−「主体性を育む幼・小・中連携の教育」をテーマとした合同公開研究会−
連携の流れ
平成15年度に、初めての幼小中合同公開研究会を平成17年度に実施することが決定した。平成16年度からは小中間の交流も、多くの教科・領域で取り組まれた。平成15年度から連携研究会が3分科会体制で進んできたが、A分科会注)にとっては調査の集計と結果を導き出すこと、B・C分科会にとっては新たに交流活動を加えて企画・実施しその成果と課題を明らかにすることが、平成16・17年度2年間における研究課題であった。
連携委員会はその運営のために幼小中の連絡調整を行って年間の実践研究スケジュールを組み、交流活動の活性化を図った。さらに、教師一人ひとりが経験的に感じている、竹早幼小中の子どもたちが主体性を発揮する姿から成長のステージを明らかにした。
注)A〜Cの3分科会体制で研究を進めた。その内容は次のようである。
A分科会・・・ | 11年間を通して主体性を育むという視点で子どもたちの実態を調査し、教師のよりよ示唆やサポートの在り方を検討する。 |
B分科会・・・ | 保育・活動・授業場面での子どもたちの主体性を探り、学習意欲を引き出し高める方法を検討する。 |
C分科会・・・ | 委員会・行事・教科外活動などの場面で友だち同士や、先輩や後輩と協力し合って行う活動の中で主体性を探り、より活発な相互啓発を促すことで主体性を育む方法を検討する。 |
交流活動の活性化
平成16年度は交流活動の新しい試みが2つ行われるに留まったが、平成17年度は中学の選択学習の枠を使ってさらに複数の交流活動が加えることができた。研究授業に加えて交流活動が活発に行われることにより、幼小中の教師間で活動について打ち合わせする機会が増え、より具体的な学習場面をめぐって意見交換がなされるようになった。下表は、平成17年の合同公開研究会で発表した幼小中交流活動である。
校種 | 幼 | 小 | 中 | ||||||||||
年 | 4歳 | 5歳 | 1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 | 6年 | 1年 | 2年 | 3年 | ||
交 流 活 動 |
キッズフェスティバル | ● | ● | ● | |||||||||
竹の子祭 | ● | ● | ● | ● | |||||||||
たけのこタイム | ● | ● | ● | ||||||||||
小中合同たけのこタイム | ■ | ■ | ■ | ||||||||||
中学説明会 | ● | ● | ● | ||||||||||
合唱合奏 | ● | ●音 | |||||||||||
内容随時 | ● | ● | |||||||||||
選択交流体育 | ● | ●体 | |||||||||||
詩の交流 | ★ | ★ 選国 |
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おこと(筝)に親しもう | ★ | ★ 選音 |
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手作りダンボールの家に住もう | ★ | ★ 選美 |
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いっしょに学ぶ身近なサイエンス | ★ | ★ 選理 |
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たけはやスタンプラリー | ● | ●家 | |||||||||||
第1ステージ | 第2ステージ | 第3ステージ | 第4ステージ |
●以前から行われていた活動 ■平成16年度より行われている活動 ★平成17年度試みられている活動
主体性を育む教師の関わり
“主体性を発揮する子どもの姿とそれを育む教師の関わり”を共通キーワードに、私たちが経験的につかんでいる特徴的な子どもの事例と教師の関わりについて収集し、次の4ステージに整理した。
<第1ステージ>4歳児〜小2前期…やりたいことを存分にやろうとする
この時期の子どもたちの姿に主体性の萌芽と呼ぶべきものを見とることができる。それは一人ひとりが安心できる居場所をもち、遊びや活動に没頭して全身で楽しんでいる姿である。私たちは一人ひとりの言葉に耳を傾け、思いを受けとめること、その子のよさを認め、本人やまわりに伝え互いをつなぐこと、その子の成長を見守り待つことというスタンスを心がけ、子どもが幼稚園や小学校において安心して自己表現できる心地よい居場所をもつための支援を行っている。
<第2ステージ>小2後期〜小4前期…集団と自分との関わりに浸る
この時期の子どもたちは幼・低学年期に培った主体性の萌芽をよりはっきりとしたかたちで発揮するようになる。特に体験活動を通して問題を発見し、仲間とともに学びを進めようとする姿に子どもたちの主体性を見とることができる。そこで私たち教師は、子どもたちが仲間とともに学び進めるよさをじゅうぶんに味わえるよう、豊かな体験フィールドを用意し、発言の分類整理を行う、言葉を補うなど、子どもたち相互のコミュニケーションを支える役割を担っている。
<第3ステージ>小4後期〜中1…集団と自分との関わりの中で自分とは何かを意識する
この時期の子どもたちは客観的に自分を見つめるようになり、自らの学びを充実させるために、目的に沿ったよりよい方法や新しい知識などを求めようと、これまでとはまた違った姿を見せる。従って私たち教師は、子どもの求めにかなうような新しい技術や知識、モデル、考え方などを示し、子どもたちの知的好奇心を十分に刺激し、学問・社会や芸術・スポーツなど本物の世界へ誘う役割を担っている。
<第4ステージ>中2〜中3…社会の中で自分らしさを追究する
中学校2年生から3年生にかけて、子どもたちは徐々に学校行事の運営等に携わるようになったり、自分の考えに強いこだわりをもつようになるなど、竹早地区からの巣立ちが近づくにつれて、次第に社会の中の自分らしさや自分の存在意義について意識し始める。この時期、教師は子どもたちのチャレンジ精神を見守り励まし、自主性を重んじて子どもたちを信じる姿勢が求められる。
成果と課題
公開研究会にいたるまでに進めてきた研究によって得られた成果と、その中で新たに生まれた課題については以下の通りである。
1.成果
(1) | 交流活動を中心に子どもたちの主体的な取り組みの様子が見られ、そのことを幼小中の教員が共感しあえたこと |
(2) | 4つのステージと11のステップを作成したことにより、子どもたちの成長を長い目でとらえられるようになったこと |
(3) | 幼小中の学校園間における様々な違いについて相互に理解が進んだこと |
(4) | 現代の教育課題にかかわるテーマで公開研究会を行い、子どもたちの取り組みに対して参会者よりプラスの評価を得られたこと |
2.課題
(1) | 第1ステージ、第3ステージにおける接続期のあり方を考えること |
(2) | 各ステージで育てたい力について検討・協議を始めること |
(3) | ステージとステップについて継続的に研究を進めること |
(4) | 幼小中における交流活動について開発と精選を継続すること |
(5) | 交流活動や合同研究会によって子どもたちにかかった負担を軽減すること |
(6) | 連携委員会のあり方や全体会の運営のしかたについて再検討すること |