男・塩野谷の調査記録

 

 山の朝は早い。のんびりしてると、あっというまに日が高くなっちまう。俺達は、遊びに来てる訳じゃないからな。今日もやる事はてんこ盛りだ。俺達の一日の基本パターンはこうだ。・・・まず、夜明けとともに起床。ま、寝るのも早いからな。目は勝手に覚める。ブレック・ファーストは、糖分を多めに摂るかな。それでも、毎日の運動量が多いから、10日もいるとだんだん、脂肪は減ってくるね。かわりに、筋肉がついてくるのさ。そして、一日の調査の汗は、付近の集落の温泉で流す。しかも、この白峰温泉の透明重曹泉は「絹肌の湯」ともいわれ、すばらしい美肌効果も備えている。したがって、美容と健康を気遣う若い女性にもピッタリの卒業研究プランを、我々松川研ならば御提供できる、というわけだ。・・・おっと。話がちょいと逸れちまったか?

写真に注目して欲しい。これは、山女だ。10日前に我々が発見した時は、それはもう山姥のような有り様だったのだよ。それがどうだ?試しに我々の調査に参加させてみたところ、縄文杉の樹皮のようだった皮膚はみるみる若さを取り戻し、猪と熊の食い過ぎで溜まった脂肪は瞬く間に消え去った。いまでは、すっかり女子学生のように見えるではないか。我々のプランの効果がおわかり頂けただろうか?

 ああ、いかん。そうじゃなくて、我々の一日だったな。えー、つまり、そして晩飯をつくって喰って、ちょいと飲んで寝るって感じだ。