■ハギ
 ■マメ科


花 (9月撮影)

●春の七草は有名ですが、秋にも七草があるのをご存じですか?秋の七草は山上憶良が万葉集の中で初めて詠んだものなのです。

「萩の花 尾花 葛花 なでしこの花 姫部志 (をみなへし) また藤袴 朝貌の花」


秋の七草のトップにあげられたハギ。万葉集の中で最も詠まれ植物で、上代の人々にとって、たいへん親しみのある存在であったようです。「萩」の字は万葉集の時代には無く、平安時代になってから登場する、日本で作られた国字です。「秋」の字の上に「くさかんむり」を載せた字は、秋を代表する日本の植物を表しています。


実 (9月撮影)

●秋の七草は、春の七草のように食べることはできません。ただ、歌に詠まれたの春の七草よりも早い時代でした(春の七草は室町時代)。ちなみに、秋の七草の最後に詠まれている「朝貌」ですが、今日言うところのアサガオではなく、キキョウであったと考えるのが定説となってきました。

●ハギは山野に生える植物ですが、山野ではそれほど目立つ自己主張の激しい花ではありません。例えば、秋に咲く花ではヒガンバナの方がもっと目立つようにも思います。なぜ、万葉集で好まれて詠まれたのか、一つの仮説を紹介しましょう。

万葉集ではさまざまな人が歌を詠んでいますが、詠み人には大和盆地に所縁のある人が多かったと考えられます。また繁栄していた大和盆地では森林の伐採や焼き畑農業による開発が行われたはずです。

ハギは薄暗い林床に生える植物ではありません。また、パイオニア植物といって山火事や放牧地で森林がなくなった後、一面に生えることのある植物です。さらに、ハギは根に共生する根粒菌から窒素分の栄養を受け取ることができるため、痩せた土地でも他の植物に先行して育つことが可能です。

このようなことから、大和盆地ではハギが増えていて、上代の人はハギを目にすることが多かったのではないかという説です。皆さんはどのように考えますか。

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