飯田市立川路小学校司書、宮澤優子さんから、小学4年生が行った辞書引き大会についての記事をお寄せいただきました。図書館に所蔵するグループの数分の辞書があれば、手軽にできる取組とのこと、ワークシートに書かれた見出し語が掲載されているページを書き込むだけで、あえて解説文を読んだりしないことで、後から読みたくなるという効果も意識しているところが面白いですね。わずか10分程度でできる取組ながら、国語辞典の使い方がしっかり身に着くというすぐれ技です。みなさんの校でも実践してみてはいかがでしょう?
3年生で国語辞典・百科事典の引き方を学習し、4年生で漢字辞典の引き方を学習します。わからない、知らない、知りたい、という時にさっとそれらを引くハードルを少しでも下げたい、という学級担任の願いを耳にし、図書館の時間に「楽しみながら引く」「ゲーム感覚で引き方のルールを覚える」という取り組みをしています。
1グループに1冊辞書があればよいので図書館の蔵書で実施でき、グループの人数を調整することで短時間でできるので、いくつも問題を作っておき複数回実施すると効果が上がります。
1、ねらい
・既習の国語辞典の引き方のルールを再確認する
・あきらめずに他の引き方(読み)を考えることができる
・複数の情報の中から、自分が必要としている正しい情報にたどり着くことができる
・仲間と一緒に取り組むことで、学び合いができる
2、辞書引き大会の準備
①必要なもの
・国語辞典の同じものを(もちろん版もそろえて)グループの数と同じ冊数
・ワークシート(見出し語を列挙し、それが掲載されているページを書く)
・時間をはかるもの(「インターバルタイマー」というアプリなどが便利)
②ワークシート作成(見出し語抽出)のポイント
・国語辞典の引き方のルールを使えるようにする(清音→濁音→半濁音、促音や拗音は直音のあと、長音はすぐ上の字の母音に置き換えられる)
・読みがわからない、または迷うであろうものを、読み替えて引いてみる→掲載されている方が正しい読み、という経験ができるようにする
・同じ音の見出し語がいくつもあり、きちんと判別する必要があるものを入れる(同じ音の見出し語がページをまたいで掲載されている場合もある)
・1ページ目、最終ページなど、端から端まで使えるようにする
・同じページ、または同じ見開きに掲載されているものを入れ、五十音順という並びについて意識させる
3、辞書引き大会の実際
①進め方
・1チーム3~5人程度
・ワークシートは1チームに1枚
・一人の持ち時間1~2分(1分だと少し短いが、2巡くらいはできるように人数と実施時間をみて調整)で、時間内にできるだけ調べる
・見出し語の掲載ページをワークシートに記入
・時間になったら、次の人とかわる
・終了後答え合わせと、引き方のプロセスについての解説
・それを踏まえ、続きからでも別問題でもいいので2回目以降を実施(一回目でつかんだコツや知恵を活かせるように複数回実施する)
②約束
・次の人に渡す時は、辞書を必ず一回閉じる
・記入係はだれがやっても(持ち回りでも、本人が書いても)よい
・助言をするのはよいが、調べる主体はその時順番の人
4、所感
実施後に、どの学年の子どもたちからも聞こえる声がいくつかあります。「どんどん引くのが速くなる!」「〇〇をもう一回引いて読んでいい?」「またやりたい!」あたりです。国語の授業で引き方を学習し、その後継続的に意識的に使うようにされる先生もいますが、やはり「慣れ」というのは「分からない・知りたいときに、すぐ引く!」への第一歩だと考えます。また、掲載ページのみを書かせるゲームですので、解説文を読むことができないフラストレーションは自分が「知りたい」という欲求を持ったことを意識させるきっかけとなります。ゲーム後にこのあたりを丁寧に子どもたちに伝え、次回の約束をして終わりにしています。
ゲームにいっしょに参加された担任の先生からは「あいまいだった引き方のルールを再確認し、時間を意識しながらチーム内で声を掛け合って引く中で、子どもたちの辞書への抵抗感が薄れていったような気がします。」という感想をいただきました。
(文責 飯田市立川路小学校司書 宮澤優子)
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