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2021/02/09

本でつながる、あなたとわたし

Tweet ThisSend to Facebook | by 村上
 子どもたちが「本」に出合う場所は、たくさんあります。その一つが、「書店」でしょう。図書館とは少し異なる立場から、子どもと本をつなぐことに情熱を傾ける丸善 丸の内本店 児童書担当の兼森理恵さんに、コロナ禍のなかでの日々で感じたこと、大型書店の児童担当として矜持、今後の展開などについて執筆していただきました。


ねえねえ みてみて

 お客様とお話していて幸せな瞬間は、「あなたって、本当にこの本が好きなのね」と言われたときだ。ああ、つながったなと思う。本を手渡すというのは、想いの連鎖だ。「ねえねえ」「みてみて」とこっそり宝物を見せびらかすように、私は、たくさんの本を手渡してきた。お客様と話すたび、「ああ、私、この本のここが好きなんだなあ」と新たな発見をし、また、好きになる。そんな時間が、私の大切な日常だ。
(写真右:丸善丸の内本店の児童書売場)

 丸善・ジュンク堂のような大型書店は、新刊書のほとんどが入荷するので、実物を手に取って確認することができる。特にノンフィクション系のものは、子どもの本の顔をしているけれど、大人の思想を一方的に植えつけようとしていないか、きちんとした事実が伝えられているかに注意を払っている。必ず複数の児童書担当者で意見を出し合い、置く、置かないを個人的な感情で決めないことも鉄則だ。一番目立つ売場である平積みについても、決して売れるものだけを置くわけではない。書店のスペースは有限。ヒットの影には、チャンスを与えられずに泣く良書もある。

 売れている本は「客寄せパンダ」だと思っている。どんなきっかけであれ、他のメディアでなく、本を選んでくれたことがうれしい。だから私はどうしてその本を選んだのかをいつも聞いてみたいと思っている。そして日ごろから、子どもが好きというものは、なるべく目を通すようにしている。お互いに好きな本をきっかけに話をして、おもしろいと思ってくれたら、こんどは友達にも広がっていくかもしれない。地道だけれど、お客様との会話がすべてのスタートだ。

 2020年春、そんな日常が一変してしまった。「不要」とされるものに紛れて、お客様との何気ないやりとりも、めっきり減ってしまった。なにしろ、人が来ないのである。届ける術を失って、私は初めて本屋やめたいと思った。それくらいの喪失感だった。夏になると、少しずつ、懐かしいお客様が顔を見せてくださったり、作家さんが遊びに来てくれたりして、だんだんと元気を取り戻して……。「声に出して好きなものの話をする」ことが生きる上でこんなに重要だということを、本当に強く認識させられた。


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