,館内を見学しました. 礼拝を見学し,中東はもちろん,インドネシアやマレーシアからの人々,それに日本人も少なからず礼拝しておられ, イスラームが世界的に浸透した宗教であることを知りました.
 寛容で間口の広い宗教でありながら,イスラームに関する情報がいちじるしく偏っていることにも気づかされました. モスクに長居をしたため,つづいて訪れた大久保エスニックタウンでは,ハラールの食品を売る店を中心に見学.最後に韓国料理屋で疲れをいやしました.

2014年度 春の巡検(14/05/24) 『東京都心の景観を観察する』

旧江戸城の本丸  JR東京駅八重洲北口に集合.中央通りを経て日本橋,日本銀行を経たのち,読売新聞社前を通って大手門から旧江戸城の本丸へ. さらに二の丸庭園,平川門,国立近代美術館工芸館をめぐって,北の丸公園をぬけ,閉鎖中の九段会館をカメラに収めたのち,靖国神社を訪れました.
 今回の巡検は,地形・老舗商店街・交通・河岸・西洋建築・記念碑・江戸城・徳川家という8つのトピックについての観察を行いました. 特に明治期に設置された銅像などの記念碑が,国民意識を高めようとする当時の政府の姿勢を強くあらわしていることについて考えました. 箱根駅伝の碑も,駅伝もそうした国の姿勢と関連したものであることを知りました. 「意図した景観」が今回の巡検のポイントでした.終わってから,神楽坂の居酒屋で打ち上げました.

2013年度 秋の巡検(13/10/14) 『東京・下町の景観を観察する』

上野の西郷隆盛像  地下鉄丸ノ内線「本郷三丁目」駅に集合.湯島天神,不忍池,上野公園を経て寛永寺へと向かいつつ, 台地と低地との土地利用の違いについて観察しました. さらに御徒町駅から鳥越を経て蔵前へと低地における住宅と商業施設の立地について考えました. 浅草橋の問屋街をぬけて,神田川河口の柳橋付近の都市景観も観察しました.
 江戸時代に大きく成長した江戸の町が明治期以降に激しく改変され,関東大震災と太平洋戦争, そして1960年代の高度経済成長とともに変貌した様子を現地で確認することができました. 東京らしいと思える景観がなかなか見つからず,都市観察の難しさを感じた一方で, らしい景観がないのが東京なのかもしれないと考えたりもしました.

2013年度 立教大院生との巡検(13/07/06) 『木下川(きねがわ)の皮革産業を学ぶ』

木下川の皮革工場  「地理学特殊研究」を受講した立教大学大学院生との合同で,墨田区木下川(きねがわ)地区の皮革産業地区を訪問しました. まず「産業・教育資料室きねがわ」を訪ね,室長の岩田明夫さんに木下川地区と皮なめし業の歴史について講演をいただきました. つづいて工場を訪問し,革なめし作業の実際をつぶさに見ることができました.
 「皮から革」への高度な加工技術と他の追随を許さぬ優れた品質など,世界に誇れる製品づくりの現場を目の当たりにできた一方で, 今なおはびこる差別の問題をあらためて知ることにもなり,取り組むべき社会問題について考える巡検になりました. 最後に立ち寄った東京ソラマチでは,墨田区が売り込む革製品のありかたが話題になりました.終わってから,浅草で打ち上げました.

2013年度 春巡検(13/05/05) 『玉川上水に沿って景観を観察する』

井之頭池  西武拝島線の玉川上水駅に集合し,上水に沿って井の頭公園まで20キロ近く歩きました. 上水の構造や分水の様子を観察しながら,多摩川の水を自然流下で延々江戸の町まで通すという, この17世紀に行われた大工事の技術の高さに触れました.途中,小川町付近では住宅地化が進む新田集落の様子をみるために迂回し, また境浄水場では新旧の水道施設について確認をしました.
 徒歩移動も終盤になると,浄水場への引き込み線の廃線跡や太宰治が好んだという三鷹の跨線橋をめぐるなど, いくらか趣味に走って上水コースから脱線しましたが,日没間もない時刻には無事に井の頭公園にたどり着くことができました. ひたすら上水に沿って歩きつめた巡検.吉祥寺の居酒屋でしっかり癒しました.

それ以前の巡検

2012年度以前におこなわれた巡検はこちら!