活動内容

ビオトープ学習会「小金高校ビオトープの10年」

千葉県立小金高等学校のビオトープは、学校ビオトープとしては日本有数の大きなものです。2005年11月29日に千葉県立葛南工業高等学校の川北裕之先生に、前任校である小金高校での学校ビオトープについて、経緯、工事、完成後のビオトープの様子、活用の仕方、苦労話などを、お話ししてもらいました。
(旧学芸の森プロジェクトサイトより、転載)

勉強会概要と小金高校ビオトープについて

勉強会の講演資料から
学芸の森プロジェクト 勉強会「小金高校ビオトープの 10年間」
講師:千葉県立葛南工業高等学校(前小金高校)教諭川北裕之氏
日時:2005年11月29日(火)12:00~14:00
場所:第7会議室

〇ビオトープ概要〇
千葉県立小金高等学校のビオトープは 1944 年に、それまで中庭であった所に作られたものである。教室5つ分の長さがある大規模なもので、池、小川、田んぼ、草木地、遊歩 道を含む。1970 年頃までは周辺は田んぼや沼沢地が多く、ビオトープでは里山の復元を中心としたものとなっている。
〇ビオトープの考え方〇
●ビオトープ(Bio-Top)とは生物のいる場所で英語で言えば habitat であるが、特別の意味が込められている。例えば、その地域に昔から住んでいる野生生物(=里山程度の生物)がいること、多様な生物が生息すること、食物連鎖関係があること、があげられる。 ●ビオトープは一般論としては、里山の生態系の保護や保全、さらには一歩進めて自然生態系、農村生態系の復元、生きものとの共生などがキーワードとなる。しかし、学校ビオトープでは、観察や維持管理を通して自然のしくみを考える、環境問題や循環型社会を考える、保護者とのつながりを強める場となることも求められる。 ●小金高校ビオトープ作りは試行錯誤の連続であった。重要なことは継続的な世話ができること、責任者の転勤でも継続的に世話ができること、外来種の侵入を防ぐことである。しかし、外来種のアメリカザリガニが侵入してしまった。
〇小金高校ビオトープの独自性と作り方〇
●従来の校庭とビオトープとの違いは次のようなことである。
1)木は定期的に剪定する
2)草はそのままか、土の中に埋める、堆肥にする
3)動物、いろいろの種類がバランスよく生きる
4)土壌、柔らかく土の中の養分や生きものが多い
などである。
ビオトープ内の昆虫は飛んでくるものである。最初にアメンボが飛来する。コイ、フナは水底を荒らすのでビオトープには適当ではない。メダカ、ドジョウがよいだろう。
●多様性を高める工夫が必要である。基本は多孔質空間を作ること。例えば、隠れ家としての石材、竹でハチの宿、餌のない冬は野鳥用の餌台も有用である。また、ヤンマ類の産卵には 3X5m の水面が、縄張り形成には 10X10m の水面が必要である。
●植生ロール(椰子繊維で出来ているもの)を岸辺の斜めの所に敷くと、植物が種子から生えやすくなる。土は川辺からもってきた。その土からいろいろな植物が生えてきた。
●ビオトープの水源は井戸である。地下水位が深いため80mまで掘った。電気ポンプで汲み上げているが、15分タイマーを介し、夏場は一日の約半分くらいの時間汲み上げている(冬場は汲み上げ時間は減少)。汲み上げ量は毎分30リットルであるが、池の中では水流はほとんど感じない。地下水のため、夏場は冷たく、冬は湯気が出るほど暖かである。池に汲み上げられた水は小川を流れた後、下水道に排水される。
●池の底は防水モルタルを塗り、その上に河川敷から運んだ土を30cmの厚さで盛った。肥沃すぎるので、砂などを混ぜた方がよい。
●電動ポンプでなく手動ポンプも設置すれば、災害時などにも使えるので良かったと思っている。
●小川の底はベントナイトシートを張った。田んぼとシートで100万円かかった。
●池の深さは45cmである。池はこれ以上深いと小さな子どもが落ちたとき危険である。しかし、部分的に深いところがあれば、魚の越冬のためには良好な場所を提供できる。また、カエルの卵のためには5cmの水深で十分である。
●小川はの深さは 10cm である。しかし、もっと浅いせせらぎを作れば良かったと思っている。せせらぎは見ている人の心に安らぎを与える。また、せせらぎから流れた水が池に流入した方がよいだろう。

〇ビオトープ運営とその後〇
●池の水は最初の3~4年は安定しない。アミミドロやアオミドロの緑藻が大量に発生した。しかし、その後は水は澄んできた。
●ビオトープが安定するまでは、見た目がきれいでないときもあるが、むしろ見た目を気にしないことが本当の自然を理解することにつながるので、広報活動により、人々に理解してもらうことが必要である。ビオトープ通信を印刷物とホームページで発行し、広報活動に努めた。
●水質調査はパックテストではアバウトでわからない。大学レベルでしっかりデータをとれば学校ビオトープのリーダー的存在になれるだろう。
●南側は校舎の日陰になる。草木地。池はあまり日が当たりすぎない方がよいので、ヤナギを植えたりして日陰も作っている。アシは植えると後が大変、ガマはヒメガマがよい。
●クロスジギンヤンマが2年目に産卵した。ミズアオイ、ヤナギなどが育った。地元の人からタダでもらった木の方がちゃんと育つ。植木屋から購入する樹木は異なる地方からもってくる場合があるので、うまく育たないこともある。小さくても良いから、その土地で育った木がよい。理想的にははドングリを植えたい。最初は鉢に植え、暫くしてから地面 に下ろす。大きくなったら15~20年で伐採すればよい。切手も切り株の横から新しい芽が生えてくる。
●コサギ、ダイサギがやってきた。これらは池のドジョウを食べる。
●授業ではアカガエルの卵の観察をおこなった。
●クワの実は、卵発生で出てくる桑実胚の元の意味を説明するのに有用であった。
●外来種のザリガニが増えてしまった。これの駆除のため、魚のトラップを仕掛けている。
また、文化祭の時に、ザリガニ捕り大会を実施し、重さを量る競技を行った。
●ビオトープの管理は、生物の教員と生物部の生徒で行っている。10数人~数人であるが、これで管理が出来る。多すぎると、むしろ管理はダメ。草刈り(刈らずに残す部分もある)、刈った草を地面に埋める、クワの葉(枝)採り(カイコの飼育用)、池と小川のヘドロ除去など。(ヘドロは植物の枯死、動物の排出物遺骸など分解中の有機物。池で作られる)
●プラナリアやヒドラが出てきたので生物の授業で活用している。また、草地ではタンポポを活用している。また、生物部はコドラート調査を行っている。
●田畑の作業を行っている。
●学校ビオトープを通しての交流がある。保育園の園児に高校生がザリガニ釣りを教える。小学校の児童が総合学習の時間に訪れる。地域の大人を対象として講座を年二回程行っている。
<以上>

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