資格と「教師への道」

家庭科を専門とする小学校教員の強み

小学校の先生になるのに家庭科を専門とするのってどうなんだろう?主要教科じゃないから小学校の先生にはなるのは難しい?なれたとしても大変?なんて考えている方もいるのではないでしょうか。
家庭科は、自然科学(数学や物理学、化学など)、社会科学(経済学、法学、社会学など)、人文科学(文学、哲学など)をベースとする家政学に基づく教科です。これらの「科学」は他の教科の基となっている学問です。つまり、家庭科は、すべての教科の「生活」に関わる部分を体系的、統合的に学ぶ教科といえるでしょう。家庭科を専門とする教員というのは、学校での学びが、生活者である子どもたち自身にどのようにリンクするのかが分かっている教員になれるということになります。
また、家庭科では、経験的/体験的学びを重視するので、実験・実習や観察、ロールプレイング、ディベートなど、多様な方法で授業を行うことに特に力を入れています。さまざまな教授方法を大学で専門的に学ぶことができ、これらは他の教科を教える時にも応用できます。
小学校は、クラス担任制をとる学校が大部分であり、教員は全教科を教えなければなりません。その時、各教科の学びは独立したものではなく、子どもたちの中で有機的につながっていく必要性があります。家庭科を専門とする小学校教員になるということは、家庭科を教えることができるというだけでなく、子どもたちが生きていくうえで必要な学びを身に着ける授業ができる力のある教員になるといえるでしょう。
もちろん、家庭科の専科として小学校の教員に採用されるケースもあります。専門性の高い授業ができるというだけでなく、子どもたちの発達や生活の状況をより理解した上で学びを支援出来る教員となれるでしょう。

中学、高校の家庭科教員になるということ

中学校、高等学校で家庭科の教員になるということはどういうことでしょうか。
「家庭科は大学受験に必要ないからいらない」「女性だけが身につければいい」といった意見が聞こえてきたりもします。一方で、巣ごもり、お弁当男子、育メンなどの言葉が近年もてはやされています。こういったネーミングへの賛否はさておき、言葉が生まれるということは、それだけ社会的に着目されている現象ということです。これらの言葉の背景には、「生活」を豊かに送ることに社会が価値を置きはじめたということがあるでしょう。
右肩上がりの経済成長を続けていた時代には、家の外で働いて賃金を得ることに重きが置かれてきました。その結果、過労死や自殺、熟年離婚、育児不安など様々な問題が起きました。安心、安定した生活のためには、家庭を中心とした「生活」が充実していることが大切だということに社会全体が気づき始めたのです。家庭科が長年にわたって生徒たちに伝えてきたことが、改めて見直されるようになったといえるでしょう。
「生活」をするためには、もちろんお金も必要です。家庭科では、どのように働くかといったことから、消費者としてどのようにお金を使うかも考えます。生活に密着した社会制度を知ることで、困難に陥ったときにも生活が困窮しないためにどうすれば良いかも学びます。
つまり、中学高等学校の家庭科教員になるということは、生徒たちが生活力を身につけ、自立した生活をおくれるようになるよう支援する教員になるといえるでしょう。小学校では、生活の中で自分でできることを増やすことことが目標ですが、中学高等学校では、その学びを基に、さらに主体的に生活を営んでいくこと、社会にも目を向けることができるようになることが目標です。子どもたちが社会の一員として困らずに生きていくことを支える学びを行なうのが家庭科なのです。

家庭科での学びは子どもたちの発達にどのようにかかわるのか

現在、家庭科は、小中高等学校で必修科目として教えられています。家庭科を学ぶということは、子どもたちにどのような意味があるのでしょうか。
家庭科の目標として、まず、生活に必要な基礎的基本的な技術技能を身につけることが挙げられるでしょう。自分の手で、自分の食べる物を作る事ができる、身の回りに必要なものを縫って作ったり、ボタン付けなど補修をして使ったりすることができる、快適に過ごせるよう衣服や住環境を整えるといったことです。これらを行なえることで、より健康で快適な生活をおくることができます。
もう一つの大きな目標は、多様な考えや価値観を知ることです。家庭科では「家族」について学びますが、「家族」の形は一様ではありません。また、家庭ごとに考え方が違ったりやり方が違ったりします。お味噌汁一つとっても、合わせ味噌、白味噌、赤味噌と、各家庭で好まれるお味噌の味はさまざまではないでしょうか。
こういった家庭科の学びが子どもたちの自尊感情を高めることも明らかにされています。自分自身の手で「価値のあるもの」を生み出すことは、子どもたちの自信につながります。多様な考えを知ったり異世代と交流することで、必要とされる自分に気づいたり、「自分は自分で良いのだ」といった肯定感を持てたりするようになるのです。
さらに、学力の問題がさまざまなところで取り上げられますが、その際、注目されるのは経済協力開発機構(OECD)が行なう生徒の学習到達度調査(PISA)の結果です。実際に問題を解いたことのある方は良く分かるかもしれませんが、PISAの問題は、いかに科学的な知を生活にいかせるか、生活の中のさまざまな問題を学校で習う知識を使って解けるかという問いで構成されています。つまり家庭科の学びで身につく力そのものが問われているのです。家庭科での学びが、子どもたちの学力を支えているといっても過言ではないでしょう。

さらにそのあとの道

大学卒業後、小中高の教員になる他に、さらに大学院の修士課程、博士課程へ進学するという道もあります。もちろん、小中高等学校の教員となった後に、大学院に進学するということも可能です。
修士課程では、より家庭科教育に関する専門性を高め、博士課程では独立した研究者としてやっていける力を身につけます。
学部での学びをさらに深めて現場に出たいという希望をもつ方は是非大学院へ進学しましょう。非常勤講師をしながら大学院で勉強している学生も多くいます。研究を極めたいと思ったら、さらに博士課程に進学し、現場と連携しながら学位を取得し、大学教員になることもできます。
また、現場で教える中で、自分がやっている授業実践や生徒指導がどういった意味があるのか、改めて理論的に考えたい、学びたいという現職教員の方もたくさん大学院に進学されています。大学院での学びを現場へ持って帰りたいという要請に応える他、現場での経験を基に学問的な学びを深め、研究を行っていくことで、大学教員となって教員養成に携わることもできます。

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