在来種のタンポポのうち、平地に生育する黄色の花の在来種は、最近では1種類として扱われることが多くなりましたが、地方によって少しずつ形が変形しています。図鑑には、関西以西にカンサイタンポポ、東海地方にトウカイタンポポ、関東地方にカントウタンポポ、中部地方以北にシナノタンポポなどが分布していると書いてあります。新潟大学の森田竜義さんによると、これらの平地生2倍体種(染色体を16本もっているタンポポ)は1種類で、カンサイとカントウが亜種、シナノやトウカイがカントウの変種とするのが適当だそうです。また、北地や山地にはエゾタンポポという3倍体種が分布しています。

カントウタンポポ
カンサイタンポポ
シナノタンポポ トウカイタンポポ
エゾタンポポ シロバナタンポポ

かつて日本のタンポポはたいへん多くの種類に分類されていました。その後、北村四郎さんにより22種類にまとめられましたが、個体変異がおおきく、1本の植物だけでは同定が困難です。日本各地の2倍体タンポポの集団は、個体変異を持ちながら、一部の他所の集団と共通する特徴を持つ個体を含みつつ、集団としての特徴をもっているということがわかってきました。したがって、地域に生えている集団としての特徴をつかまないと、名前を決めるのは難しいものです。たとえば、1980年のタンポポ調査のおりに東京の都心でエゾタンポポがあったという報告がありました。これはカントウタンポポの集団の中の、エゾタンポポと共通する特徴を持った個体がたまたま採取されたからと考えられました。それで、このホームページでは、日本に以前から生育してきたタンポポを「在来種」と表現しています。各調査地域で、どんな種類のタンポポが分布しているか、必要でしたら、お問い合わせください。


日本では外来種のタンポポのうち、実(痩果)の色が茶色のものをセイヨウタンポポ、桃色がかったものをアカミタンポポと呼んできました。しかし、原産地のヨーロッパでは、これらはさらにたくさんの種類に分類されています。日本に入ってきた外来種が、そのうちのどれかを同定するのは容易ではありません。また、2種類というわけでなく、もっと多くの種類が帰化していると考えられます。そこでこのホームページでは、「外来種」と表現しています。


外来種と在来種は雑種をつくるのでしょうか?1980年代までは、外来種は無配偶生殖をするし、花粉は不稔だから雑種を考える必要はないと思われてきました。しかし、森田さんが、実験的に外来種の花粉を在来種のめしべにかけてやると、低頻度ですが雑種ができることをみつけました。その後、野外でも雑種ができている、しかも雑種個体のほうが純粋の外来種より多い地方があるという可能性も知られるようになりました。ただ、形態的には雑種は外来種型になり、在来種として認識されているものは、純粋の在来種のようです。雑種については、今のところ、酵素の分子の大きさで判定をしていますが未知のことが多く、これから研究が深められていく課題です。

タンポポのページへもどる