今月の学校図書館


2017/01/04

長野県飯田市立川路小学校・三穂小学校

Tweet ThisSend to Facebook | by 中山(主担)

 長野県飯田市で小学校司書をしている 宮澤優子さんに学校図書館勤務の状況と、兼務している2校について紹介していただきました。(編集部)



1 概要

 長野県の南部に位置する飯田市には19校の小学校と9校の中学校があります。大きい学校は千人を超えますが、小さいところは30人ほどです。小学校の司書の単独配置は9校、未配置は極小規模の2校、2校兼務が4人いて、兼務配置は8校となっています。
 私は4年間の公共図書館経験の後、子育てのためにいったん退職。2008年飯田市の隣の高森町の小学校司書として社会復帰、2010年から飯田市の採用となりました。飯田市での初任の小学校は児童数約800人、1週間毎日どの時間もどこかのクラスが図書館の時間という大規模校を経て、2014年から市内では最南端の小規模小学校2校の兼務となりました。

 
本務校は、飯田市立川路小学校。全校児童92人、各学年1クラス+特別支援学級2クラス、図書館の蔵書数は6690冊です。
  校舎と別棟のログハウス調の建物にPCルームと図書館が入っている)

 いまひとつは飯田市立三穂小学校。全校児童65人、こちらも各学年1クラス+特別支援学級2クラス、図書館の蔵書数は6557冊です。
 

 (普通教室一つ分の小さな図書館です)

 それぞれの学校に図書館教育担当の教諭(司書教諭発令はなし)がいます。この2校にとって私は2代目の司書になります。
 

2 1人の司書が2校を兼務

 飯田市ではここ数年中学校区単位での小中連携を推進していて、中学校区ごとにテーマを決めて取り組んでいます。中1ギャップの解消につながる指導も研究の1つとしている学区なので、同じ中学校に進学する両小学校では、臨海学習を一緒に実施するなどの交流が行われています。図書館でも子どもたちがお互いの取り組みを発表しあったり、本の紹介をしあったりといった交流をはかっています。

 また、子どもたちが図書館としては同じ経験をしたうえで進学できるよう、可能な限り共通のサービス・指導を心がけており、それは2館を管理する司書の負担の軽減にもなっています。


3 読書センターとして


 飯田市の小中学校の資料費は児童数と学級数により配分されます。小規模校はどうしても少額予算となり、新刊購入点数も少なくなります。また5年前まで司書が配置されていなかったこともあり、蔵書構成のバランスが良いとは言えません。資料費の少なさからも、まだまだ子どもたちの読書力と読書量に見合った蔵書・教育活動を支えられるだけの学習用資料のコレクションを構築できていないのが現状です。
 
そこで子どもたちが普段読むための「読みもの」の本に予算を多く割き、学習のための資料を公共図書館からの団体貸出で対応する体制をとっています。

 また、それぞれの学校では毎日の日課に全校一斉の読書タイムが設けられています。読書指導・案内として、学年や発達に合わせ児童一人一人の読書力や読書傾向に合わせて本を手渡すようにしており、読書力が伸びている手応えを感じています。
 
12月の読書旬間では、両校ともに先生方による「おすすめ本」の読み聞かせタイムをたっぷりとりました。

 担任の先生ではない先生が入るというのがポイントで、校長先生が紹介してくださったJ・ベルヌの「地底旅行」を聞いた高学年に、ほかのベルヌ作品を薦めると、次々と借りてくれたことが印象的でした。
 児童の縦割り班では「なかよし読書」という読み聞かせ活動があります。お昼の放送では司書による「おはなしレストラン」があり、ほかにも読み聞かせボランティアによる活動、学級文庫の公共図書館からの借り入れ(定期的に入れ替え)、読んでほしい本のスタンプラリー等いった、様々な活動を日常にたくさんちりばめ、子どもたちがすてきな本と出会えるよう活動しています。


4 情報センターとして


 少ない資料費を読み物中心で傾斜配分するため、学習用資料の多くを公共図書館からの団体貸出で対応しています。そのため図書館側がどの各学年の各単元でどのような資料を必要としているのかを事前に把握して準備することができるよう、図書館用の年間指導計画を作成しています。
 また、調べ学習においては子どもたちがテーマを絞り込む過程からかかわり、準備する資料の中にテーマに即した資料が確実かつ豊富に入れられるようにしています。
 今後の資料収集に関しては、確実に必要なものから優先順位をつけて行っている購入を継続し、質の良いコレクションの構築につとめたいと思います。


5、学習センターとして


 「学習センター」としての学校図書館を考えると、それを使うためのスキルが子どもたちに必要で、その習得のために図書館がしなければならないこともたくさんあります。
 今年度、市内の司書数名で学習会を立ち上げました。小学校6年間で修得してほしい情報リテラシーを洗い出し、それを体系的かつ継続的に指導できるような仕組みづくりに取り組んでいます。各クラスの図書館の時間に、以下のような点に留意して、作成中です。


 短時間(10-15分程度)でレクャーできて、少しずつ積み上げていけること

 司書のスキルの差が影響しないよう、指導のポイントを明確に絞ること

 教科書で扱われる内容や時期を踏襲すること
 
今後は実践の中でブラッシュアップをはかり、ゆくゆくは司書の異動があっても指導の継続性が保てるよう、より多くの学校で共有できるようにと考えています。

 また、年間指導計画に沿って資料提供の提案やこれまでの実践を紹介することで、各教科での図書館利用がより積極的に行われるように、実践の記録や、子どもたちの成果物の記録を残し、同時に提供した資料のリスト化や提供資料選書時の留意点等を次年度に残せるような配慮もしています。

6、おわりに


 田舎の小さな学校の小さな図書館です。しかし、子どもたちが読んで、知って「楽しかった!」「うれしかった!」「おどろいた!」「こわかった!」「不思議に思った!」そういった思いがあふれる図書館はどこにでも作れると信じています。きらびやかな装飾やイベントはなかなかできませんが、子どもと本が主役の図書館を目指して活動しています。


(鏡餅の形に配置されたカードをめくると、お正月クイズとクイズの答えがわかるお正月豆知識が書かれています。三穂小学校)


 (飯田市立川路小学校・三穂小学校司書 宮澤 優子)  
      

  追記 宮澤さんが以下のサイトで、本データベースに関する記事を書いてくださいました。 

    「LoY2016-東京学芸大学 優秀賞受賞への思い」

   
ラーコモ原稿-1212②-LibraryoftheYaer2016.pdf

 


09:52 | 投票する | 投票数(10) | コメント(0)
当サイトの使い方
先生にインタビュー・授業と学校図書館
使いこなす情報のチカラ・読書・情報リテラシー
本の魅力を伝えるあれこれ・学校図書館の日常
使えるブックリスト紹介・テーマ別ブックリスト
ちょこっとアイデア玉手箱・司書のお役立ち情報
活かそう司書のまなび・司書研修の報告
GAKUMOPAC・東京学芸大学学校図書館の本をさがす
授業事例を大募集!!
Library of the Year ありがとうダブル受賞!
資料アラカルト
GAKUMOのひみつ
リンクフリー
会員専用掲示板
今月の学校図書館
ご意見・お問い合せ
このサイトについて
無料でお届けメールマガジン
ツイッターで紹介するフェイスブックで紹介する