珪藻の鞭毛

  鞭毛をもつ細胞

珪藻の栄養細胞には鞭毛はありません。また,栄養細胞は2分裂によって増殖しますが,この時にも鞭毛を持った細胞は現れません。鞭毛細胞は有性生殖をおこなうとき,しかも中心珪藻の精子のみに現れます(羽状珪藻の有性生殖はアメーバー状運動をする同型配偶子によっておこなわれます)。

  管状マスチゴネマをもつ鞭毛1本のみ!

珪藻の精子の鞭毛は1本です。珪藻の仲間である他の不等毛植物はすべて鞭毛が2本ありますので,1本というのは大変珍しい特徴です。その表面には管状マスチゴネマと呼ばれる小毛が生えています。精子はこの鞭毛を前方に揺らしながら泳ぐのです。さらに鞭毛内部の微小管は多くの生物でよく知られている9+2構造ではなく,9+0構造で中央部に微小管を持たない特徴的な構造をしています。

  ストラメノパイルの一員

この管状マスチゴネマのある鞭毛をもつ生物のグループはストラメノパイル(ラテン語で意味は:麦わら+毛)と呼ばれます。これは近年明らかになった,藻類,菌類,原生動物といった従来の分類の概念を越える,より生物学的な大系統群です。この系統群には珪藻を含む不等毛植物,菌類とされていた卵菌,サカゲツボカビ,ラビリンチュラ,そして原生動物のビコソエカ,オパリナ,太陽虫が含まれています。


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