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東京学芸大学・教育学部・自然科学系・生命科学分野

発生発達神経科学 研究室

 PI: 健二e-mail: khara [at] u-gakugei.ac.jp 
     


  我々ヒトを含めた社会で生活する生物は、幼児期に集団の中で育っていく間にいろいろな影響を受け、個体間の関係を結ぶ上で必要な素地を獲得していきます。この過程にはそれが正常におこるための適当な時期(臨界期、感受性期)があり、その時期を逃してしまうと、将来、正常な社会関係を築けなくなります。 

 この「社会」あるいは「仲間」を脳ではどのように扱っているのでしょうか。生後の集団環境を、「社会」と扱うか、単なる「過密状態」と処理するかによって、その後の脳機能の発達も全く異なるものになります。つまり、社会行動が発達する前提として、その状況を「社会」として認知する能力が必要で、その神経生物学的な本質はヒトでも昆虫でも同じであろうと考えています。当研究室では、社会性昆虫であるクロオオアリ(Camponotus japonicus)を用いて、このような社会脳の神経生物学的な基盤について研究しています。 

 昆虫の微小な脳の解析は、構造の単純さと基本システムの共通性から、脳機能の基本原理の理解に大きく貢献しています。アリで顕著に観察される、同一の巣に属する個体(巣仲間)を同種他巣の個体から識別する能力(巣仲間識別)は、社会の形成および維持には不可欠です。この巣仲間識別の実体は、巣ごとに異なり且つ巣仲間に共通する体表の炭化水素分子群の混合パターン(コロニーラベル)を鍵刺激とした、個体間ケミカルコミュニケーションであることが知られています。このコロニーラベルの記憶は、羽化後間もない時期に遭遇した体表ラベルを「巣仲間」として刷り込むプログラム学習によって成立し、その後のさまざまな社会行動の発達にとって不可欠です。羽化後間もない幼若アリにとって、身辺の女王や働きアリからコロニーラベルを学習し、自らの体表成分もそれに合わせることが社会適応の最低要件となります。つまり、巣仲間を学習する能力は「社会適応力」に他なりません。我々は、羽化直後に巣仲間学習を可能にするクロオオアリの脳機能について、分子、細胞、内分泌、発生、行動発達などの生物学的視点から理解することを研究の中心テーマとしています。また、その知見をもとに、教育学的応用の基盤作りを目指しています。 

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