モンゴルプロジェクトフェーズ2/Action in Mongolia

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about Mongolia Project

モンゴル国子どもの発達を支援する指導法改善プロジェクト(フェーズ2)
業務報告(高畑弘 2010年 4月28日~5月9日)

1.日程

・4月28日(水)成田~インチョン~ウランバートル


4月29日(木)午前中、45学校にてルファグバドルッジ先生の授業参観。図形の相似の部分であるが、説明が数式ばかりで図が一切出てこないのには驚く。授業後、少時コメントを伝える。午後14:30から1時間ほどJICA事務所訪問。17:00から18:30団内打ち合わせ。


4月30日(金)午前中、Setgemj学校で算数の授業を参観。その前に教頭先生の部屋で
JICA青年協力隊の松本大光(だいこう)先生と面談。福島市から来られたとのこと。昨日までセレンゲ県第4学校で他の協力隊の他のメンバーと会合を開いていたが、今日、小生と会うために夜の列車で帰ってこられた由。感激。算数の授業は丁寧で好い授業であったが、最後10分のまとめが崩れてしまったのは残念。そのあとITのテストの風景を松浦先生と参観。教育省に戻り、昼食。14:30まで資料集めに本屋を駆け巡る。15:00から97学校でセルゲレン先生の授業を参観。終了後、少時意見交換。帰途、インテルノムという本屋で高校1年生から3年生(9~11)の数学の教科書を購入、帰宿。



5月1日(土)準備と資料(教科書)を読む。


5月2日(日)前日の同様。


5月3日(月)8:30から9:30まで97学校の卒業式を参観。10:00からウランバートル市の教育庁の14階の会議室にて教育庁の歴々(主事)を前に4つの講演。高畑、福地、鎌田、松浦の順。全員、予定時間超過。12:40終了。午食。15:00より教育大学のチョロン先生の部屋にてフェーズ2の概要を説明。17:00石井さん来室。詳細を説明したのち、質疑応答。モンゴル側から、業務遂行に伴う費用の負担について要望あり。18:30帰宿。

5月4日(火)10:00より、数学チームとの会合。今回のフェーズ2に関して、授業研究の在り方について話す。新しい顔、男女1人ずつ。男性は教育大学の教員、女性は最初の年次に顔を見せたセレンゲの教員で、現在は第一学校の教頭とのこと。頼もしい限りである。午食ののち、15:00より、具体的な教材について論じ合う。幾何のこれからの在り方について、原論のまねごとに貴重な授業時間を消費することはやめるよう力説。少なくとも今日出席していた先生方には納得していただいたようである。ドヨド先生、ダライジャム先生がどのように出られるか?

5月5日(水) 11:00より初等教育センターでチョロン先生、エンヘー先生と今回における算数の研修パッケージの在り方について検討。モンゴルにおける新指導法派がそれぞれの分野で未だ少数派であることについての実情を聞く。12:20午前の部を終える。昼休みを利用して算数指導要領解説編を取りにホテルまでを往復。15:00より日本語の教師用指導書のいくつかの部分を解説。17:00終わる。

・5月6日(木) 9:00よりモンゴル日本センターで全体ミーティング。ネルグイ氏の挨拶、石井さん、鈴木さんのプロジェクト全体の説明に引き続き、子ども中心の指導法に関して講演と質疑応答、福地氏の講演と質疑応答。コンチネンタルホテルに移り、午餐。14:00より分科会。15:40コーヒーブレイク。16:00より再開。17:00終了。


5月7日(金) 9:00よりモンゴル日本センターにて昨日の続きで、研修パッケージの実質的な検討に入る。まず、各教科で昨日検討した研修パッケージの案を発表する。つづいて1)新しい指導法、2)授業研究、3)アセスメント、4)マネージメントの4つのグループに分かれて、それぞれ検討を始める。第一のグループのボルマー先生が「わからない」と叫んで「授業研究」のグループのところにくる。聞いてみると、指導法と授業研究との境界が不明確ということらしい。1)は新しい指導法の在り方、2)はその在り方の開発・実現の方法ということを説明すると、もとのグループに戻って猛然とグループを先導し始めた。それぞれの発表があり。13:00より近くのホテルポーマで昼食。14:30より、各教科に分かれて、教科ごとの研修の内容を検討する。17:00散会。期限を決められて各グループは正式の結論を提出することになった。その後、松浦先生、トゴス、ゲレルグワ先生と夕食。ゲレルグワ先生より、今回のプロジェクトのプロフェッショナルチームの構成について懸念が示される。それは「大半が新しい指導法についての実経験のない人たちではないか」というもので、小生も以前から抱いていた懸念である。その内実は「誰が研修で模範授業を行うのか」ということである。


5月8日(土)帰国の予定であったがフライトが悪天候のためキャンセルされ、帰国は10日に延期。


2.感想と要望

 今回のウランバートルでのいくつかのミーティングにおける目的は、フェーズ2の出発点として、ターゲットを明確にして、そこに至る道筋をつけることである。フェーズ2の目的は次の2つである。1)新指導法の全国普及、2)授業研究に関する研究グループ(学会)の創立。これらの目的が達成されるための条件は何か。それらが充足されているか、あるいは充足される見込みはあるかということが今回のミーティングで確認されたかどうかについて以下に述べる。教育省からの経済的支援については割愛する。

  • 1)について。
  • まず、最初に確かめることは、目的は「指導法の普及」と「指導書の普及」のいずれであるかということである。もちろん双方兼ねて「現場の指導書をよく読んでもらい、指導法を普及させることが目的である」ということも言える。もしそうならば、願ったり叶ったりであるが、モンゴルの教育省の幹部の言葉の中に「指導書が死蔵されているのはもったいない」という文句がしばしば聞かれた。もしそうならば「指導書の普及」に重心があることになる。しかし、指導書は畳の上の水練にすぎない。フェーズ2の目的が教育省の面子を保つために指導書の存在を知らしめることを目的とするならば、そんなに難しいことはないし、3年も掛ける必要もない。指導書を増刷して、教育省の「指導書をよく読みなさい」という通達を添えて各学校へ配布すればそれで済む。それは、新指導法の技法の畳の上の水練に過ぎない。
  •   もちろん、ネルグイ氏たちの意図がそんなところにあるのではなく、「新指導法の普及」にあることは重々承知しているが、今回基本チームやプロフェショナルチームに新顔として参加した人たちはそのネルグイ氏たちの意図をどこまで共有しているか、甚だ心もとないのである。現に、算数科グループに新たに参加した一人に「指導書を読んでどのように思いましたか?」と尋ねると「まだ読んでいません」という返事であった。主事、教育省職員、教育研究所の人たちは推して知るべし。
  •  11月の研修までにこれらの人々の注意を新指導法に向けることが望ましい。それも単に言葉で伝えるのではなく、実体験を通じて実感をもって伝えることが欠かせない。しかし、今回、フェーズ1で試行教員であった教員の授業を参観したが、模範授業としては使えない。彼らを再教育する時間はない。ここで重要な提案をする。
    • ①地方からでも優秀な試行教員を呼び寄せ、模範授業を行う。たとえばセレンゲの第4学校のゲレルグア先生。
    • ②現在、JICA青年協力隊員としてセトゲムジ学校に勤務している先生に協力を得る。他にも青年協力隊員の協力は可能ではないか。
    • ③あるいは上の二つの提案の結合。
  • これらのいずれかを11月の研修前に必ず行うことを要請したい。
  •  次に、研修を実施する際の注意を述べる。研修では「新指導法」の「模範授業」が欠かせない。ここで問題となるのは、「模範授業」を担当する教員である。算数、数学に関してはやはり、上に述べた人材を活用するよう要請したい。これらのことは十分に可能である。
  • 2)について。 
  •  この件については、全体会で論議する機会はなかったようである。しかし、教科書の改革のことを考えるならば、「授業研究会」設立は焦眉の急である。それもまずはウランバートルで実現しなければならない。しかし、セレンゲと異なり、ウランバートルでは、残念ながら、セレンゲのゲレルグア先生のような活力ある先生が試行教員の中に生まれなかった。したがって、ウランバートルではフェーズ1の試行教員を核とする「授業研究会」を設立することは難しいように思われる。むしろ、教育大学の先生の指導学生の卒業生を核として「授業研究会」を設立することを考えるほうが早いと思われる。