第11回 ラジオの原理 |
ここでは,「ラジオはなぜ聞こえるのか?」という疑問に答えていく.そのためには,いわゆる「LCR回路」に関する知識が必要となる.逆に,「なぜ,LCR回路やインピーダンスを学ばなければならないの?」という疑問には,「それは,テレビやラジオなど,日常生活に密着した電気機器を始めとして,様々な機械に応用されているからですよ」と答えるべきなのである.そこまで学習してこそ,「役に立つ電磁気学」ということになるだろう.
コンデンサと静電容量
平行な2枚の帯電した板がつくる電場は,第5節で学習した.その結果を復習する.プラス・マイナス同じ数だけの電荷が平行に帯電しているので,下図のような状況では,縁の電場の歪みを無視するならば,電気力線は等しい密度で面に垂直に現れる.すると,「点電荷から出て行く電気力線の数一定の法則」(つまり,Gaussの法則である)より,
(11.1)
となる.電場は,
(11.2)
となる.
この式を,極板間の電位差Vを用いて書き直す.電場は一定なので,極板間の距離をdとすると
(11.3)
が成立するから, (11.2)式より
(11.4)
を得る.これを電位差と電荷の比例関係ととらえ,
(11.5)
と表すことがある.このとき,比例係数Cを静電容量(キャパシター)という.今の場合,
(11.6)
である.
(11.5)式より,同じ電圧ならば,キャパシターCが大きいほど,極板に蓄えられる電気量Qは大きくなる.(そのようにCを定義したわけである.) さらに,(11.6)式を見てみると,キャパシターは極板の面積に比例し,極板間の距離に反比例することがわかる.面積が大きければ蓄えられる電荷の数も増加するのは当然としても,極板間の距離に反比例するのは何故だろうか. (11.4)式を見ると,電荷Qと電位差Vが一定であったら,dが小さくなると,それに反比例してQが大きくならなければならない.したがって,(11.5)式の定義にもどって考えると,同じ電位差ならば,dが小さいほど蓄えられる電荷Qが大きくなるのである.
なお,(11.6)式は平行板の内部は真空の場合の静電容量を与えるが,中に誘電率εの物質を詰めた場合,
(11.7)
が成立する.
コンデンサの放電
もし,上図のように充電されたコンデンサの極板間を導線でつないだら,どうなるだろう?そう,ショートだ!瞬間的に(ホントは瞬間ではなく光の速さだが)プラスとマイナスが「結合」して,電場も電荷も無くなった状態になる.そこで,下図のように抵抗を挟んでからスイッチを入れると,コンデンサの電荷は,文字通り抵抗を受けるために瞬間的ではなく有限の時間で減っていく.その様子を,式を用いてきちんと調べてみよう.
電気容量Cのコンデンサに電荷Qが蓄えられているとすると,(11.5)式で表されるような電圧Vが極板間に発生する.つまり,抵抗器の両端に加わる電圧はV=Q/Cである.抵抗器の電気抵抗をRとすると,スイッチを閉じた後に流れる電流は,オームの法則から,
(11.8)
である.一方,電流の定義より,
(11.9)
である.今の場合,コンデンサの極板に蓄えられた電荷の減少分が電流になるから,マイナスがつくことに注意しよう.
(11.5),(11.8),(11.9)より,
(11.10)
という微分方程式を得る.これは,「雨粒の落下」で学んだ,最も簡単な微分方程式の形である.解は,t=0のときQ(0)=Q0として,
(11.11)
となる.電圧や電流は,V=Q/CおよびこれとI=V/Rを用いることによって求めることができる.電圧は,
(11.12)
となる.
静電容量Cや抵抗値Rを変化させたら,どのように放電する時間が変化するかを考えよう.もし抵抗Rが大きかったら,なかなか電流が流れないから放電する時間は長くなるだろう.逆にR→0の極限では,最初に述べたショート状態になるはずだから,瞬間的に放電するだろう.(11.11)式を見てみると,実際Rが大きくなればなるほど,放電に時間を要するようになることがわかる.
Q. 一方,静電容量Cが大きかったら,どうなるべきか.考えてみよ.
上の図は,Q0=10, CR=2 としたときの,(11.11)式のグラフである.