モンゴルプロジェクトフェーズ2/Action in Mongolia

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about Mongolia Project

モンゴル国子どもの発達を支援する指導法改善プロジェクト(フェーズ2)
業務報告(松浦執 2011年11月4日~11月20日)

1.日程

・2011年11月5日(土)
ウランバートル到着 ウランバートルホテル投宿 ヒシゲさんの出迎え、コーエイの鈴木さんらと日程についての打ち合わせ。

・11月6日(日) 講義資料などの準備作業に従事

・11月7日(月) 
午前:講義資料の印刷、モンゴル語への翻訳準備など。通訳のドルマーさんと合流する。
午後:ハンウール区第15学校にて講義

第15学校に、ハンウール区の校長、指導主事らが集まり、日本人専門家の講義が12:00-14:00に実施された。松浦は「授業研究」について、日本で行われている授業研究を、ビデオを用いて詳細に紹介した。これに対して、モンゴルで行われている授業研究会との違いなどに関して活発な質疑があった。モンゴルではナショナル・スタンダードに基づいた授業を行うので、必ずしも日本の教師が心がけている授業のあり方とは重ならない面がある。本国の教育の発展にとって望ましいあり方、望ましい発展プロセスなどをよく議論して練り上げていただくのがよい。
 その後、事務所に戻り、ボルガン県での講義資料のモンゴル語訳などの作業に従事した。

・11月8日(火)
午前から午後:JICAオフィスにて教育省のツォゴー先生と合流し、第18学校を訪問。同校では生徒は各種の第2外国語を学んでおり、日本語のクラスがある。今回の訪問の目的は、日本語のクラスの生徒と、東京学芸大理科教育分野の松浦研究室とをSkypeで結び、インターネット越しのリモート科学ワークショップを行うことの打診と試行実験である。理科のテーマを扱う予定であるが、モンゴル側の授業としては、ITでのコミュニケーション分野の実習として、または日本語の時間に、日本語会話、意思疎通の実践実習として位置づけていただくことが可能と思われる。校長ほかとの面談を経て、11年生のITの授業に合流し、実際に日本の研究室とモンゴルの教室とをSkypeで結び、両者で話し合う実践を行った。事前にここまでの実践を行うことを打ち合わせしていないので、画像や音声伝達の障害があったが、コンピュータを換える、デバイスのインストールをするなどの作業をモンゴルの生徒が精力的に行い、最終的には音声、画像、チャットとも不自由無く送受信できることを確かめた。
 モンゴルの生徒は、日本語でコミュニケーションすることにも積極的であり、日本の学生に様々な質問をしていた。日本側の学生も、手書き文字の併用、チャットの併用など臨機応変に工夫して、画像、音声の不通時にも対処していた。日本側の学生にも、コミュニケーション上の課題などがある程度感得されたことと推測される。
 授業後のミーティングでは、第18学校での授業計画、日本側のワークショップ案などを適宜交換して相談を進めることになった。ワークショップの案例として、画用紙を用いて雪の結晶の模型をつくり、結晶成長の特徴などを学習する、といった例示をした。
午後:ボルガン県での講義資料のモンゴル語訳の作業を継続した。

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・11月9日(水)
JICAオフィスでコーエイの石井さんらと打ち合わせし、ボルガン県での研修のための準備、資料準備などの作業を継続した。


・11月10日(木)
ボルガンでの研修のため、研修リーダーのオユンツェツェグ先生そのほかウランバートルの教育リーダーとともに、ボルガン県エルデネットにバスにて移動。


・11月11日(金)
研修初日。全体会の形式で進められた。午前中は、研究の目的の説明、モンゴル国での教育にかかわる制度変化、スタンダードなどについての説明。指導法に関するトレーニングとその普及の必要性などについての講義が行われた。松浦は午前中、子ども中心の指導法を軸として、日本の学習指導要領の変遷、国際的な潮流としてPISAで評価される新しい学力観、日本での授業研究に求められるもの、についての講義を行った。
 午後は、授業研究および指導法改善に関する講義、およびこれに関するグループディスカッションが行われた。松浦は、授業研究についてのモンゴルの先生方によるプレゼンテーションに続いて、授業研究のビデオに関して補足の説明を行った。


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・11月12日(土)
研修2日目。各教科に分かれての、授業研究、教材研究についての講義および討論が中心となった。松浦は午前中IT教科の討論に参加した。単元の構成をして授業研究会を予定する場合、ITでは写真の編集・加工のようにソフトウエアの技術習得を中心に指導するステップがあるが、あまり特徴的な指導を予定しない場合は、そのようなステップを授業研究会に当てるのは適当でないだろう。例えば、グループでどのような写真集を作るか、素材の収集の仕方などを討論して決めルプロセスや、表現の方法についてのアイデア交換など、恊働的で、子どもの自発的行動を促すような指導のあるステップを研究会にあてるのが適当だろうという意味の発言をした。
 これをきっかけとして参加者が自ら行った試みを活発に紹介する場面が見られた。以下に内容を抜粋する。大まかな枠組みを考えて、クラスの生徒に投げかけたところ、7年生の生徒たちから「2, 4, 7」(モンゴル語の語感でI love youに相当するシンボルになる)というテーマでクラスのアルバムを作りたい、画像の収集は自ら携帯電話を用いて行いたいなどの積極的なアイデアがでてきた。生徒と授業のメーリングリストをつくることにより、生徒の提案で授業を組み立てることができた。ところが、11年生に同様なテーマを投げかけると「2, 4, 7」には乗ってこなかった。学年によって受け止め方も変わるのだとわかった。また、授業研究会では別教科の教師に観察してもらうことで、全く新しいアイデアが出てきた。新しい指導法では、確かに生徒が授業に積極的になることは実感できる。他の授業で発言の無い子どもが、ITでは一番積極的になるなどという例があり、子どもによって、積極的になれる科目や状況が異なることを考えねばならないと感じた。
 また、モンゴルのITの教科書では理論的内容が難しく、授業時間数の少ない中では未消化になりがちである。地方ではインターネットのアクセスが悪く、インターネットを活用した授業は効率が低い。また、動機付けにおいて、ついつい「〜があるよね」と誘導してしまいがちである。むしろ「もうすぐ何があったっけ」など、もう少し引いたところから子どもに探させるようにしたい。学校によっては校長や年配の教師の理解が進んでおらず、授業を工夫しようとして孤立感を持つ場合がある。他教師と連携して教材研究しようと言う場合、日中は多忙のため、平日では夕方、もしくは土曜に集合するしかない。一方で授業研究のために配分された資金はわずかであり、印刷などでかなり消費してしまう。
 この教師への金銭的補助については、プロジェクトチームと連絡をとったところ、「指導法などの工夫をする教員には相応のボーナスを配分する」という取り決めがあるが、校長の裁量に任されているので、校長には本プロジェクトの有効性をふまえて判断されるよう再確認が必要である旨の情報を得た。ボルガン県研修のリーダーらとの懇談で、今後数多くの非モデル校に普及して行く際には、校長や教育文化局のマネジメントのあり方についても、ある程度共通的なフレームワークがある方が普及して行きやすいのではないかと意見表明した。
 また、ITチームから、教師PCから生徒PCを制御し、教師PC画面を生徒PCに送信したり、特定の生徒の画面を全体に配信したりできるソフトウエアを教えてほしいとの依頼があった。有料の教室ソフトにはそのような機能が備わっているが,購入する予算はないとのことであった。そこで、windowsの基本機能の利用、フリーのVCN、remote desktopなどのツールの使用を議論したが、1対多での利用には十分でない。そこで日本の高校教師などにメールで尋ねたところ、日本語ではあるが、フリーウエアになっている「今、何してる?」というソフトウエアが候補となることが分かり、翌日にITチームに紹介した。コマンドなどに英語表示があるとよい、とのことであった。
 夕方は県ごと学校ごとに分かれての情報交換が行われた。

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・11月13日(日)
 翌日の模擬授業実施に向けて、各教科に分かれての授業案作りが行われた。なお翌日朝に授業があるため、この日の作業は夜半にいたるまで続けられた。
 松浦は午前中、初等理科のチームを中心に参加した。初等理科では「生きているもの、生きていないもの」というテーマの授業を行うことになったが、「生きているもの」「生きていないもの」とはどういうことか、それをもとに生徒にどのように活動させるか、という両面での、クリアーにしにくい議論が行われた。松浦もこの概念の分類について尋ねられたが、教科書も確認しておらず、推測で答えた。「生きているもの」は基本的に生物、それ自体で存在しているもの。われわれはその実在がどうなっているのか自然科学の方法で探求する。「生きていないもの」はおそらく人工物を指している。樹木を切り出して組み立て、塗装した机のように、人間が自然を加工して作ったもの。従って、はじめからある意図、目的を持って作られ、人間が関わることで意味を持つもの。これに対し、水は生きているものか、生きていないものか、などの質問があった。水をどちらに分類するのが適当かわからないが、上のことを拡張的に考えれば、水は太陽のエネルギーによって地表を循環し、気象現象を起こし、また生命の存在を可能にする。このように不断に運動する水は「生きている」ものと分類されるのかもしれない。工場排水のような人工の手が加わったものは「生きていないもの」かも知れない、などと議論した。何れにしても分類は明確でなく、先生方にも戸惑いがあったが、生物と、身の回りの人工物のいろいろな例を絵にして、生徒たちに分類させてみよう、といったことが議論されていた。分類の仕方については不明なところがあるが、このように分けることで生徒に何を見いださせたいかをよく考える必要があると発言したが、明瞭になったとは言えない状況であった。ちなみに、かつては、どんなものも生きている、だから机にいたずら書きをしたら机が悲しむ、といった擬人化的な自然観が家庭教育ではあったという。
 後半は算数のチームの討議に参加した。正方形を4つの同面積の多角形に分ける。これを折り紙で行う。次に、このようにして得られた長直角三角形を組み合わせて様々な四辺形を作る。それらは、形は異なるが面積は同じであることに気づかせる。さらに、これらを組み合わせつつ内部に空隙のある四辺形を作らせる、という授業内容が検討されていた。最初の段階で、正方形を多角形に分ける時点で、三角形を作る、すなわち斜め折りすることに気づかなかったらどうしようか、ということが盛んに問題にされた。やはり、教えるしかなかろう、という発言が目立った。そこで、正方形の土地を4人の兄弟で等分するというクイズを出してみてはどうかと発言した。4つの井戸と4つの納屋を配置し、3本以下の直線で分けるという条件をつけ、井戸と納屋の配置を工夫することにより、斜め線を見いださせる。辺と平行な線で解決できる例の次に、斜線が必要な問題を出し、誰かが気づいたらそれを発表させる。この提案は興味を引いたが、最終的な授業案には含まれなかったようである。ただし、授業案作成者のリストの中に通訳者ともども入れられることになった。
 また、空隙のある四辺形の問題で、「穴」という用語では生徒に、錐で穴をあけるようなイメージを持たれて、そこから脱せなくなるのではないか、ということが盛んに議論された。しかしこれに代わる言葉を見いだすことは難しかったようだ。
 この日はどのチームも授業準備が長引き、夕食後もそれぞれに教材作りを継続していた。授業案作りの終盤では校長、学修マネージャ、教育文化局職員は別に集合して検討会が行われていたが、松浦は参加していない。しかし、そこでは非常に活発な議論が行われ、なかなか終了しようとしないほどであったと聞いた。

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・11月14日(月)
 午前中は児童、生徒を登校させて40分間の模擬授業が行われ、これに引き続いて協議会が行われた。主としてその授業の科目の教師が観察者になり、協議会にも参加したが、若干名別教科の教師も参加していた。
 松浦は、前日の授業案作りに参加していたこともあり、実際に三角形での分割を生徒が発見できるかどうか興味があり、初等算数の授業を観察した。授業は最も若い、1年目の先生が選ばれており、本人も授業が進むにつれて緊張してしまったとのことであった。授業内容は、最初に正方形を4分割折りすることが行われ、斜め折りについては教師がやってみせていた。面積についての説明があった。その後、長直角三角形の切り抜きが配布され、生徒はひとりひとりでその三角形を組み合わせて四辺形を構成する試みをした。できた生徒に黒板に三角形をはらせていた。空隙のある図形についてはかなり難しい例を教師が示し、生徒に試みさせた。宿題として、最初の正方形からできる別の図形を用いて、同様なことを行いなさいという問題が出された。
 その後の協議会では、進行の早さ、基本的に教師が教えていく形で進行したこと、実際に試みようとしない生徒が居ること、三角形の組み合わせ方などについて様々な意見が出された。最も若い教師が授業者になってしまい、気の毒な面があったが、比較的に反省点に関する意見が多数を占めた。松浦は最後にコメントを求められたので、次のようなことを発言した。この授業では、形が異なっても面積が同じ例を見いだすおもしろさがある。パズルのようにして実体験にもとづき、また直観的にわかりやすい学習の方法だと思う。四辺形を見つける過程で、三角形の同じ長さの辺同士を合わせる(または複数の辺の長さの合計と等しい辺を合わせる)といった規則は生徒自身が見いだせそうである。先生の声かけで子どもから引き出せるのではないか。また、四辺形でない図形を見いだしている場合も、対称性や規則性の高い並べ方からは興味深い形が出てくるので取り上げても良いと思う。総合学習の先生のコメントはおもしろかった。即ち、空隙のある四辺形を作る、ということまで拡張していくと、家庭科や美術と連携して、デザイン、デコレーションと結びつけた授業も考えられる。その上、美的感覚と対称性や反復、さらには算数で面積が分かる、ということは全体として質の高い学びだと思う。空隙のある図形では、シンプルなものは生徒にも面積も求めることができるだろう。
 その後の授業案を向上させる討議でも活発な議論があった。松浦は、空隙のある図形を折り紙の手法で作成することをこころみ、不完全な例をひとつ紹介したが、それを見た数学の先生の一人がたちまち完全版を提案された。
 その後、初等理科のチームの討議を訪れると、生徒の集まりが遅かったので、模擬授業は昼近くに行われたばかりだったということであった。このような詳細な情報も、もしリアルタイムに共有できれば、授業研究にも効率的な参加が可能になるだろうと思われた。松浦が参加したところで協議会が行われた。そこでも「生きているもの」「生きていないもの」という単元の目的のとらえにくさが、授業構想のやりにくさと関係しているように思われた。ここれもコメントを求められ、つぎのような意見を述べた。実際の授業を見ていないので申しわけないが、この授業を体験することで子どもはどのようなことを感じ、どのような行動に結びつくかを考えなければならない。人がパソコンに向かっている絵を指して、生徒が「これは分けた方がいいのではないか」という意見を述べたということなので、分けるとどうなるかを考えても良かっただろう。即ち、「生きていないもの」を、人がある意味や目的を持たせて作り出したものと考えると、それらは人との関わりの中で捉えなくてはならず、自然にとっては意味の無いものとなる。そればかりか、20世紀では人工物が及ぼす影響が、想像を超えたものとなり、自然への甚大な影響を与えつつある。一方でそれらは、人間の生活を豊かにし、様々な可能性を作り出して来た。これらのことを認知すると、子どもは将来、望ましい人工物をつくりたい、とか、自然との関わりの中で熟考して人工物を生産したり利用したりしたい、との考えに至るのではないか。「生きているもの(あるいは生きている自然)」と「生きていないもの」を関連して考える知識がまだまだ欠如していることに気づくべきだろう。以上のコメントは実際の教科の意図を考慮したものではない。
 その後、県ごとでの今後の指導法普及計画の討議となった。各県で、教師と、校長や教育文化局とに分かれてそれぞれの立場での行動計画の検討が行われた。松浦は各県での特に校長や教育文化局の話し合いを巡回し、それぞれの取り組みの計画を聞いた。きわめて具体的な行動計画が立てられているところが多かった。また、第1フェーズでの指導書を改めて読み直してみよう、という提案が共通してたびたび聞かれた。

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・11月15日(火)
 研修最終日。各県での行動計画などの発表、研修の評価や統計、研修のまとめが行われた。松浦は画像を中心としたプレゼンテーション”More Child-Centered Teaching in Mongolia –Unceasing Steps to the Future”を作成し、教育における子ども中心、それを支援する教師を中心とした学校運営、そうして人材を輩出する機関である学校を中心としたモンゴル国というスキームを提示。続いて子ども中心により、受動から能動へ、中央集権からネットワークへと変わること。教室においては、タイミングを見計らって子どもに「次に何したい?」と聞いてみてほしい、校長や学修マネージャは教師に「次に何したい?」と尋ねてほしいこと。価値ある実践記録は様々な媒体で配布してほしい、そうした素材を有機的に連結して新たな学修素材をつくり、これを能動的な子ども、学び続ける教師、学校や生活環境などの間で恊働的に学びに活用し価値を高めてほしい。様々な制限のなかで創造するアーティストの仕事場。そしてあらためて、未来を創造していく子どもが世界の中心にあること、などを表現してみて、漠然としているが研修最後のコメントとした。

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 研修全体としては、指導者の努力による円滑な運営と、参加者の積極的活動が印象的であった。一方、模擬授業の準備が1日に限られているのが、時間不足の感が否めなかった。研修者からは、もっと詳細まで授業案を練りたかったという声が聞かれたり、一回の試行授業、検討会の後、これをもとにもう一度授業を行ってみたいという感想も聞かれたりした。現場教師にとっては、子ども中心の指導法の効果を実感できる授業を直接体験できることが最も有効であろう。

・11月16日(水)
 ボルガン県よりウランバートルに帰還。

・11月17日(木)
 JICAオフィス石井さんらに資料の提出、ここまでの業務報告書の作成作業、翌日のイレードゥイ統合学校でのプレゼンテーション資料の修正および追加などの作業に従事した。

・11月18日(金)
 日本人専門家、高畑先生、福知先生とともに、イレードゥイ統合校での授業研究会参加と講演。
 午前はじめは第1中学校にてITの研究授業と検討会。分岐アルゴリズムをテーマにした授業であったが、比較的に数多くの問題に取り組む伝統的な方式であったとのコメントが多かった。松浦は、黒板の前のスクリーンをサイドにずらすことを勧め、黒板をグループ発表の場にできること、比較的に広く取ってある教師スペースを生徒グループの相談を受けたりするスペースにもできること、グループ内での教え合いを促進するように発表者を教師が指名してもよいということ、すでに同じアルゴリズム構造を学習済みなので、グループでオリジナルな問題を作って発表し合い、全体議論するのもよいのではないかなどのコメントをした。以上は、教室の生徒が比較的に真摯に取り組んでいることをふまえた上でのコメントでもある。また、生徒が共通的に躓いている点があるので、全体に注意する必要があることを指摘した。
 引き続いて「初中等教育におけるICTの活用」のタイトルで第2高校の会場で1時間の講義を行った。内容は、能力観の変化、OECDのキーコンピテンシーなどをふまえ、情報化がこれに寄与する可能性、これらの能力の向上に情報技術をどのように役立たせるかについて、日本のフューチャースクール構想の内容を紹介した。また、デジタル教科書のサンプル版を実演し、それを用いてどのように指導するかなどに触れた。デジタル教科書については特に関心があるように感じられた。このほか、前述のフリーウエアの紹介なども含めた。
 午後、再び第1中学校にもどり、理科の研究授業と検討会に参加した。内容は浮力を見いだし、浮力の大きさをバネ秤で直接測定し、これと流体(水)の排除体積分の重量が等しいことを測定と計算により確かめるものであった。理科の先生は午前のITの研究授業にも参加されており、そのときの松浦のコメントも反映して、グループ活動を活性化して行っていた。松浦は、上皿天秤により浮力を測定する方法を提案し、同じ体積で様々な重さの物体の浮力が等しいことを示し、その大きさが排除体積分の流体の質量に等しいことを示すことで、認識を確かにできる可能性があることを示唆した。さらに、流体の密度を変えた実験を行い、浮力は流体の密度に依存することを認識させ、そのことにより、水には浮くが空気中では浮かない人体といった実感に結びつけることを提案した。
 以上で今回のモンゴル渡航での予定スケジュールを終えた。

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・11月19日(土)
ウランバートルから帰国の途につく。