■サワフタギ
 ■ハイノキ科


実 (10月撮影)

●青い実の成る植物はあまりありません。しかも、それはほとんどが草で、木ではサワフタギくらいしかありません。サワフタギの実は瑠璃色と呼ばれる鮮やかな青。瑠璃というのはラピスラズリと呼ばれる鉱物で、アフガニスタンが主な産地です。

ラピスラズリは古くから、洋の東西を問わず宗教と結びつき、最高位の色として扱われてきました。仏教における瑠璃は、浄瑠璃光世界として浄土を象徴する色となっています。サワフタギの別名は「ルリミノウシコロシ」です。瑠璃色の実はこの木をとても印象深いものにしています。


葉(10月撮影)

●ルリミノウシコロシの名前の後半部の「ウシコロシ」は、バラ科の植物「カマツカ」の別名です。強靱なカマツカの枝で牛の鼻輪を作り、牛を制御したことから、ウシコロシの名がつきました。サワフタギの別名も、牛の鼻輪を作ったからとの説もありますが、私はサワフタギとカマツカは葉の形が似ていることに由来するのではないかと思っています。

●サワフタギは沢を塞いでしまうように枝が張るという意味です。山野では沢沿いばかりに生えているわけではありませんが、低木のため目の高で、葉のついた枝振りを見やすいのです。そして、それが谷沿いに生えていれば、いっそう目につきます。葉は少しごわつき、倒卵形から楕円形をしています。


(10月撮影)

●サワフタギはニシコリ(錦織)という別名もあります。これは茜染めや紫根染など錦を染める時の媒染剤として、焼いた灰を用いたためです。近畿より西では媒染用に「ハイノキ」をしばしば使います。東日本にはこの木がないため、同じハイノキ科のサワフタギを使うのです。どちらの木も灰にはアルミが含まれ、これが媒染剤として重要な働きをします。

●瑠璃の青は「ウルトラマリン」と呼ばれています。フェルメールの絵画「青ターバンの少女」の青色は、ラピスラズリから作られた絵の具が使用されています。現在では化学合成したウルトラマリンが使われます。 近年、東京芸術大学と絵の具メーカーで、ラピスラズリの原石から高純度の瑠璃色の水彩絵の具を開発しています。原石中に5〜10%しか含まれないため宝石のように貴重です。なんと4.2グラム入りで50400円。しかし、透明感のある瑠璃色は素晴らしいものです。

日本ではラピスラズリは採れませんが、サワフタギの実で瑠璃色を愛でることができるのです。

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