吊り橋の形
伸びない糸の両端を固定して,これを自然につるすとき,糸が描く曲線の形を懸垂曲線(カテナリー)といいます。 これは,糸の各部分に重力が働いているとき,つり合いの状態にある糸の形で,このとき糸の位置エネルギーも最小になっています(これを,物理で「最小作用の原理」といいます)。
身の回りでは,送電線の形や吊り橋の形などが,懸垂曲線の形をしています。 しかし,吊り橋の場合,吊り下げるロープには人が歩く,または車などが走るための橋げたが付いています。 このために,吊り橋の形は,ロープの重量に比べて橋げたの重さが無視できるほど軽い(普段あまり使わない表現ですが)ときには懸垂曲線となり,逆に橋げたの重さがロープの重量に比べて非常に大きいときには放物線となるそうです。
このことを,高校の物理と数学Vの積分の範囲で説明してみました。 〔ここをクリック〕
また,計算が少し多くなりますが,解析力学という大学で学ぶ物理の範囲では,糸の位置エネルギーを最小にする形が自然界で実現される状態であるという,「最小作用の原理」から懸垂曲線になることが説明できます。参考までに途中経過を示しました。〔ここをクリック〕
*実物の写真などがなかなか手に入りにくいのですが,よい例を見つけることができたら,このページで写真にGRAPESを使って曲線を重ねてお見せして行きたいと思います。
*以下のGRAPESファイルの見方:GRAPES画面の背景にアーチの画像を写すには,GRAPESファイルと画像ファイルを同じフォルダにダウンロードしてからGRAPESファイルを開いてご覧ください。
《吊り橋を逆にしたアーチ型橋の例》 *GRAPESファイルの見方:GRAPES画面の背景にアーチの画像を写すには,GRAPESファイルと画像ファイルを同じフォルダにダウンロードしてからGRAPESファイルを開いてご覧ください。また,GRAPESファイルの拡張子は「.gps」です。保存をするときに勝手に変わってしまう場合は,直して保存してください。
1.「羽田スカイアーチ」・・・この例は,懸垂線・放物線のどちらでもなく,変断面円弧タイドアーチという形だそうです。写真は,外側に円弧を重ねたものです。アーチの内側も円弧にぴったり重なります。〔ここをクリック〕 〔GRAPESファイルはここ (Ver6.48で作成), 画像ファイル〕 (円の極方程式表示が有効な例です。)
2.「守谷市新守谷駅前の陸橋のアーチ」・・・このアーチの形も,円弧の形に重なります。〔ここをクリック1〕 〔GRAPESファイル1はここ(Ver6.48で作成), 画像ファイル〕
〔ここをクリック2〕 〔GRAPESファイル2はここ(Ver6.48で作成), 画像ファイル〕 (円の極方程式表示が有効な例です。)
3. 「茨城県 海門橋のアーチ」(全景 左側が大洗,右側がひたちなか市。大洗水族館アクアワールド付近から。2007.4.29撮影)
茨城県ひたちなか市海門町と大洗町の間,那珂川にかかっているアーチ橋。現在の橋は,5代目にあたり,道路専用橋となっているが,4代目は,鉄道併用橋でコンクリートの数連のアーチ橋で現在のものとは形が大きく異なっていた。〔現在の橋のアーチ部〕 〔GRAPESを使って曲線と重ねた図〕 〔GRAPESファイルはここ, 画像ファイル〕
4.「山口県岩国市 錦帯橋のアーチ」 (2006.10月撮影 写真撮影:堀部和経先生)
錦帯橋のアーチは,懸垂曲線の形やサイクロイドの形をしているといわれます.この橋を見ると,先人の技術力の高さに驚くばかりです.橋のアーチ部に懸垂線と放物線と円を重ねてみました.この橋の範囲では,どの曲線も重なって見えます.
〔錦帯橋の全景−斜めから−の写真〕 〔GRAPESを使って曲線と重ねた図(.pdf)〕 〔GRAPESファイル1はここ, GRAPESファイル2はここ, 画像ファイル〕
5.「長崎県平戸市 幸橋【オランダ橋】のアーチ」 (2006.11.14撮影)
このアーチは,見た目では円弧形に見えます.実際,懸垂線や放物線には重なりません.
〔GRAPESを使って曲線と重ねた図(.pdf)〕 は,あまりきれいではありません.できましたら,GRAPESファイルの方でご覧ください.
6.「東京都八王子市 四谷見附橋のアーチ」 (写真提供:Cosさん)
「四谷見附橋は1913年(大正2年)に竣工した上路式鋼製アーチ橋で、橋長37m、幅員約22m、都内最古の陸橋として外堀を跨いで新宿通りを通していた。ネオ・バロック調の美しい装飾は1909年(明治42年)に完成した赤坂離宮(現在の迎賓館)のデザインに対応させたものだったという。」という説明をいただきました。
《いろいろなアーチの形》*GRAPESファイルの見方:GRAPES画面の背景にアーチの画像を写すには,GRAPESファイルと画像ファイルを同じフォルダにダウンロードしてからGRAPESファイルを開いてご覧ください。また,GRAPESファイルの拡張子は「.gps」です。保存をするときに勝手に変わってしまう場合は,直して保存してください。
1.「茨城県牛久市JR牛久駅東口側 陸橋のアーチ」 (2008.04.12撮影)
牛久駅東口側から道路にかかっている自転車も渡ることができる陸橋。きれいな曲線を描いており,放物線に重ねることができます。
〔GRAPESファイル1はここ, 画像ファイル1〕 〔GRAPESファイル2はここ, 画像ファイル2〕
2.「茨城県土浦市JR土浦駅西口にあるアーチ」 (2008.05.17撮影)
牛久駅西口を出た高架橋にある3本のアーチのモニュメント。1本を正面から写したものですが,放物線にも懸垂線にも重ねることができませんでした。
〔GRAPESファイルはここ(2009/04/26訂正), GRAPES画面[jpg] アーチの画像ファイル〕
3. 「茨城県土浦市旧土浦中学校本館のマーク」(現茨城県立土浦第一高等学校) (2008.05.17撮影)
旧土浦中学校本館は,明治時代の数少ない木造洋風建築で当時西洋の香り漂うゴシック風の斬新なものでした。昭和51年国の重要文化財に指定されました。正面玄関の三連アーチ部の装飾も凝っており,内部の飾り窓やドアにも幾何学的なデザインが多く見られます。画像ファイルのマークは楕円が2つ組み合わされているようにも見えましたが,1つ1つに円の一部分を重ねることができました。〔本館正面写真〕
4. 「北海道小樽市のレンガ倉庫の模様にあるアーチ」 (2007.08.03撮影)
小樽市には古いレンガ造りの倉庫が多くあります。倉庫の壁には,円形のアーチ模様が作られています。
5. 「神奈川県横浜市元町入り口にあるアーチ」(2009.03.21撮影) *GRAPESファイルの拡張子が[mp3]に変わってしまいます。「gps」に直して保存してください。
最初,楕円の形にうまく合わせることが出来ませんでしたが,友田勝久先生のご助言できれいに合わせることができました。
〔送っていただいた友田先生のGRAPESファイルはこちら,それを参考にさせていただいて作ったGRAPESファイルはこちら,GRAPES画面[jpg] アーチの画像ファイル〕
《吊り橋の例》*GRAPESファイルの見方:GRAPES画面の背景にアーチの画像を写すには,GRAPESファイルと画像ファイルを同じフォルダにダウンロードしてからGRAPESファイルを開いてご覧ください。また,GRAPESファイルの拡張子は「.gps」です。保存をするときに勝手に変わってしまう場合は,直して保存してください。
1.「下津井瀬戸大橋」 (写真提供:本州四国連絡高速道路株式会社)
岡山県倉敷市下津井田之浦と香川県坂井出市櫃石島(ひついしじま)を結ぶ全長1,447mの橋です。つり橋を正面付近から見ることができる写真には,あまりお目にかかれません。この写真は,本四高速ホームページのギャラリーにあることを教えてもらいました。本四高速に了解を取って掲載させていただいています。〔GRAPESを使って曲線と重ねた図(.pdf)〕
2.「伯方大島大橋」 (写真提供:本州四国連絡高速道路株式会社)
愛媛県今治市と広島県尾道市を結ぶしまなみ海道上にある,伯方橋と大島橋。つり橋は,大島橋の方で全長840mの橋です。同じく本四高速ホームページのギャラリーから,本四高速に了解を取って掲載させていただいています。〔GRAPESを使って曲線と重ねた図(.pdf)〕 〔GRAPESファイルはここ, 画像ファイル〕
3.「八王子の公園のつり橋」 (写真提供:Cosさん)
八王子の公園内にあるつり橋の写真です。説明は次をご覧ください。〔GRAPESを使って曲線と重ねた図(.pdf)〕
4.New「関門橋」山口県下関市と福岡県北九州市門司の間の関門海峡に架かる吊り橋。
〔GRAPESを使って曲線と重ねた図と橋の写真(.pdf)〕 〔GRAPESファイル1はここ, 画像ファイル1〕 〔GRAPESファイル2はここ, 画像ファイル2〕
写真と曲線を合わせているので,画面の縦横比は1:1にしています。また,GRAPESファイルの画面サイズを変えたときにグラフが伸縮するように,目盛り位置が僅かに動いてしまわないように,グラフ画面のツールバー,「オプション」の「領域」タグの中の,「ウィンドウサイズを変更時にグラフを伸縮」のチェックをONに,「目盛り位置を画面ピクセルに合わせる」のチェックを外してあります。画面サイズを変えて見やすい大きさで,ご覧ください。画面上のステッカーは,ドラッグして邪魔にならない位置に動かすことができます。
5.New「若戸大橋」福岡県北九州市若松と戸畑の間に架かる吊り橋。
〔GRAPESを使って曲線と重ねた図と橋の写真(.pdf)〕 〔GRAPESファイルはここ, 画像ファイル〕
ファイルについての説明は,4.の関門橋と同じ。
《吊り橋・アーチ型橋の写真》
1.レインボーブリッジ(東京都) 全長918m。芝浦とお台場を結ぶ吊り橋。東京モノレール「天王洲アイル駅」から「大井競馬場前駅」付近から撮影。(2006.11.13撮影)
2.平戸大橋(長崎県平戸市) 全長665mの朱塗りの吊り橋。平戸城天守閣から撮影。(2006.11.13撮影)
3.幸橋【オランダ橋】(長崎県平戸市) 1702年(元禄15年)築造された石造単アーチ橋。(2006.11.14撮影)
4.新西海橋(長崎県佐世保市・西海市間) 2006年3月に開通されたアーチ橋。主橋部橋長300m。平行して架かる西海橋から撮影。 (2006.11.14撮影)
5.新西海橋と西海橋(長崎県佐世保市・西海市間) 手前が西海橋,奥が新西海橋。西海橋は,全長316mの固定アーチ橋で1955年(昭和30年)に建築。西海橋公園から撮影。大村湾の速い潮流によってできる渦潮が有名。(2006.11.14撮影)