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 私たちのグループでは、グリム童話『白雪姫』をもとに、東京学芸大学教育学部附属竹早中学校の皆さんにアンケートを行ないました。その結果、とても興味深い答えを得ることができました。そこでこの結果をもとに、小中学生の皆さんが「心」について不思議に思っていることに対し、できるだけ答えてみようと思います。

コンセプト
アンケートの内容
アンケートの集計結果
「美しさ」について―どうして、おきさき様は美しさにこだわるんだろう?―
「善悪」について―どうして、おきさき様だけが悪者なんだろう?―
「残酷さ」について―どうして、この終わり方を「残酷だ」と感じるのだろう?―

制作 石川治樹,榎本彩,川嶋絹子,細野敦武


コンセプト

『白雪姫』のテキストについて
 今回アンケートに使用した『白雪姫』のテキスト(本文)は、新潮文庫をはじめとする各種の完訳版『グリム童話』のテキストを参考に、私たちが短くまとめたものです。その省略の仕方は、以下の通りです。

  1. アンケートにあたってあまり重要でないと判断した部分や、細かいエピソードは省きました。
  2. その結果、今日日本で普及している一般的な『白雪姫』の話とほぼ同じストーリーになりましたが、大きく違う点として、ラストシーン(おきさき様が鉄のくつで殺される)をほぼ完訳版の通りに残しました。
  3. ストーリーについては大きく省略しましたが、文章の持つ雰囲気は残したいと考え、文章表現はなるべく忠実に再現しました。

みなさんの中には、おきさき様が焼いた鉄のくつをはいて死ぬまで踊り続けるという終わり方を、はじめて知って驚いた方が多かったと思います。

もともとの『グリム童話』の『白雪姫』のおはなしは、みなさんが知っているものよりずいぶん長いのです。日本で出版されているほとんどの『白雪姫』のおはなしには、たくさん省略されたり、変えられてしまったところがあります(注1)。今回私たちが用意した『白雪姫』のテキストももちろんずいぶん短くしてしまったものです。

もともとのおはなしには、語りの中にもっと同じような台詞やエピソードの繰り返しがあります。おきさき様が小人の家にいる白雪姫を殺そうとするたくらみが3回あったり、おきさき様が鏡に問いかける場面が7回あったりします。また、この7という数字もたくさん出て来ます。白雪姫がおきさき様に美しさで妬まれるのも7才の時。7人の小人の家は7つの山のむこうにあって、7人の小人の皿や、グラス、ベッドのことなどを語る時もいちいち7回繰り返されます(注2)。こういう繰り返しや、でてくる数にも意味があるといわれているので、もともとのおはなしの味をそこなわないままに短いおはなしにするのは非常にむずかしいことです。

最後の部分でおきさき様に焼けたくつをはかせるかどうかによって、おはなし全体の印象もかわってしまいますよね。

(注1)松川由紀子「保育とグリム童話」(日本児童文学学会編『グリム童話研究』大日本図書1989年)参照。
幼児向けの「白雪姫」のおはなしが本によってどのように省略されたり変えられたりしているかが比較してあります。

(注2)高橋吉文『グリム童話冥府への旅』(白水社1996年)参照。
この本の「第一章 反復するリズム」のところには「七」の繰り返しの意味や、白雪姫と鏡と王妃様の関係をどう読めるかが書いてあります。『白雪姫』にでてくる「鏡」に興味を持った人にもおすすめします。

アンケートのコンセプト(どういうことを調べるためにアンケートを行なったのか)

  1. 第一に、小中学生の皆さんが「知」や「心」についてどのようなことを考えているのか、どのようなことを不思議に思っているのか、を知りたいと考えました。
  2. 一つ一つの質問がばらばらにならないよう、アンケート全体を『白雪姫』の物語の形にして、まとまりを持たせました。
  3. 答えにくい質問にもスムーズに答えてもらえるよう、ストーリーにそって質問が進んでいくように工夫しました。

研究発表のコンセプト(発表にあたって、どのようなことを考えたか)

  1. アンケートによって得られた結果を、なるべく生かすように努力しました。
  2. そのために、多くの人が「不思議だな」と思っている問題を、アンケートをもとに判断し、問題設定しました。
  3. また、その回答の過程でも、いろいろなところでアンケートの結果を参考にさせていただきました。
  4. 研究発表全体を通して見たときに、『白雪姫』のストーリーにそって進んでいくようにしました。


アンケートの内容

心の不思議アンケート
白雪姫

私たちは、小中学校で心の不思議についてどのような疑問がもたれているのか、を研究しています。そこで、アンケートにご協力頂きたいと思います。
このアンケートはテストではないので、正解や間違いはありません。 思ったこと感じたことをそのまま書いてください。 よろしくお願いします。では、次のページからアンケートは始まります。

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白雪姫のお話を読みながら「質問」に答えていってください。なるべく全ての質問に答えていただきたいのですが、思いつかないところは回答しなくて結構です。

むかしむかし、白雪姫というとてもかわいらしいお姫様がいました。
白雪姫のお母さんは若くして亡くなってしまい、今は新しいおきさき様が義理のお母さんになっていました。 おきさき様は美しいかたでしたが、美しさへのうぬぼれが強く、自分より美しい人がいることに、がまんができませんでした。

おきさき様は、ふしぎな鏡を持っていました。

「鏡よ鏡、この国でいちばん美しいのはだれ?」

と、たずねると、鏡は、

「おきさき様、この国で一番美しいのはあなたです」

と答えるのでした。すると、おきさき様は満足しました。

白雪姫はすくすくと成長し、どんどん美しくなっていきました。
そしてある日、おきさき様が鏡の前に立って、

「鏡よ鏡、この国でいちばん美しいのはだれ?」

と、たずねると、鏡は、

「おきさき様、この国で一番美しいのは白雪姫です。あなたより千倍美しい」

と、答えました。

おきさき様は、これをきくと驚き、怒りと、ねたみのために真っ青になりました。
そのときからというもの、おきさき様は白雪姫のすがたを見るだけで気が狂いそうになりました。そしてとうとう、白雪姫を殺してしまおうと考えました。

質問1.おきさき様に質問する事ができるとしたら、あなたは何をききますか?

質問2-@.おきさき様は美しさにこだわりますが、それに対してどう思いますか?

質問2-A.美しさよりもっと大切なものがあるとしたら、それは何ですか?

 おきさき様は、猟師に白雪姫を森で殺すよう命じました。
しかし、かわいそうに思った猟師は、姫を逃がしてやりました。白雪姫は森の中で、七人の小人たちが住む家を見つけそこにかくまってもらいました。

そして小人たちは朝出かけるときに言いました。

「おきさきに気をつけて。おきさきはきっと君がここにいることにもうじき気がつくにちがいない。決して誰が来ても相手にしてはいけないよ」

一方おきさき様は、またもとのように自分が一番きれいだと思いこんで、鏡にきいてみました。すると鏡は、

 「七人の小人のところの白雪姫は、あなたより千倍美しい」

と答えたので、おきさき様はびっくりしました。

それからおきさき様は部屋に閉じこもると、毒りんごをこしらえました。りんごができあがると、おきさき様は物売りに変装し、七つの山をこえて七人の小人のところへ出かけていき、白雪姫に言いました。

 「とてもおいしそうなりんごでしょう? さあ、おまえさんも一つ食べてごらん?」
 「ごめんなさい、小人たちと約束しているから、もらう事はできないわ」

そうは言ったものの、白雪姫はそのきれいなりんごがほしくてたまりませんでした。とうとう我慢できなくなってそのりんごを受け取りました。

するとどうでしょう、白雪姫がそれを口にするや否や、ばったり倒れて死んでしまったのです。

おきさき様は城にもどると、急いで鏡にききました。すると鏡は答えました。

「おきさき様、この国で一番美しいのはあなたです」

家に帰ってきた小人たちは、驚き、白雪姫を生き返らせようと手を尽くしましたが、姫が生き返ることはありませんでした。

質問3-@.あなたは白雪姫の行動をどう思いますか?

質問3-A.あなたが小人であったとしたら、白雪姫とおきさき様をどう思いますか?

ところがあるとき、ひとりの王子がこの小人たちの家にやってきました。
そしてひつぎに眠る美しい白雪姫を見て、小人にゆずってほしいと頼みました。

王子がそのひつぎを家来にお城へと運ばせる途中、背の低い木につまずいてひつぎがぐらっとゆれました。そのはずみに、白雪姫ののどからりんごのかけらが飛び出しました。
すると、なんと! 白雪姫は生き返ったのです。

それを見てよろこんだ王子は、白雪姫に今までのことを話し、最後に結婚を申し込みました。これをきいた白雪姫も王子を好きになり、いっしょに王子のお城へと帰りました。

やがてふたりの婚礼のしたくがととのえられました。
その婚礼にはあの意地悪なおきさき様もまねかれました。
婚礼の日、おきさき様は鏡の前に立つと、

「鏡よ鏡、この国でいちばん美しいのはだれ?」

すると、鏡は、

 「ここではあなたが一番美しい、でも山の向こうの王子と結婚する若いおきさき様は、あなたより千倍美しい」

というではありませんか。

ねたみと不安でいっぱいになりながらも、おきさき様は、婚礼の席へ若いおきさき様を見に行きました。 するとどうでしょう。そこにいたのはあの白雪姫なのでした。

そのとき驚き立ちすくむおきさき様の前に、真っ赤に焼けた鉄の上ぐつが置かれ、この意地悪なおきさき様はそれをはいて死ぬまで踊り続けるしかありませんでした。

質問4.王子様と白雪姫が結婚したことについてどう思いますか?

質問5.この終わり方をどう思いますか?

質問6.お話を読んでみて、一番悪かったのは誰だと思いますか? またそれはなぜですか?

質問7.では、このお話はハッピーエンド(みんなが幸せな終わり方)だと思いますか?

質問8.登場人物のうち一人だけの心の中をのぞけるとしたら、誰の心をのぞきたいですか? そのとき何を知りたいですか?

質問9.昔話はもともと残酷であるものが多いですが、残酷なままのものと、残酷さをのぞいたものと、どちらが良いと思いますか? またそれはなぜですか?

 

ご協力ありがとうございました。


アンケートの集計結果

調査対象 東京学芸大学教育学部附属竹早中学校 1クラス39名

質問1 おきさき様に質問する事ができるとしたら、あなたは何をききますか?

なぜ美にこだわるのか
14
おきさきを馬鹿にした回答
12
その他
無回答
合計
39

質問2−1 おきさき様は美しさにこだわりますが、それに対してどう思いますか?

外見だけではだめ
15
おかしい・やりすぎ
14
別にいい
その他
合計
39

質問2−2 美しさよりもっと大切なものがあるとしたら、それは何ですか?(複数回答)

心・内面
17
性格
うち、特に思いやり
金・財産
友情・人との交わり
家族
自分の生き方
冷静さ
合計
39

質問3−1 あなたは白雪姫の行動をどう思いますか?

約束は守るべき
16
軽率
他,いけなかった
12
仕方がない
無回答
合計
39

質問3−2 あなたが小人であったとしたら、白雪姫とおきさき様をどう思いますか?

お妃悪い・姫可哀想
お妃悪いが、姫も良くはない
どっちもどっち
18
その他
無回答
合計
39

質問4 王子様と白雪姫が結婚したことについてどう思いますか?

良い
22
単純・急展開他
11
どうも思わない
無回答
合計
39

質問5 この終わり方をどう思いますか?

残酷
12
自業自得
ハッピーエンド
その他・わからない
11
無回答
合計
39

質問6 お話を読んでみて、一番悪かったのは誰だと思いますか? またそれはなぜですか?

お妃
30
王子
鏡とお妃
お妃と白雪姫
白雪姫
合計
39

質問7 では、このお話はハッピーエンド(みんなが幸せな終わり方)だと思いますか?

はい
いいえ
16
人によって違う
その他
無回答
合計
39

質問8 登場人物のうち一人だけの心の中をのぞけるとしたら、誰の心をのぞきたいですか? そのとき何を知りたいですか?

白雪姫
14
おきさき様
10
王子
小人
無回答
合計
39

質問9 昔話はもともと残酷であるものが多いですが、残酷なままのものと、残酷さをのぞいたものと、どちらが良いと思いますか? また、それはなぜですか?

残酷なまま
ない方が良い
21
どっちもどっち
その他
無回答
合計
39


美しさについて ―どうして、おきさき様は美しさにこだわるんだろう?―

むかしむかし、白雪姫というとてもかわいらしいお姫様がいました。
白雪姫のお母さんは若くして亡くなってしまい、今は新しいおきさき様が義理のお母さんになっていました。
おきさき様は美しいかたでしたが、美しさへのうぬぼれが強く、自分より美しい人がいることに、がまんができませんでした。

質問1の結果を見ると、「おきさき様はなぜそこまで美にこだわるの?」と不思議に思っている人が非常に多いことが分かります。たしかに『白雪姫』に登場するおきさき様は「美しさ」というものにすごくこだわります。

なぜ人は美しさにこだわるのでしょうか?
そもそも、この世で大切なものってなんでしょう? アンケートの結果を見ると、皆さんは「美しさよりも大切なもの」として、とてもいろいろなものを考えているようですね。例えば、命、心・内面、性格(思いやりなど)、財産、愛、友達、などが上げられます。

が、しかし対人関係におけるおもに第一印象は、「見た目(外見)」の要素が非常に大きいのが事実です。初めて会う人を判断する基準は、顔であったり、それはまた笑顔のような表情であったり、体型といった見た目が大きく関わってくるのです。

このような結果や、自分たちの経験からも、私たちが人と向き合った時に相手に良く思われたい、好感を持ってもらいたいという心理が働くということが分かります。だから人は美しくありたい、と望むのです。

では、外見的に「美しい」ということは得なことでしょうか?
外見の良い人は、その外見の魅力だけではなく、内面も良いと思われてしまいます。いろいろな人の写った写真を見せて、その人の性格や能力を推理させるという実験では、外見の良い人ほど性格も良く、能力もあると判断される傾向があります。それは例えば、大人が子どもを見る場合も同じで、同じようなイタズラや失敗をした場合も、外見が良い子ほど「悪気はなかったのだろう」と、大人は判断します。

外見の美しい人は第一印象が良いという点では、もちろん得です。しかし、美人もなかなか大変なのです。上にも書いたように外見が美しい人は中身も良いと、まわりはつい思ってしまいがちです。その外見の良さに対してすばらしい性格、優れた能力を期待してしまいます。そしてその人がその期待通りの人なら良いのですが、そうでない場合は失望したりもします。普通の外見の人が、普通の能力を持っているのなら、なんとも思わないものが、すばらしい外見の人が普通の能力しか持っていないと、がっかりしてしまいます。美しい人は普通にやっているのに失望されてしまうことがあるのですから、そのイメージを保つというのも、大変なのです。

このように、表面的に「美しく」あることが必ずしも素晴らしいとは限りません。
それよりもその人が「魅力的」であることの方が必要なのではないでしょうか?
美しさも魅力の一つではあります。でも、「魅力=美しさ」では必ずしも無いのです。

上辺だけの「美」ではなく、心を映す鏡を持とう!!


善悪について―どうして、おきさき様だけが悪者なんだろう?―

「とてもおいしそうなりんごでしょう? さあ、おまえさんも一つ食べてごらん?」
「ごめんなさい、小人たちと約束しているから、もらう事はできないわ」
そうは言ったものの、白雪姫はそのきれいなりんごがほしくてたまりませんでした。とうとう我慢できなくなってそのりんごを受け取りました。
するとどうでしょう、白雪姫がそれを口にするや否や、ばったり倒れて死んでしまったのです。

これは『白雪姫』の物語でとても有名な毒りんごによる白雪姫殺害の場面です。『「美しさ」について』のところで外見による印象についての話がでてきましたが、人がある人にたいしてもってしまうそういうイメージと判断との関係を、ここでは、白雪姫とおきさきを比較することでみていきます。

質問6の結果をみると「一番悪いのはおきさき様」と考えている人が圧倒的に多いことが分かります。
『白雪姫』のお話ではおきさき様が悪役だから当然でしょうと思っている人もいると思います。ディズニー映画・絵本などでの『白雪姫』ではおきさき様はただの継母ではなく、魔女にまでされています。『白雪姫』という話にでてくるおきさき様というだけで、はじめから「悪役」というイメージを持ってはいませんでしたか。

前に出てきた、外見での第一印象だけでなく、聞いた話、書かれたことなどからも、その人の印象というものは知らず知らずのうちに自分のなかにできてしまうものではないでしょうか。そしてそういう、印象というものは必ずしも確かなものではないのに、それをもとにその人の言動にいい悪いの判断をしてしまってはいませんか。

では、この『白雪姫』の話にもどって、なんでおきさき様だけが「悪」なのかちょっと考えてみましょう。

おきさき様はどんな人
おきさき様にとっては「外見の美しさ」がすべて
 →自分より美しい人がいることに、がまんができない。
 →自分より美しい人は殺してでもいなくならせたい。
そのため、
自分の欲望(美しさ)のために、他人を犠牲にする。
 →だから多くの人に「悪役」ととらえられる

白雪姫には悪いところはなかったのか
これは毒りんごを受け取って食べてしまうことについての部分になりますが、質問3−1の結果をみると、次の二つの内容の回答がありました。

  1. @小人との約束を守らない・・・小さな悪いこと
  2. A毒りんごをたべてしまう・・・他人を犠牲にはしないが「軽率」という点では悪い

これをまとめると、
 →悪いことをしていないわけではないが、小さなことである。そしてその結果として自分が
   被害を受けているのであり、他人を犠牲にはしていない。
    →だから多くの人に、それほど「悪い」という印象を与えていない。
       =白雪姫は「悪くない」

このように読むことで、おきさき様は「悪い人」(悪役)で、白雪姫は「悪いところはない」(良い人)というイメージができあがります。

次にこの毒りんごのシーンと、ラストの焼けた鉄のくつのシーンのことを考えて見たいと思います。この二つのシーンを比べてみましょう。

毒りんごをたべさせるシーンはこう見える。
おきさき様から白雪姫への仕打ち
「悪い人」(おきさき様)が「悪くない人」(白雪姫)に毒りんごを食べさせた。
「悪くない人」(白雪姫)が毒りんごを食べさせられて死んでしまった。
  →読む人には、毒りんごを食べさせること自体が「悪いこと」ととらえられる。

鉄の靴をはかせるシーンはこう見える。
誰か(?)からおきさき様への仕打ち
「はっきり書かれていない誰か」が「悪い人」(おきさき様)をやっつけた。
「悪い人」(おきさき様)が焼けたくつをはいて踊らされて死んでしまった。
  →読む人には「悪い人」がやられちゃっただけ、自業自得ととらえられる。
     =読む人には、焼けた鉄の靴をはかせること自体が「悪くないこと」ととらえられる。
       (ただし残酷ではある。)

この二つの場面を上のように読んでしまうのは、間違ったことではありませんが、
 「良い人」への仕打ち(残酷なこと)は「悪い」とみてしまう。
 「悪い人」への仕打ち(残酷なこと)は「悪くない」とみてしまう。
こんなところがあるのではないでしょうか。
同じ目にあっても、他人からの見られ方がちがったりしませんか。

またあるいは、
 「良い人」がすることは「良いこと」であり「悪いこと」はしない
 「悪い人」がすることは「悪いこと」であり「良いこと」はしない
と思っていたりしませんか。

『白雪姫』のおはなしの中でいえば、「白雪姫と王子様は二人とも「良い人」で一緒になって幸せになるんだ。」という印象がはじめにあるために、王子がひつぎにはいった白雪姫に一目ぼれをしてお城につれて帰るといっても「良いこと」にみえているのではないでしょうか。もしここで、「王子が」ではなく「黒い服を着た悪魔が」とでてきたのなら死体をもっていこうとするなんて悪魔がやりそうな「悪いこと」だとはみえてしまいませんか。

また、ラストの場面で焼けた鉄のくつをおきさき様がはかなければならないのはなぜでしょう。おきさき様が「悪いこと」をしたからという答えを出すのは簡単ですが、その焼けた鉄のくつを持ってきて置いたのは誰でしょう。誰がそんな命令を出したのでしょう。おきさき様が焼けた鉄のくつをはいて死ぬまで踊らされている間、白雪姫と王子はどうしていたのでしょう。

アンケートの結果からみると、この焼けた鉄のくつをはかせて躍らせておきさき様を殺したのは白雪姫だと判断している人はあまり多くはありませんでした。「良い人」である白雪姫や王子がするには残酷すぎることだから、白雪姫や王子がやったこととして結び付けようとしない人が多かったのではないでしょうか。これはもちろん、おはなしの中で誰がはかせたのだというところまではっきり書いていないせいもあるのですが。

みなさんはお友達や先生に「あのひとはどういう人だ。」といったような印象を持っているでしょう。その印象は正しいかもしれないし、正しくないかも知れない。また正しかったとしてもそれをもとにその人の行動をいちいち「良い」「悪い」とみてしまうと大切なところを見落としてしまうかもしれませんよ。

もっといえば 「あいつは良いヤツ」「あいつは悪いヤツ」と、考えてしまっていないですか?
 →自分でも知らない間に、自分の中で決めてしまっているかも。

本当に良いのか、悪いのか、あるいは本当はそのどちらでもないのか。判断するというのは難しいことだし、絶対の答えがあるとは限りません。 しかし、日ごろの生活の中でも細かい判断は数え切れないほどたくさんしなければいけませんし、無意識のうちにも判断を下して行動をしているのです。
たまには、「自分はどうやってものを判断しているのだろう」と考えてみたり、「その判断の根拠は正しいのかな、持っている印象などに判断が狂わされていないかな」などと思ってみたりしてみてください。
 ・・・・・自分で「自分の判断」をできるようになっていきましょう!


残酷さについて―どうして、この終わり方を「残酷だ」と感じるのだろう?―

ねたみと不安でいっぱいになりながらも、おきさき様は、婚礼の席へ若いおきさき様を見に行きました。
するとどうでしょう。そこにいたのはあの白雪姫なのでした。
そのとき驚き立ちすくむおきさき様の前に、真っ赤に焼けた鉄の上ぐつが置かれ、この意地悪なおきさき様はそれをはいて死ぬまで踊り続けるしかありませんでした。

アンケートの結果、「この終わり方(鉄の靴をはくシーン)は残酷だ」と感じる人が多いということがわかりました。だから、この『白雪姫』はハッピーエンドでもない、という答えもたくさんありました。

それではおきさき様が今までしてきた行為は残酷ではないのか? おきさき様を罰するべきではないのか? 当然、そういう疑問が出てくると思います。しかしそれでも皆さんは、このシーンをどうしても残酷だと思ってしまう。

このことから、読む人にとっては、「白雪姫が殺されかけた」という事実よりも、「おきさき様は生き残るべき」という同情の方が大きい、と考えられると思います。つまり『白雪姫』を読む人は、何よりも人の「死」を一番大きなものと考えてしまっているわけです。

たしかに人が死ぬのは良くないことと昔から言われてきています。命が何より大事という考えもとても大事かもしれません。しかし、この『白雪姫』のおきさき様について考えてみた時、この物語は残酷だから良くないのか、おきさき様の自業自得か、はっきりと決められる人はいないのではないでしょうか? どんな答えも、それはその答えを出した人による、主観的な一つの答えでしかないからです。

だから、一つの考え方として次のようなものがあるのではないか、と考えました。自分の主観的な意見ばかりではなく、時には少しその出来事を遠くから、客観的に見てみてはどうだろうか。正解のない問題はたくさんあると思います。そのような問題に対しては、判断を急がないで、時には少し遠くから、自分らしい考えを探して行こう、ということでまとめにしたいと思います。


 

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