リアル刺股三題


見た、リアル刺股(2005.06.06)

 出張先で通された校長室の片隅に、金具を下に向けて壁に立てかけてある刺股を発見。
 ああ、本当に配備されているんだ。
 応接室兼用のような、おそらく校内でもっとも上品な家具調度をととのえてある校長室に、無粋無骨な刺股。いかにも場違いな感じ。危機管理は学校における異物である=学校は制度も建築も危機管理を前提としてつくられていないことを象徴するかのようだった。
 その刺股が使われる日が永久に来ないことを願う。


持った、リアル刺股(2005.06.23)

 先日校長室に刺股を置いてあった学校を再度訪問し、なんだかんだ言いながらちょっと持たせてもらった。
 重い、というよりは猛烈なポイントヘビー。木製の柄の片方に大きな金属の部品をつけてあるのだから無理もない。思わず、前後を逆に持ちかえようとしてしまった。そのほうが銃剣格闘のように機敏に動かせるかと思ったからだ。しかしすぐ気づいた。そんなことをすれば大きなU字形の金具が脇の下につかえる。これは相手の変化に機敏に応じる道具ではない。ひたすらまっすぐ突くだけの道具だ。
 副校長のお話では、実際に単騎刺股で不審者と対峙して威勢よく刺股を繰り出しても、不審者の身体は「すっぽ抜けてしまう」のだという。金具にトゲ状のものをつけて衣服にからみつかせない限りそうなるのは目に見えている。
 この騒ぎ、結局刺股業界に思いがけぬ特需があっただけで終わるのか?


使えねえぞ、リアル刺股(2005.9.26)

 出張で訪ねたその小学校は、校舎ワンフロアに2丁ずつ、廊下に刺股が配備してある。 廊下でみると、思った以上に長い。
 「この長さだと廊下で立ち回りはできないですよね」と校長に水を向けてみると、校長はさっそくみずから刺股を手にとって、廊下の幅に合わせてみた。

 廊下の横幅より、刺股の全長の方が長かった。

 おいおい、これじゃ刺股持ったまま振り返ることもままならないじゃないか。刺股抱えて背中から刺されろってか。


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