Research

 本研究室では、有機化学的手法を用いることで、 フラーレンやカーボンナノチューブといったナノカーボン物質群の構造や機能を制御する研究を行っています。

 sp2混成炭素原子で構成される分子は、一般的に平面性を有していますが、上記のナノカーボン類は大きく歪んだ構造をもちます。

 また、拡張されたπ電子系を有していることから、従来の有機化合物にはない優れた機械的強度や物理的・化学的性質を有しており、基礎・応用研究において大変注目を集めています。

カーボンナノチューブの化学修飾

 カーボンナノチューブを化学修飾すると、分散性の向上、光学特性や電気特性の制御などができます。フラーレンに比べて曲率が小さく、反応性が低いことから、適切な化学反応を行なうことが重要となります。一方、カーボンナノチューブの側面のπ電子系に対して過度の化学修飾を行なうと、π電子系が消失していくために、本来もっているπ電子系に由来する特性が消失することも知られています。そのために、化学修飾率の制御も重要となっています。本研究室では、置換基効果を利用することで化学修飾率を制御する方法や熱処理を行なうことで化学修飾したカーボンナノチューブの化学修飾率を制御する方法などを開拓しています。










化学修飾率を制御した化学修飾により、近赤外蛍光特性の制御に成功。

バイオプローブなどへの利用が期待される。(Chem Commun 2015)









フラーレンの分子変換

 サッカーボール型の第三の炭素同素体であるフラーレン類は、その特異な分子構造に由来する様々な物理的、化学的性質を有しています。この特異な構造のフラーレンの化学反応性を解明するために様々な研究が展開されており、現在ではフラーレン誘導体が太陽電池のn型半導体としての利用も期待されています。当研究室では、これらフラーレンの分子変換法の開拓を行なっています。また、フラーレン内部に金属や金属クラスターを内包した金属内包フラーレンの分子変換についても研究しています。














金属内包フラーレンLa@C82の高選択的Diels-Alder反応の開発。        実験と理論のインタープレイにより、反応機構を解明。 (J Am Chem Soc 2013)

Chem. Eur. J. 2017, 23, 1789-1794.

(selected frontispiece)

J. Phys. Chem. C 2019, 123, 18113-18752.

J. Phys. Chem. C 2023, 127, 2127-2754.