■ 連続講演会報告



第5回 2008.2.13 [WED] 15.00-16.30
国立教育系大学・学部における教員養成制度を考える
カナダ・トロント大学の教員養成制度とプログラムが提起すること
講師:木塚 雅貴 (北海道教育大学 教育学部教授)

カナダ・トロント大学の5年制教員養成プログラムを取り上げ、それが何を提起しているかについて議論。トロント大学はオンタリオ州立大学で、カレッジ方式をとる伝統ある大学。

1 カナダの教員養成は、基本的には5年制教員養成システムである。
1)教養課程と専門課程を学習した後に、1年制大学院に相当する課程が教員養成の中軸である。つまり、教科に関する知識・スキルを習得した後の教員養成課程である。
2)初等教育教員養成課程は全教科総合型(教育方法全般)であり、中等教員養成課程は2教科専攻型(教科教育法中心)となっている。
3)授業並びに教育実習の評価基準・項目が整備されているとともに、学校での教育実習指導教諭と大学スタッフならびに本人との意見交換が基本となり、数値的評価と文章による評価、作品等の評価が、ポートフォリオ形式で行われている。

2 30-60名のコーホートという集団で、基幹科目Teacher Education Seminarを核としてチームとして学習・働くこと・学び合うことを重視した教員養成プログラム
1)コーホート設置は、学生にコミュニティ、チームの一員として働くという教師の資質を身につけるためのものである。また、「省察」は重要な機会として用意され、大学と学校との往還、学校での討議を経験することを重視したプログラムとなっている。
2)Teacher Education Seminar とともに、教育実習(2校)とインターンシップ(学生が各自計画)が中核。

3 40日(8週間)の教育実習と20日(4週間)のインターンシップを実施
1)2校での教育実習を経験
連携校での教育実習は、学生1名に対して1名の教育実習指導教諭(Associate Teacher)が指導する。その教育実習指導教諭に対しては、大学として指導・支援をすることとなっている。教育実習期間中には、3回の大学教員の参観と指導がある。
2)教育実習は、2校を経験することとなり、学校と地域の違いに留意した教育活動を経験するように設計されている。
3)インターンシップは、約20日であるが、その場所、形態や内容等々については、各学生がアポを取って計画案を作成し実施・運営することとなっている。評価は「合・否」だけであると言うが、このインターンッシプは、教員養成課程の「総仕上げ」的な位置づけとなっている。

4 木塚氏の我が国の教員養成に関しての提言としては、①教育実習機関の延長、②複数校における教育実習、③理論と実践の融合・結合、④教員養成基準の作成、⑤「反省的実践家」の育成、をあげた。


© 東京学芸大学 新教員養成システム推進委員