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2020/01/30

No.9 令和元年度 東京学芸大学公開講座

Tweet ThisSend to Facebook | by 井谷(主担)
学校司書応用講座ver.9 授業に活かす学校図書館
□2019年11月30日(土)10:00~16:00
□東京学芸大学附属小金井中学校図書館

【3-A 学校教育概論 教育方法論 

● 教育学講座「情報教育最前線を聞く:ICTを活用した学びがめざすもの」

 

 講師 東京学芸大学教授 森本康彦先生


 
 










 午前中は、情報教育の第一人者でいらっしゃる東京学芸大学教授森本先生から、貴重なお話を伺った。

私たちは、教育が大きく変わる転換点に立っている。ICTの活用についても、単純な技術の習得などではなく、そもそも教育とは何か、学校で教えること、育てる能力、育てたい人材に対するイメージが変わってきていることをまずとらえる必要がある。ICT技術は、上手に活用できれば、その新しい教育を実現する上で便利に使えるツールにすぎない。

したがって、ICT技術をわざわざ活用しなくても、十分良い授業は行えるし、すでに行われてきてもいる。児童、生徒の学びよりも技術の利用に焦点をあてたような、「ICT技術を活用するための授業」をするのでは本末転倒である。

新しい教育が目指すものは、新学習指導要領に「主体的・対話的で深い学び」という言葉で表現されている。教師が教え込もうとする知識を無理やり暗記するのではなく、学習者が「学びたい」という意欲のもとに自ら考え(主体的)、見通しをもって粘り強く取り組むことで気づきを得て、自分の言葉で説明ができるようになっていくことである。また、「正解」をただ頭に詰め込むのではなく、トライアンドエラーを繰り返しながら、議論を通して(対話的)「納得解」を共同して探っていくことである(ちなみに、プログラミング教育の焦点は、プログラミング技術ではなく、この、トライアンドエラーを繰り返すプロセスを通して「やり方」を学ぶことにあたっている)。教師は指導者ではなくファシリテーターである必要があるし、図書館は、このような学びを支える基盤となる施設である必要がある。

なお、このような「主体的で対話的」な学びのためには、メタ認知(気づき)を導くために、プロセスを記録、保存し、振り返ることが必須である。e-portfolioは、そのためのツールであり、学びのプロセスを電子媒体に記録していくことで結果的にできあがるもので、特に形式はない。これについても、球児がつけている野球ノートに代表されるように、すでに紙媒体で「ポートフォリオ」と呼べるものは多数存在するので、必ずしも電子媒体である必要性はないが、電子媒体には、検索性の向上と、動画等のビジュアルな素材の保存のしやすさ、というメリットがあるので、より良い学びにつながる可能性がある。

ところで、このような新しい学びのなかで、「一人一人をどう評価するのか」という問題が浮かび上がってきた。「評価」という言葉についても、優劣をつける(evaluation)という発想から、その児童、生徒にそった足場かけのための判定をする(assessment)という意識への転換が必要であろう。

 

e-portfolio、プログラミング教育、そしてICT技術の活用を話題にしながらも、表面的にその紹介と取り入れ方などのノウハウを解説するのではなく、より深く、その活用の背景に迫り、教育そのものについて本質的なことを追求する、大変濃い内容だった。それだけに、難しい内容でもあったが、具体例を示しながらの巧みな話術に引き込まれ、2時間半があっという間だった。「図書館にとっては、ある意味でのチャンスがきているのではないか」というお言葉が印象に残ったが、図書館の存在価値は、教育のありかたに大きく左右されるものだと改めて感じるとともに、その真価を発揮できるようにするためには、私自身の「学び」についての意識改革もまだまだ進めなければいけないのだと実感した。

(文責:東京学芸大学附属大泉小学校司書 富澤佳恵子)




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