なぜ、彼女は「サルトルにだけはかなわない」と思い込んでいたのか。
なぜ、彼女は「女たらし」サルトルと別れなかったのか。
なぜ、彼女の仕事に関心を示すと、「馬鹿みたい」に思われるのか。
この本は、共感に満ちながらも、決してべた褒めすることなく考察された、新たなボーヴォワール像を私たちに手渡してくれる。ここに価値あるボーヴォワールが出現する――うんざりするほど聞かされてきたスーパーウーマンではなく、その嫉妬深さと悲しみの深さを除けば、他の女性となんら異なるところのない、複雑で悩み多き女性として。それにしても、なんという強さ、なんという勇気だろう! ボーヴォワールは自分自身で道を切り拓いたのだ。そしてこの本は、そんな彼女の本当の姿をゆがめることなく伝えてくれる。(ジュリア・クリステヴァ氏)
それにしても、ボーヴォワールがこんなにも評価されず、こんなにも嫌悪される著述家だったとは、本書を読むまで考えたこともなかった。この本は一旦は葬り去られたボーヴォワールの古さと新しさを見極め、改めて現代に呼び戻す試みといえるだろう。その根底にあるのは静かな義憤だ。(…中略…)著者のトリル・モイは一九五三年生まれ。偉大な実存主義者への崇拝も反感も消えたいまだからこその本。積年の謎が氷解すること請け合いだ。記述はいたってクール。でも、興奮した。(斉藤美奈子氏、『週刊朝日』2003年9/26号)
平凡社・3,800円・ISBN4-582-83168-0