モンゴルプロジェクトフェーズ2/Training in Japan

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モンゴル国子どもの発達を支援する指導法改善プロジェクトモンゴル国子どもの発達を支援する指導法改善プロジェクトAction in MongoliaAction in MongoliaTraining in JapanTraining in JapanMongolia WatchingMongolia Watching

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Training in Japan

1.2010年度日本研修の概要

1.プロジェクトの概要

 2010年3月、モンゴル教育省はJICAと共に「子どもの発達を支援する指導法改善プロジェクト」を開始した。本プロジェクトは、2006年4月~2009年8月まで実施されていた「子どもの発達を支援する指導法改善プロジェクト」のフェーズ2にあたる。

 モンゴルでは2005年に子ども中心の指導法を目指す初等・中等教育スタンダードが導入された。しかしながら、教育現場は、新指導法の実現に様々な困難を抱えている。「子どもの発達を支援する指導法改善プロジェクト(フェーズ1)」では、それらの問題を解決するために、実践例を多く盛り込んだ教員用指導書の作成、その指導書を使用した試行授業とモニタリングを通じ、モンゴルの文脈に適した子ども中心の指導法の開発を行った。


 フェーズ2の目的は、フェーズ1で開発された指導法を下記の方法で、さらに洗練しモンゴル全国へ普及することである。プロジェクトの主な活動は下記の通り。
(1)教育文化局職員や学校管理職、教員を対象とした指導法改善のための研修パッケージを開発する。
(2)モデル区・県(ウアランバートル市ソンギハイラン区、ボルガン県、ザブハン県)において研修パッケージを試行する。
(3)モデル区・県内のモデル校において「授業研究月間」を実施、区・県レベルおよび学校レベルで指導法改善を支援する。
(4)全区・県の教育文化局職員、代表校の学校管理職、教員を対象とした研修を実施する。

2.本邦研修の目的

 日本における現職教員研修の仕組み(教育委員会の役割及び学校との連携、学校レベルでの活動等)や授業研究の実践(学校現場での取り組み)についての理解を深め、モンゴルにおける現職教員研修、授業研究の定着・制度化のための示唆を得て、研修パッケージ作成、研修実施の参考とする。

3.実施期間

 2010年10月3日(日)~2010年10月16日(土)

2.研修の日程

3.研修の概念図

zu_kenshu_gainen.gif▲図をクリックすると拡大されます

4.研修の内容

・10月3日(日)モンゴル国研修員8名来日。

・10月4日(月)14:00より本学第一会議室において開講式が行われた。村松学長の挨拶の後、モンゴル教育文化科学省のネルグイ氏からこれまでの協力に対する感謝、本研修に対する抱負が述べられた。

その後、附属小金井小学校を訪問、教育実習生の授業観察、副校長との質疑応答が行われた。

16:30より、研修員各々の研修に対する抱負、期待を発表してもらった。

・10月5日(火)10:00から東京都教職員研修センターにおいてセンターの業務の概要の説明を受けた後、質疑応答が行われた。

14:00から15:30までの間、専門家の松浦教授の「理科教員高度支援センターの概要」、鎌田教授の「実習:懐中電灯と3原色」の講義が行われた。

15:45から17:30までの間、福地教授、高畑教授の研修パッケージに関わる講話を交えて、研修パッケージについての意見交換を行った。

・10月6日(水)10:00から13:30の間、世田谷区立奥沢中学校を訪問。はじめに校長から奥沢中学校の教育方針を聞く。そののち、3年生の数学の授業を見学。ここでは、進度別の授業が行われており、最も遅い進度のクラスの授業を見学。「躓き」の具体的な例を沢山見た。次の1年生の理科の授業では、教室でも身近な素材を用いて行える実験が実践されていた。

その後、給食を食べながら、授業者との質疑応答が行われた。また校長より、校内研修会や教育予算についての説明があった。

15:00から17:00。東京学芸大学において、教員養成カリキュラムセンターの三石教授より「日本の教員制度、特に教員養成制度についての明治時代からの変遷」についての講義があり、その後、質疑応答が行われた。

17:20から18:30。東京学芸大学の修士課程に在籍する現職教員5名と協議を行った。前半は全体で意見交換を行い、後半は小学校の教員と中学校の教員に別れてのディスカッションとなった。双方、腹を割ったよい意見交換であった。

・10月7日(木)10:00から12:00。啓林館の八木圭一氏から日本における教科書および教師用指導書の作成に関する講演を聞く。大学教員が、現場の事情を知らずに教科書を書いているモンゴルの教育関係者には耳を傾けるべき点が多かったと思われる。

13:00から14:30。東京学芸大学の林 尚示准教授より、「日本の特別活動と生徒指導」に関する講義を受ける。林准教授は、教員が教科外の学習指導および生徒指導を行うことが日本の教育の特色であると述べている。そして、この活動が教員間の連携を強めて、有意義な校内研修を可能にしているという。

15:00から16:30。午前に引き続き、林准教授の講義、タイトルは「子どもの発達と教育」。日本では「生きる力」の育成や道徳教育に力を入れてきたが、指導にはいろいろな困難が伴っていることを説明した。

・10月8日(金)14:00から18:00。箱根大涌谷公園において、教材研究の観点から自然観察を行った。

20:00から22:00。1週間の振り返り・意見交換会を行った。1週間で印象に残ったこと、2週間目の抱負について各人が発言。

・10月9日(土)9:00から12:00。神奈川県立生命の星・地球博物館見学。学芸員の佐藤武宏氏より、当博物館の学校教育との連携について説明を聴く。その後、館長の齋藤靖二氏より、博物館の概要の紹介に引き続き、館内および収蔵庫を案内された。

13:00から14:00.本間寄木美術館で、寄木造りを体験して、そののち、本間美術館内を見学し、館長より寄木の歴史や作り方について説明を受けた。

・10月10日(日)休日

・10月11日(月)神奈川県立生命の星・地球博物館見学に引き続き、学校教育と科学館の連携について理解を深めるために、日本科学未来館を訪問。はじめに、日本科学未来館の特色や学習プログラムについて説明を受けた。研修員からは、学習プログラムに関わる費用負担や、どのような研究者―科学館― 一般社会との連携についての質問がでた。

・10月12日(火)10:00から13:00。府中市立府中第三小学校を訪問。午前中、ベテラン教員の授業を見学。理科が3、4時限目続きの授業。算数が3時限目。3時限目は算数と理科に分かれて見学。算数グループは4時限目に理科に合流。
 算数の授業は、長方形を平行四辺形に変形した時、面積が変わるか、というテーマであった。子ども達の認識の変化が手に取れるような授業で、研修員たちは興味深く、驚きを以て見学していた。
 理科は「大地の作りと変化」の授業で、身近な材料で、興味深い実験が行われていた。内容は、水の働きでどのように地層が出来るか、水槽に土を流し込む実験と泥水を沈殿させる実験である。
 授業後、給食を食べながら、授業者との意見交換が行われた。算数の授業に対して、研修生から「答を出させることではなく、子どもたちに考えさせることこそが目的だと気付いた」という声が聞かれた。
 授業者との意見交換の後、校長から校内での授業研究、校内研修について説明を受けた。

14:00から16:00。研修員を理科と数学・ITの2つのグループに分け、東京学芸大学の施設を視察した。理科実験室では、教職課程の「実験授業」、「基礎実験」、「専門実験」などの概要の説明を受けた。数学・ITグループは、附属図書館の見学と説明を受け、その後、加藤直樹准教授による電子黒板についてデモを交えた説明を受けた。

・10月13日(水)この日の午前中は、2つのグループに分かれた。
IT関係の研修生1名は9:30から10:50まで附属高等学校大泉校舎で、河野真也教諭の授業「アルゴリズムと簡単なプログラム」を見学。授業後、授業者と意見交換。
IT関係以外の研修生は10:00から11:30の間、附属世田谷中学校を訪問。世田谷中学校の概要について説明を受け、その後、教育実習生が行う理科の授業を見学した。
13:45から16:30.附属世田谷小学校を訪問。栄養教諭より、学校給食の説明を受けながら昼食をとった。その後、校外の教員、教育実習生の参加している校内研修会の授業研究を見学した。授業は総合学習としての「人間のこころ」の学びである。研修生は、普段見ている総合学習と全く異質な内容だったので、戸惑っていたようである。しかし、授業後の検討会で、専任教員や大学から招かれた講師の「子どものこころの動きはどうであったか」という観点から発言する様子を熱心に見ていた。
副校長からは「授業研究の形だけではなく意味を知ってもらうために、呼応ない研修会を公開している」、「授業研究は教員による自主的な活動であり、管理職の役割は教員を支援する環境を整えることである」などの説明を受けた。

・10月14日(木)前日に引き続き、午前中は2つのグループに分かれた。
 一つのグループは、IT関係の1名と高校の教育に関心のある3名が附属高等学校へ行き、8:30から12:00までの間、教育実習生による研究授業を見学。内容は「情報社会の光と影」をテーマとした2時間続きの授業である。授業後、実習生の反省会に同席。授業者と意見交換を行った。
もうひとつのグループは10:00から12:00までの間、附属小金井小学校にて教育実習生による小学校2年生と3年生を対象とした算数の授業を見学した。2年生の授業は「三角形と四角形」、3年生の授業は「水のかさ」を内容とするものであった。
 13:30から15:00。専門家3名による教員養成課程についての各論。福地:教育実習について。高畑:授業検討会に出席する時の心構え。鎌田:東京学芸大学の教員養成課程のカリキュラムについて。
 15:00から16:00。小金井小学校において、午前中に行われた授業についての検討会。授業者による自評、質疑、協議。検討会の記録係、司会は実習生から選定。研修員は熱心に検討会の進行を観察していた。

・10月15日(金) 9:00から12:00。JICA東京国際センターにて今回の日本研修について振り返りを行った。研修の成果と帰国後の活動について確認した。研修に対する抱負を研修前に記載してもらったその紙にそれぞれの成果を記入し、発表してもらった。専門家からそれぞれコメントを行った。

・10月16日(土) 研修員8名帰国