第9回 Lorentz力 |
Lorentz力
磁場(磁束密度)の定義は,
(8.4)
であった.すなわち,磁場以外の一切の力が働いていないはずの直線電流Iが(8.4)式にしたがって力Fを(長さ|Δs|に対して)受けたとするならば,そこにはBという磁場が存在するということであった.
しかし,この授業で大前提となっている,「すべての物質は原子からできている」という観点からすると,直線電流という概念は,ずいぶんとマクロで特殊な概念に感じられるのではないだろうか.電場の場合,点電荷qに電場Eが与える力は
(4.2)
であった.では,磁場も力の源であるなら,点電荷はどのような力を受けるのだろうか,という疑問が当然わいてくる.そこで,(8.4)式を,点電荷に磁場が与える力を表す式に書き換えてみよう.
電流と電流密度の関係を用いると,
(9.1)
ここに,ΔVは,直線電流の断面をSとすると,ΔV=S|Δs| なる微小体積である.(9.1)式を(8.4)式に代入すれば,
(9.2)
となる.電流密度は,電荷密度ρと速度vを用いればj=ρvと表せるので,これを(9.2)式に代入すると
(9.3)
を得る.ここに,Nは体積ΔV中の電荷の数である.N個に対してFだけの力をBは加えるのであるから,電荷1個当たりの力は
(9.4)
となることがわかる.これを,Lorentz力という.
この式より直ちに,磁場は,運動している電荷にしか力を及ぼさないということが分かる.速度が0だと,力も0になるからである.
Q. 一定の磁場Bに垂直な平面内を速さvで運動する点電荷は円運動することを示せ.
その回転方向と回転周期も求めよ.