■ 連続講演会報告



第6回 2008.2.20 [WED] 18.00-19.30
国立教育系大学・学部における教員養成制度を考える
イギリスの教員養成制度とプログラムが提起すること
講師:佐藤 千津
(大東文化大学 外国語学部専任講師)

1988年のナショナルカリキュラム実施前後からの、イギリスの教員養成提供機関の多様化の状況とそれを支えるスタッフ・機関の実情について、2つの事例をも加えながら、最新情報を提供していただいた。

1 教職にいたるルートと教員養成提供機関の多様化が進展
1)学部レベル(①2-3年制のフルタイム課程、②4年制教育学士課程)
2)大学卒業後の養成課程(①PGCE(Postgraduate Certificate in Education)はフルタイム1年間)
3)雇用ベース(OJT)の養成
①学卒教師プログラム(Graduate Teacher Programme(GTP))は3-12ヶ月の養成コースで、経験の長さによりプログラムがことなるというもの。1998年以降設置)
②登録教師プログラム(Registered Teacher Programme(RTP))は1998年以降に設置され、2年コース)
③海外養成教師プログラム(Overseas Trained Teacher Programme(OTTP)) は2000年以降の設置
4)その他に、遠隔学習や資格認定制、ティーチファースト等の形態もある。

*この中では、「学卒後課程」の修了者が「学部課程」修了者の3倍の数になっていることが特徴としてある。つまり、学士課程での教員養成が主流とはなっていないと言うことである。
*事例としてあげたエッジ・ヒル大学では、①早期教員養成学部課程(3年制)、②初等教員養成学部課程(3年制)、③同(4—5年制)、④同学卒後課程(1年制)、⑤同(半期から3年コース)、⑥キーステージ2/3学部課程(3年制)、⑦中等教員養成学部課程(11-16才)教師養成で2-3年制、⑧同1年制、⑨同(14-19才)教師養成で1年制、⑩同(フレキシブルコース)、その他にPGCEを含めた4つのコース、総計14コースが用意されているという。

2 多様な教員養成の実態に即した「水準管理」政策が進展
1)教職の専門性水準管理は、「有資格教員の地位のための専門性基準と教員養成の要件(Professional Standards for Qualified Status and Requirements for Initial Teacher Training)」で行われる(インターネットで入手可能)
2)内容は、①専門的属性、②専門的知識・理解、③専門的技能、の3要素からなる。
3)このような基準にそって、教員養成が行われているかを、査察するシステムが整備され、「枠組み」も作成されている。

3 近年には、多様なサポート・スタッフの増員が認められ、そのための教員養成システムが生まれつつある。
1)2003年に、政府と一部の教員組合との合意で、学校へのサポート・スタッフの増員学校は枯れるようになっている。
2)そのサポート・スタッフは、①上級ティーチング・アシスタント、②その他のサポート・スタッフ、③雇用ベース養成プログラム履修生による無資格教師、となっている。
*その結果、教員ひとり当たりの生徒数は少なくなった。
3)それらの教師の職初等が多様化しているので、それらを統一する資格、資質基準を作成する動きもでている。

4 現在のイギリスの教員養成改革の特色
佐藤氏は、現在のイギリス(イングランド)の教員養成の特徴は、①教員養成提供機関の多様化であり、それを専門性基準による質的保障を確保するという課題があること、②サポート・スタッフの増加もあり、教職の専門性の変容が見られるのではないか、③教員養成、教師教育のキーワードとして、「パートナーシップからコラボレーションへ」という意識変化があるのではないか、それは、ステークホルダー間の共同体制を再構築するという今日的課題と関わっているのではないか、という。


© 東京学芸大学 新教員養成システム推進委員