モンゴルプロジェクトフェーズ2/Action in Mongolia

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about Mongolia Project

モンゴル国子どもの発達を支援する指導法改善プロジェクト(フェーズ2)
業務報告(松浦執 2012年9月21日~10月6日)

1.日程

・9月21日(金)
成田(大韓航空)-仁川(仁川トランジットホテル泊)

・9月22日(土)
仁川(Myatモンゴリア)—ウランバートル(UB)着。ウランバートルホテル泊。

・9月23(日)
ボルガン県モニタリングのための準備(終日)。17時より青年海外協力隊新川真由美氏と面会。ウランバートルを中心とした、モンゴルでの学校教育の状況について情報交換。

・9月24(月)
UB—エルデネット−セレンゲ・ソム着。セレンゲ・ソム学校にて校長と面会。
セレンゲソム校では、第1フェイズの教材を教員が参考にしている。同校では①授業を楽しくする教材研究、②授業前に子どものイメージを高める、③チームでの教材研究、④黒板の使い方の研究の4点に重点を置いている。
以降9/29まで、UBプロフェッショナルチーム:エンフトゥーヤ氏、タウリンベック氏、ドゥルガー氏、オットンバエル氏、オドゲレル氏、通訳ドルマー氏、ボルガン県教育局イデレ氏、運転手氏2名と同行。

・9月25(火)
セレンゲ・ソム学校で授業研究モニタリング。

8:30-9:30初等理科(2年生)
 「友達との挨拶」
 3チームに分かれて、絵を見ながら何をしているか考え、代表が前に出て説明する。また教科書の文章を読んでそれを説明する。さらに、マーシャと熊のビデオの一部を見ながら意味を説明する。絵とことわざを組み合わせる。これらを通じて、互いに尊敬すること、友達などに変な言葉を言わない、挨拶をするなどの道徳を学ぶ。さらに、チームごとに用意された芝居を行う。
 授業に続く検討会において、次のような内容を中心とするコメントをした。
 手本に近い事例で特徴的な態度を学んだが、身近に起きる出来事について具体的に話し合い、振る舞い方として単一の答えがなくとも、相手の立場に立って考え振る舞うことが大切であることに気づくような学習をしてもよいだろう。自分に悪意がなくても偶然相手に迷惑をかけたようなとき、互いにどのような考えでどのような振舞いをするかなどを、子どもの話し合いを中心にして検討するなど。振る舞い方を型として身につけることは大切だが、その内実を考えさせる必要はある。

11:00-12:00 5年生理科「物質の構成」
 物質を構成する小さな粒子を考える。その集まり方の絵を見て、固体、液体、気体の状態に対応させる。空気を袋に吹き込み、指で変形できることを鉄片、ガラス片などの固体に指を当てても変形できないことと対比し、気体、液体が変形できることを確認。チョークを削って粉末にし、固体が微小な粒から構成されることを指導。物質(の最小単位)は目に見えない粒であることを指導。シリンジに空気を入れてピストンを押し、圧縮できることを確認。その後シリンジに水を入れて、水は圧縮できないことを確認。
 授業に続く検討会において、次のような内容を中心にコメントした。
 固体、液体、気体の図で対応を間違ったチームがあったが、これら3態のミクロな描像での区別は案外難しい。長距離秩序、短距離秩序、無秩序、といった構成と、同じ物質の内部エネルギーの違い、分子原子間の入れ替わりが起きる、起きない、などが考えられるが、ガラスのような固体もある。静止画だけでなく、シミュレーション動画などを加えて、運動の様子を合わせて捉えたい。コロラド大学で公開されているシミュレーション教材Phetなどをできれば参照したい。固体・液体・気体の状態をチームごとの演劇で示したが、配置だけでなく、むしろ運動の様子を演じさせてはどうか。また、液体の変形と固体の非変形、気体の圧縮性と液体の圧縮性の両方のデモ実験が行われたが、液体の変形と非圧縮が混乱しないかという心配もある。圧縮・膨張は別の単元にしてもよいのではないか。

14:30-15:30 7年生化学「元素の表記」
 元素名のいくつかを、モンゴル語、英語、ラテン語にて示し、元素記号がどの文字に対応しているかを示した表をもとにして、班ごとに配分された元素についてその元素記号の規則を議論させる。よく観察することにより、「定義を見出す」ことを指導の目的とする。子どもの話し合いと発表、クロスワードパズルの解読と発表などを中心とした。
 授業に続く検討会において、次のような内容を中心にコメントした。
 物質の発見、命名の科学史などは興味深いが、授業では科学史的トピックは扱われなかった。元素記号の表記規則についてはどれだけ根拠があるか分からない。元素の名前を覚えることは大切だが、物質のサンプル、皆回りの物質、人工物に活用されている例などを調べて、実際にどのような物質がそのような元素を持つのか、など実際の物質を見る目を養うことと合わせて行えば興味が高まるだろう。表記法の考察をこれだけの資料からさせるというトピックは、研究授業としては扱いにくい課題だったと思う。
 授業内容のほか、フリーディスカッションとして授業研究について次のような意見があった。このプロジェクトでは、子どもと教師の両方が同時に発展するチャンスが得られる。日本に研修に行った先生の話は特に興味をひく。モニタリングは年2回だが、4回くらい巡回してほしい。ケンブリッジスタンダードの研修にも出たが、ここでも授業研究の経験を生かしたい。違う専門の教員とチームになると、広い情報が得られる。授業研究は子どもが一番楽しみにしており、今度はいつやるのかと聞かれる。このプロジェクトの前には、他の先生の話を聞くことはなかったが、人の話を聞けるようになり、チームのよい面も理解で来た。私塾も開いており、年齢を超えたグループで勉強させているが、非常に効果がある。

18:00 教員とモニタリングチームの交流会
 次のような議論が校長、学習マネージャほかからあった。日本の真似ではなく、モンゴル人が普段のお茶のように行う身に染み付いた授業研究を育てたい。モンゴルの教員には波があるが、この指導法については波のないほど身に付いたものに育てたい。校長も毎週月曜の教員会議で考え方を繰り返し説明して思い出させてくれる。本校はステップアップしていると外部の人から評される。本プロジェクトの大きな特徴は、専門家がソムまで足を運んで手助けしていることである。これは他のプロジェクトには見られなかった。教員30名中3名の訪日者がおり、それゆえその3名は人一倍がんばっている。参考になる話と活動を続けてほしい。子どもの親はまだ理解できない人がいるが、実感的に分かってもらう必要がある。例えば、実験器具がないので家庭から持参させるような場合、親の協力が必要になる。このような場合、それ以前に、学校でやった実験を家庭でも再現することを宿題にして、両親が子どもの学びに関心を持つことが非常に効果的である。総合学習で病院を見学したとき、地域の疾病のある老人には月一回巡回して見舞うというリストがあるのを知り、孫が病気のおじいさんに伝えてその制度を医者に実施してもらうようになったという事例がある。学校がこのような教育に積極的になることは、地域にも影響のあることである。
 専門家チームに対し、グループ学習が効果的であることを親にも理解してほしいが、そのためにどのようなことが考えられるか、という内容の質問があった。これに対し、報告者からは次のようなコメントをした。
 評価の問題が関係するかもしれない。客観テストで評価できる学力は分かりやすいが、この指導法はこのような学力のみを対象にしたものではない。グループ学習では、他のメンバーと相互作用しながら、活動を通じて子どもが発展することが重要である。このとき、グループ学習での評価の仕方が問題になり、まだ検討中の問題でもある。活動を通じて、チーム内外で相互評価を行うが、これは他人に点を付けるということよりも、自分自身を積極的に評価できることになること、自己評価を学習に埋め込むことがポイントである。年上のメンバーがうまく教えてくれた、教えられたけど自分はまだよくできなかった、年下の子にうまく教えられた、うまく教えられず自分で良くわかっていないことに気づいた、チームでの学習にこのように貢献できた、誰それの考えがとてもよくて勉強になった、など自己評価することが学習を発展させることに不可欠であることが次第に身に付いてくる。自己評価をうまく引き出すように指導することが、子どもの確かな成長につながり、それは両親が納得できる最も大きなことではないか。
セレンゲ・ソム校寄宿舎泊

9月26日(水)
9:00-10:00 セレンゲ・ソムの自然見学(校長案内)
10:00-13:30  ボルガンへ移動。ボルガン第1学校到着。
14:30-15:30 7年生物理「物体の体積」
 1辺10cmの立方体容器の体積を計算し、1000 ml の水を入れて、cm3 = ml の単位換算を確認。直方体の木片の3辺を定規で測り、体積を計算。この木片の体積を、立方体水槽とメスシリンダーを用いて、水の排除体積から実測する。最後に、不定形な物体としてジャガイモを用い、この体積を水の排除体積から実測する。
 授業に続いて行われた検討会では次のような内容を中心にコメントをした。
 授業の3つのポイントについては、そのつど生徒に考えさせ、はっきりまとめ、板書にも示す必要がある。実験によって何を示したのかをよく把握させたい。木片の実体積がメスシリンダーの最大目盛100 ml を超えている。最大目盛の8, 9割くらいで実測できるよう準備したい。生徒の測定の仕方はよく注意して、問題のあるやり方は全体に注意して考えさせる必要がある。生徒は、排除体積が100 ml を超えているのに最大目盛の100 ml として報告している。100 ml 以上であれば、もう1本のメスシリンダーを与えて超過量を測ることを気づかせたい。木片の実験は、固体の体積と液体の体積が等しいことを確かめるものなので、計算も実験もできるだけ正確に行って初めて意味がある。その上で、これを応用して不定形なジャガイモの体積が測れることに気づかせたい。生徒はひもを回したり定規をあてたりして迷っていたが、ここで液体を使えばよいことは生徒自身が見出す必要がある。また、ジャガイモの体積を別の方法で測って比較する発展も考えられる。ジャガイモを一定の厚さにスライスして、その概形から方眼紙を用いて面積計算し厚さをかけて体積をもとめて積算する方法が考えられる。また、定規と上皿天秤を用いて測れないか、という課題で、1cm3の立方体のジャガイモを作って重さを量り、ジャガイモ全体の重さとの比から体積を求める方法などを発案させる。また、そもそもなぜ液体の排除体積で測定できるのか、という子どもの質問があったときどう答えれば良いだろう。液体の非圧縮性とつながる考察になるだろう。
 ボルガン ハンタイ・ホテルに宿泊

9月27日(木)
ボルガン第1学校で授業研究モニタリング。

8:30-9:30 2年生初等理科「学校の歴史を知ろう」
 教室に学校創建当時からのゲルや建物の模型、第1学校を卒業した著名人の写真、スポーツ大会の歴代のトロフィーなどを置き、教室を博物館と名付ける。生徒に見学させ、生徒に発言させながら、教師が順を追って学校の歴史などを説明する。そのうち関心を持ったものについて、生徒に絵に描かせ、何の絵か、なぜその絵を描いたか、などを発表させた。
 授業につづく検討会では次のような内容を中心にコメントした。この単元の授業は、学校の中に生徒が自己を位置づける一連の授業の過程に置かれている。実際の物品を展示することでイメージが広がりやすくなった。学校に関係する著名人はモンゴルの歴史の中に位置づけられるような人物であるので、世界の動き、モンゴル全体の歴史、学校の歴史という時間経過の中に関連づけるような展示の仕方がよいだろう。写真や図は、そのトピックを表すタイトルや記述とともに掲示したい。生徒の作品(絵)を作らせて説明させるならば、先生自身が生徒の作品に興味を持てる段階に至れるように、生徒にヒントを挙げながら作品制作を展開させたい。そこまですれば生徒にとっても全員の前で話したい内容がでてくるのではないか。

11:00-12:00 5年生理科「なぜ昼と夜があるのか」
 モンゴルには、人にはみな乗り物なしの旅がある、ということわざがある。乗り物に乗らない旅とは地球の自転である。地球儀のモンゴルの一に星のシールを貼り、モンゴルの東端と西端を確認させる。地球儀の横にローソクをともして太陽の代わりとする。教室の照明を切り、地球儀を回すことで、モンゴルに光(太陽光)が当たるときと当たらないときができることを確かめる。これが昼と夜があるしくみであることを気づかせ、子どもに答えさせる。地球上から見たときの日の出入りの図を示し、太陽が近い(地表に近い)、遠い(地表からはなれて見える正午)等の表現で日周運動を説明する。次に地球の自転が右向きか左向きかを地球儀を子どもに地球儀を回転させながら考えさせる。さらに、自転の向きを考えさせるために、時計の針がどちら向きに回転しているかを題材にする。
 授業に続く検討会では地軸とはどういうものか、という質問を受け、また全体について次のようなことを中心にコメントした。自転の軸は、地球が形成されたときの回転運動によって決まり、回転運動の慣性により同じ向きを保っている。地質的に特別な構造があるわけではない。これが、地球の周りの公転面に対して傾いている故に四季が生じる。ローソクの光を当てて地球儀を回しているとき、モンゴルに光が届かないと言っている子どもが居たが、これは冬季に相当する配置だったためだ。従ってこの子どもの発言は地球の公転の学習のときに再度意味を持つ。近年は太陽系の惑星は明瞭な実物映像をインターネットなどで利用することができるので、宇宙空間の中での運動を見せた方がよい。その上で、地球上に視点を固定したときにどう見えるかなどを映像、実験により示せるとよい。座標系を移して理解することは概念的に難しいので、できるだけ丁寧に生徒がどう理解しているかを確認したい。

14:30- ホタンウンドゥル・ソムへの移動 

・9月28日(金)ホタンウンドゥル・ソム校での授業研究会
8:30-9:30 3年生理科「歯の健康」
 歯の構造や部位の名称を、模型を用いて説明。虫歯の写真を示して、何であるか答えさせる。「ムシと穴」というアニメクリップを上映し、どうなったのか、どうしたらいいのかについて子どもに答えさせる。きれいな歯の写真を見せ、どのようにすればこうなるかを紙に書かせる。歯と歯ブラシの模型を示して歯の磨き方を教え、一人一人に歯ブラシを配布して歯磨きを実習する。虫歯になりやすい食べ物、なりにくい食べ物を分類させる。
 検討会では次のような内容を中心にコメントした。検討会では、授業者が、どのような目的でどのような方法を試みたのかを発表してほしい。歯の健康は大きく言えば生命に関わることなので、しっかり磨けることと生活をコントロールするという点で確実にトレーニングした方がよい。歯磨きの実習等は、個々の生徒が確かに磨けているか確認できるとよい。こうした意味で、このような授業は歯科医師など専門家に来てもらって授業することが考えられる。専門家ならではの視点が得られるだろう。また、一人一人の生活について質問中心にすすめ、生活状況を浮き彫りにし、それを全体で検討するということも考えられる。

11:00-11:30 9年生化学「指示薬による液性の検査」
 フェノールフタレインとpH試験紙を用いて、はじめにNaCl, NaOH, HClの液性を調べる。色の変化を表にさせ、教師の結果と比較する。次いで、フォフスブル湖の塩を溶かした水溶液、川の水、オレンジ果汁の液性を調べる。同様に色の変化表を発表させて比較する。水溶液は小瓶にいれたものを事前配布してある。
 検討会では次のような内容を中心にコメントした。指示薬(紙)の変化と酸性、中性、アルカリ性の対応を生徒がどの程度理解しているのかわからなかった。これらの液性をもつ液体の性質などもある程度把握したい。この点を前半の実験でもっと徹底しておく必要があろう。特に、教師と生徒の実験結果が違う場合などは、その理由をできる限りはっきりさせて、簡易な検査なので再検査した方が良い。実験の確実性を押さえた上で、次の実験に移りたい。身の回りの水溶液の液性は興味深い課題である。川の水がアルカリであることについては討論できるとよい。そのためにはいつどこで採取したか、周囲の状況はどうか、排水などの状況はどうかなど基本的な情報を明らかにする必要がある。

14:30-15:30 8年生物理「圧力」
 屋外での実験から導入。泥の上にブロックを、面を変えて乗せ、沈み方を観察する。その後屋内に戻り、ブロックの質量の測定を演示。ブロックと同じサイズのスチロール材を配布し、班ごとに書く面の面積を測定させる。圧力の定義を導入し、角面を下にしておいたとき、それぞれの面が地面に及ぼす圧力を計算させる。
 検討会では次のような内容を中心にコメントした。板書の数値計算に一つミス。圧力を算出するとき示された比例関係の利用は少し無理がある。今の計算では重量が定数であることに注意したい。圧力の定義に忠実にシンプルに計算する方が、単位の関係なども明瞭に示せる。

17:30- 教員集会
 全教員との交流集会が行われた。新指導法と授業研究の効果について紹介され、質疑応答となった。日本人から見て、ホタンウンドゥル校での授業研究は率直にどう思うかという質問があり、次のような内容を回答した。日本は現在低成長または0成長の状態にあり、そのような時代の日本の教育には日本なりの問題がある。モンゴルは成長している時である。モンゴルと日本で教育の情報を交換するときにも、それぞれは全く異なる状況の中で教育を構築して行かねばならない。高度成長期の日本人は様々な工夫をしようとしたし、科学技術教育にも力を入れていた。モンゴルでは、次世代にモンゴルをどうして欲しいか、どのようにモンゴルを構築してほしいかを考えて教育しなければならない。そう考えて日本の方法を参考にしながら教材研究、授業研究していただきたい。研究授業では、まず基本として、この授業で何ができるようになるのか、分かるようになるのか明瞭に具体的に示し、生徒が最後にはそれができるようになったことを確認すること。その上で教材研究して発案した教材と指導案をシンプルに、雑多なものを詰め込まず、思い切って適用してほしい。そして協議会では授業者が授業のコンセプトと、やってみて、生徒の反応・活動についてどう感じたか、良かったところ反省するところなどを、自信を持って説明してほしい。授業者は協議会で主役であってよい。シンプルなコンセプトを観察して観察者の教師は様々なことを感じ取れるはずである。ぜひ、新しいモンゴルを発展させる子どもたちを育ててほしい。

・9月29日(土)
ホタンウンドゥル・ソム校からウランバートルへの帰還
 ホタンウンドゥル・ソムからウランバートルへ陸路12時間以上をかけて帰還した。

・9月30日(日)ウムノゴビ県モニタリングへの準備
 ウムノゴビ県での研修では、“つまずきの予測と対策”について講演してほしいとの要請があり、これに対する資料収集とプレゼンテーションの作成を行った。

・10月1日(月)ウムノゴビ県への移動
 午前中はウムノゴビ県でのアセスメントについての打ち合わせと準備。午後、同県への移動。以降10月4日まで、学芸大鎌田氏、プロジェクト側ノルジマ氏、セレンゲ氏、バースカ氏、その他教育省チームと同行。

・10月2日(火)ウムノゴビ、エルドゥミイン・ゲゲー学校での研修会
9:00-10:00 授業研究会 7年生数学「最大公約数」の授業研究会に参加
 植木を並べる文章問題を提示し、各自が考えたことをカードに書いてホワイトボードに貼らせる。教師はカードを内容により分類。次にヒントとなる数表を教師が黒板に下記、生徒に空き項目を埋めさせる。数を素数の積で表現して最大公約数を導入する。いくつかの数の組を示し、最大公約数を求めさせ、黒板に書かせる。
 続いて行われた検討会では次のような内容を中心としたコメントをした。最初の宿題確認は、宿題の内容を復習しておらず、本時の内容の前提知識として確認すべきものかどうか分からなかった。文章題に取り組むことは非常に有意義であるが、今回の問題が最大公約数の性質を学ぶためにふさわしいものだったかどうかよく理解できない。この文章題に対して多くの生徒が和・差の計算からアプローチしていた。数を素数の積で表して考察する最大公約数を導出するために、和・差の概念から積・商の概念に誘導しなければならないとすると、これは指導者としては緊張するところではないか。本時の指導では、あっさりと数を素数の積に分解する方法を提示して実行させてしまった。その上、素数に分解できていない生徒が居ることにも気づくべきであった。素数に分解するのだということが理解できていないと、最大公約数を明確に理解することは難しいのではないか。また、素数の積に分解したのち、何をもって2数の最大公約数とするのか明確な説明がなかったように思う。そのかわり数多くの複雑な練習問題が提示され、生徒はそれを追いかけていた。授業時間内に生徒が最大公約数の概念を明確に理解できたかどうか、確認とまとめが必要だった。
 検討会およびその後に続く授業案の再作成は非常に活発な議論となり、有意義なものであった。その結果作成された指導案はシンプルで、考え方を明瞭に表す板書計画も示された。

17:55-「学習のつまずき」というテーマでの講演を行った。内容は、つまずきの定義、統計調査の紹介、つまずきが起きるポイント、指導上留意すること、学ぶ集団をつくる意義、について。

・10月3日(水)
授業研究会の運営に関する研修が行われた。研修終了時に、ウランバートルでの研修者チームに対して、教材研究・授業研究の理解度に関するアセスメントのためのインタビューを実施した。

・10月4日(木) ウムノゴビ県からウランバートルに帰還。
午前中、ウランバートルに国内航空にて帰還。
15時 国立大学オユンツェツェグ先生と会見
17時 スレン氏と会見して18番学校との遠隔ワークショップの可能性について意見交換
19時 国立大学物理学チームと会食


・10月5日(金)
9時 教育省ツォグバトラック氏と会見。特別支援教育の方法およびタブレットなど情報機器の活用に関する情報交換
14:00 モンゴル教育大学チョイジョウバンチグ学部長、ムンフトーヤ先生、ゾルザヤ先生、およびエルデネチメグ教諭(ITチーム)と会見。
 フェーズ2の終了が近づき評価がおこなわれつつあるが、IT教育に関して適切に評価がなされるか少し心配しているとのコメントがあった。松浦と教育大学IT教育部門は電子教材制作などで引き続き連携していくことを確認した。

・10月6日(土)
5時 ウランバートルホテル出発。帰国の途に付く。

授業研究について総合コメント

いずれの学校でもチームでの教材研究や授業研究を定着させる姿勢があり、また子ども中心の指導に対して子どもが授業に積極的になることが見られると報告している。一方、授業研究では、勢い込むあまり、数多くの要素を詰め込みすぎる傾向があり、子どもが置き去りにされる場面もみられる。これについては検討会でもしばしば指摘されるので、自己調整されていくことを期待したい。一方、授業で行う要素の一つ一つについての教材研究、吟味を今後はさらに熟考して行うことが求められる。教師自身は理解していても子どもには確かに伝わったとはいえない場合もある。またこのような理解の確認、ノートへの記入など、生徒の理解の確認にも注目すべきだろう。