モンゴルプロジェクトフェーズ2/Action in Mongolia

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about Mongolia Project

モンゴル国子どもの発達を支援する指導法改善プロジェクト(フェーズ2)
業務報告(高畑弘 2011年2月19日~3月13日)

1.2011年2月19日からの業務日程

・2月19日(土)16:00 チンギスハーン空港着。気温マイナス7度。無風快晴。ウランバートルホテル投宿。鈴木さん、鎌田先生とスケジュール打ち合わせ。



2月20日(日)午前中、ノミンデパート 両替と買い物。午後、パッケージの点検。


2月21日(月)11:30、通訳のボルマーとオフィスで顔を合わせ。12:45ソンギノハイルラン地区のイレーデゥイ校へ向う。13:45より算数の授業。授業は14:25に終わり、協議会。内容は、4ケタの足し算。



2月22日(火)9:00ボルマーと待ち合わせ。67学校へ。10:10より数学の授業。内容は、円の作図、弦、直径、半径。40分の授業後、協議会。13:30より、算数の授業。内容は、一部を切り取った長方形の面積の求め方。40分の授業後、協議会。ここでも有益な意見がたくさん提出され、有意義であった。担当した教員は、25年のベテラン。15:00終了。教頭先生と話し合って、辞去。16:30教育省。


2月23日(水)9:00ボルマーと待ち合わせ、12学校へ。午前中、数学の授業と協議会。内容は、座標平面と座標。午食。校長先生の質疑に応える。午後、算数の授業と協議会。内容は、分数の導入。16:00辞去。一旦、ホテルに戻り、休憩。17:40、ボルマーと第一学校へ。教頭先生の質疑に応える。20:00に至る。明後日金曜日、18:00より教員相手の講演を引き受ける。21:00帰宿。


2月24日(木)午前中、両替にフラワーセンターへ。帰途、古本屋とインターノム。13:30オフィス。ボルマーと教育大学のガンバートル先生の研究室へ。チョイスレン先生も来られて、対談。質疑応答とこれまでの授業研究の感想を伝える。ほぼ2時間。ガンバートル先生から、現職の教員たちに年に2回(学校で)の授業研究が義務付けられた由、聞く。かすかな曙光を見た。明日の第一学校での講演の前に聞いたことに感謝。深夜、鈴木さんから電話にて、明日の第一学校での講演は、校長叙勲にてキャンセルとの連絡あり。

2月25日(金)8:50、ボルマーと待ち合わせ。午前中、教育大学のチョロン先生のところで、授業研究について話す。私立学校の教頭先生(タムノルジマ)が同席。序でと思って、JICA編集の教員研修に関するCDの授業研究の部分を、弁士付きで上映。13:30、ガン先生、ドイド先生とともにイレーデゥイ学校へ。7年生の数学、「1次関数y=kx+b」。観察者は30名ほど。問題のある授業で、却ってよかった。協議会も、穏やかであった。18:00帰宿

2月26日(土) 朝食後、9:00から1時間ほど、鎌田先生と地方での講演に使用するビデオの弁士の練習。モンゴル語の勉強ののち、フラワーセンターに向かう。昨夜の雪が3センチほど積もっている。ノミンデパートで、童話を購入。8999ツグリグ。18:00、先発隊としてザブハン地方で苦労されて戻られた福地、松浦両先生、石井氏と近くの韓国料理店で、無事の再会を祝す

・2月27日(日) 6:00福地氏をホテルのロビーで見送る。ヒシゲ姉弟が車で空港まで送る。9:30ウランバートルホテルを出発。ランクル2台。11:05バエンチャントマン、12:00バロンハラ、12:30ホンゴル(汚染地区)、12:40左に折れて、エルデネットへ向かう。15:15ジャルガーント・ソム、15:25オルホン・アイマグに入る。エルデネット駅、エルデネットへ10km。ボルガン市の指導主事のナムントゥーヤとオドントンガラグたちと合流。ここから非舗装道路。露天掘りの鉱山の側を経て17:45セレンゲソム。学校の寄宿舎に入る。個室。18:30夕食。19:00~21:00明日に備えて授業研究の復習のミーティング。
左は途中の風景、右は宿泊した部屋。

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2月28日(月) セレンゲソムの学校1日目。7:30朝食。8:30より算数の授業「直角三角形の面積から四角形の面積を求めること」。プロジェクターが用意されていたが、導入のためのお話しを見せるだけ。他には使用しなかった。指示が不明確などいろいろと問題のある授業であった。協議会では、モニタリングチームからいろいろな改善のための提言がされた。11:00に終わる。11:30より数学の授業「平行四辺形の面積」。まだいろいろと問題があったが、少なくとも目指すところが明確で、まとめもよかったので、注文を付けながらも及第点を出した。若い先生である。13:30終了。14:00午食。14:30より、IT「お絵かきソフト(ペイント)使用して母の日のgreeting cardを作成すること」。17:00協議会終了。17:50夕食。食後、近くの遺跡(7世紀のもの)を校長の案内で見学。19:20帰宿。気温-20度。20:00~21:50ミーティング。
左は数学の授業風景、右は遺跡で願掛けをしているところ、下は夜のミーティング。

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3月1日(火)セレンゲソムの学校2日目。7:30朝食。8:30から総合の授業「郷土を知ろう」。なかなか個性のある教員で、子ども扱いが上手であり、一見良い授業に見えた。グループの研究の中間発表が行われた。中間発表のあと教員がどのような指導力を発揮するか。この点について協議会で指摘する。11:00終了。11:30より全体会。講演とモニタリングチームのコメント。13:30終了。午食。14:30エルデネットへ向かって出発。明日の授業研究はボルガン市の第一学校だが、ホテル事情が悪いのでエルデネットに泊まる。エルデネットホテルに16:40着。19:00より食事。
左は記念撮影、右は総合の授業。

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3月2日(水)ボルガン第一学校を経てホタグウンドルへ。7:00フロント。7:40ボルガン第一学校着。算数「等分(折り紙)」。どうもこの担当の先生は、重ね合わせの方法で等分すると2の冪の場合しかできないことを知らない様子である。そのせいであろう、6等分の課題を出していた。11:00数学「自然数の冪」ガンチメグ先生。協議会の途中で泣き出す。新任の先生である。周囲の支援のなかったことを厳しく注意する。13:20終了。14:60ホタグウンドルへ向かう。15:50オニトソム、ここから未舗装の道。18:00ホタグウンドルの学校着。運転手のバトカさんと同室。食後、校長先生の招待にてジグールホテルで宴会。帰宿後、運転手さんたちの部屋で宴会。就寝いつか分からず。(ガンチメグ先生が泣き出したことについては、後ほど、ある特殊な事情があったことが判明。)
左が算数、右が数学の授業風景。

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3月3日(木)8:00朝食。ホタグウンドル1日目。8:30より算数「円と円盤」9:30終了。9:40から数学「y=kxのグラフ」12:00終了。午食。13:30ITの授業「Photoshopで母の日のgreeting card作成」が作業だけなので協議会は取り止め。その理由を説明。15:00解散。近くの丘の上の胸像を見にゆく。16:00帰室。18:45夕食。19:30よりミーティング。21:00帰室。算数の授業を見せてくれた教員に将来の有望性を見つけた。
左が算数、右が数学の授業風景。

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3月4日(金)8:00朝食。ホタグウンドル2日目。8:30より総合学習、協議会、11:00終了。11:15より全体会。鈴木さんのフェーズ2のガイダンス。11:35より小生の「授業研究」の上映。12:10終了。タムノルジマさん、Do. ナラントゥーヤさんの挨拶。12:30終了。13:00午食。14:00ホタグウンドルを出発。気温が上がり、雪が融けているのでゆっくりと進む。15:40オニトソム。ここから舗装道路。17:00ボルガン。ここでボルガン市の2人の主導主事と別れる。ナムントゥーヤ、オドントンガラグ。ガソリンスタンドの一角を借りてモニタリングチームの記念撮影と修了式を行う。2月27日から始まった6日間の同行であったが、彼らの成長ぶりには目を見張るものがあった。これがこの視察旅行の最大の収穫であったと思う。彼らの今後の活躍に期待できる。17:45エルデネット。19:45食事に出る。22:00帰宿。22:15から鈴木、鎌田、両氏と意見交換。24:00就寝。
左が総合学習の中間発表、右が記念撮影

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3月5日(土)8:00ボルガン市へ向かう。9:00ボルガン市教育局。9:00よりボルマー主事よりボルガンアイマグの授業研究の普及活動の報告。10:20終了。第一小学校の先生たちの紹介。10:30専門家から授業研究実施の報告。11:00初等理科、総合学習、物理の先生方からの報告。12:30終了。13:00午食。14:00より、講堂で一般教員に対して鈴木、高畑、鎌田の順でガイダンスとお話し。16:00より質疑応答。16:30より、先日協議会で泣き出した先生(ガンチメグ)の件について教頭に説明。17:30ボルガン市を辞去。20:00エルデネット帰宿。
専門家から一般教員への授業研究のガイダンスとお話し

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3月6日(日)移動日。エルデネットからスフバートル市。朝食後、エルデネットの町とその郊外を歩いて見物。特に目ぼしいものはなし。ただ、遠景の雪景色が美しい。10:10帰宿。11:00ホテルの玄関前に集まる。11:05小生、ボルマー、Do.ナランツゥーヤ、バトカの4名、もう一台は鎌田、鈴木、セレンゲ、運転手の4名、2台でエルデネットホテルを出発、スフバータル市へ向かう。サービスセンターに立ち寄り、11:25出発。まもなく露天掘りの鉱山の脇を通る。11:35エルデネット駅。11:50ジャルダンソム。12:15バローンブルンソム。12:45オルホン川を渡る。13:00ホツルソム。13:10ノムゴンソム。13:30ダルハンアイマグに入って、ハラ川、踏切を渡ってウランバートルからの道に入る。13:40ダルハン市に入る。チンギスレストランにて昼食。15:15目的地へ向かう。16:40スフバータル市、セレンゲホテルに投宿。19:00よりドルフィンで夕食。


3月7日(月)8:00が朝食の時間であったが、ホテルの都合で8:30から朝食。鎌田、鈴木両氏とともにする。9:45出発。9:55セレンゲアイマグ教育局。10:00主事たちとミーティング。Do.ナラントゥーヤと他の全教科の主事たち。普及の業務報告。10:40終了。局長と面会。11:00終了。11:15第一学校の校長と会見(小、高の教頭が同席)。11:30終了。11:50第四学校の校長と会見。12:00第一学校の校長室で午食。12:50第二学校へ向かう。13:00第二学校7学年物理の授業。電球の直列と並列。13:00~13:45協議会。続いて算数「濃度」。ゲレルグワ参加。協議会の最後10分ほど話す。17:15から17:59の間、例の弁士つき上映会。ザハに寄って買い物。帰宿19:00。
左が物理、右が算数の授業風景

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3月8日(火)ウランバートルへの移動日。8:05セレンゲホテルをスタート。14:20無事に全員ウランバートルホテルに戻る。


3月9日(水)午前中、モンゴル語の資料を読む。そのあと、ガンダン寺近くの地図専門店へ歩いていき、モンゴル全図を60000ツグリクで購入。12:00より13:30までウランバートルホテルの2階のレストランで教育省のネルグイ氏と意見交換。鎌田専門家、コーエイ、オフィス職員、通訳ボルマー同席。15:40ボルマーと第50学校へ。ガンバートル先生の教え子の教育実習の授業を見る。内容は「線対称の図形」。テーマを絞ったのは良かったが、修正・改善すべき点がたくさんあった。却ってよかった。18:00帰宿。


3月10日(木)9:45ボルマーと待ち合わせて、教育大のチョロン先生の教室へ行く。ほぼ30名、学生、現場の先生、大学の先生。授業研究の内容を知らない人がいるので、少々説明する。その後、授業研究の映像を、弁士を務めながら紹介。12:00に終了。近くのレストランで昼食。14:00ボルマー、ヒシグとともに国立大学のドヨド教授宅を訪問。教育改革から日本・モンゴルの文化論まで広く意見交換。18:00ウランバートルホテルに帰宿。


3月11日(金)午前中、資料整理。13:00イレードゥイ統合学校へ。14:00より、高畑「時授業研究の紹介」、鎌田「理科における教材研究」の順で講演。聴衆はソンギノハイルラン地区の先生方80名。17:00終了。18:00オフィス帰着。途中、国立大学の玄関前に立つチョイバルサンの像が塗り替えられているのに気づく。この日、午後、日本で東日本大地震が発生。多くの犠牲者と損害を生じたことを知らされる。その真の被害の大きさは帰国後知ることになる。


3月12日(土)業務報告をまとめる。21:00ホテルを発って帰国の途に就く。


2.感想・提案

 今回のモンゴルでの業務の第一の目的は、研修パッケージの見直しのための3モデル地区におけるモデル校のモニタリングである。副次的目的として、昨年11月の研修で研修参加者に紹介された紹介授業研究について、更なる説明と誤解の解消があった。前者については、モニタリングチームが担い、後者については専門家が担うという役割分担があったように思う。しかし、二つの目的に共通してある究極的目的がある。それは「モンゴル国の教育の指導法を子ども中心の指導法に転換する」ということである。その究極的目的を達成するための方法として「授業研究」の普及が図られている。ここで「授業研究」の意味について振り返ってみよう。
 授業研究は次の4つの部分からなっている。「授業計画」(to plan)、「授業実践」「観察」(to do)(to see)、「協議会(振り返り)」(to discuss、to reflect)。これらの能力を向上させて、モンゴルの教員たちに指導法の転換をしてもらうのがこのプロジェクトの究極的目的である。授業実践において、これらの4つの部分に関する能力は自動車の4つのタイヤであり、どれが欠けても、指導法の向上は望めない。また、4つの部分に関する能力は互いに依存している。例えば、「授業実践」の能力を向上させるには「授業計画」の能力がなければならないし、「授業計画」の能力を向上させるには「観察」(授業を見る)や「振り返り」の能力がなければならない。したがって、モンゴルの教員たちは、「授業研究」を通して、4つの部分の能力を同時に向上させることを求められている。
 しかしながら、現在の教員の実情を考えるならば、それは過酷な要求である。初期の段階においては、現状を省みて、「授業研究」を上述の4つの部分に分けて考えるのでなく、「子ども中心の授業を見る目を育てる」活動として考えるほうがよいのではないかと思う。自分たちの授業を改善するために、授業をどのような観点から見るべきであるかを考えさせることが第一である。医者の活動に例えるならば「治療よりまずは診断せよ」である。
 そのように考えるならば、次に問題となるのは、1)だれが授業計画を立てるのか 2)だれが授業を見る見方を指導するのか、ということである。1)については、最初は、まだ心もとないところもあるから、グループで計画案を作成して、大学の先生や指導主事に相談するという方法がある。能力が向上してくれば、各自で作成してもよいだろう。2)については、大学の先生や指導主事たちが授業研究会に出席して指導するのがよい。
 今回、ボルガン県のモニタリングチームには、ボルガン県の指導主事2名とセレンゲ県の指導主事1名と教頭1名およびウランバートルの私立学校の教頭1名計5名が加わっていた。足かけ10日のモニタリングの中で彼ら5名は「子ども中心の授業を見る目」に関して驚くべき成長を遂げた。このモニタリングの最大の収穫は彼らの成長であったといっても過言ではない。終わりのころには、協議会ですでに小生がコメントする余地はほとんどなくなっていた。おそらく、鎌田先生と同行された主事や教頭も同様であったと考える。これらの主導主事や教頭先生がいろいろな授業研究会に出席して、一般の先生方に、「子ども中心の授業の見方」を伝えることを期待する。
  出席した協議会において、当該の学校の教員の発言は、平板な褒め言葉だけであった。それはまだ授業を見る目をもっていないためであり、それ以上を現在の時点で望むのは過大な期待である。これからの成長を望むものである。