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3. 共立型幼保一体化における実践内容

対象児達の日々の観察記録や幼保連携会議の議事録など様々な資料から、共立型幼保一体化における実践の内容を説明します。

(1)家庭との連携

1)連携開始期
連携開始期は、幼稚園で新たに必要となる持ち物について、幼稚園から直接保護者への説明がありました。幼稚園での教育活動時間内における保険や幼稚園のPTA組織における保護者間の連携や教材などの費用負担など、幼稚園に通園するにあたりシステムとして検討しなければならない多くの事項が生じました。形が整ってきた2年次(平成26年度)以降は、検討事項は減少しましたが、それでもなお、保育園、幼稚園が対応しなければならない様々な事項がありました。保護者には、保育園、幼稚園双方から、何のために何が必要かという丁寧な説明があり、保護者の生活の変化に対する不安の軽減が図られました。

2)日々の連絡
通常幼稚園では、降園時に保護者が迎えに来るため、そこで連絡事項を伝えていますが、保育園の保護者にはそれが難しいために、連絡帳を教育支援員が記入して保護者に保育園の担任が渡すという仕組みを作りました。しかし、幼稚園の担任が保護者に直接話さなくてはならないこともあり、初年次(平成25年度)は勤務時間外の対応も多々ありました。
この点について、2年次(平成26年度)は新たに保育支援員を雇用し、対象児達とともに幼稚園に行き、幼稚園の保育時間中は保育補助にあたり、対象児達とともに保育園に戻り、保育園、幼稚園双方の連絡事項を伝えるようにしました。保護者にとっては情報が伝わりやすく有効であることがわかりました。共立型幼保一体化のためには、このような役割を担える人材が必要であることがわかりました。

(2)職員間の情報共有

1)連携開始期
保育園籍の子どもが幼稚園に通うという両園では初めての試みのため、連携開始前後の時期は、幼稚園の生活で必要な物品の購入などの準備や、日々の連絡のやりとりの方法、保育に関する情報共有の方法について取り決めるために、幼保連携会議以外に臨時で会議を設けたり、幼稚園副園長、保育園園長、両園の保育者がメールや電話で連絡を取り合ったりするなど、綿密な打ち合わせが必要でした。幼稚園、保育園ともに4月の新入園児、進級児の対応に追われる多忙な時期であったため、大変な負担であり時間の確保が課題でした。

2)日々の連絡
日々の連絡については、それぞれの園での対象児達の様子や活動の報告、お便りの受け渡しなどの業務が必要でした。また、保育園側では、幼稚園から帰ってきた子ども達の様子によっては(たとえば、疲れているように見えたときなど)、幼稚園での活動について情報が欲しいときもありました。
このような業務など全てを担任保育者が担うことは、実質不可能であったため、プロジェクトでは教育支援員(2年次(平成26年度)は保育支援員)がその業務を担うことになりました。特に、2年次の保育支援員の役割は、対象児達の送迎の際にお便りの受け渡しや口頭での直接伝達にとどまらず、週案を検討する幼稚園や保育園の会議各々に出席し、双方の活動の計画や様子を必要に応じて伝えました。
また、保育園の保育者が、幼稚園の公開保育に参加したり、幼稚園の保育者が保育園の保育を参観したり、お互いの行事を参観するなどして、日々の保育について理解する努力があり、対象児達の各々の場での生活について、徐々にイメージできるようになりました。
さらに、専門研究員、教育支援員が子ども達の各々の場での日々の様子を記録し、Webファイルで管理し、幼保の保育者がそれぞれの施設で閲覧できるようにしました。

(3)子どもの生活の連続性

幼稚園と保育園を行き来する生活が始まる移行期においては、対象児達も保護者も不安な様子を見せることがありました。それに対して、幼稚園、保育園では、対象児達については保育中の様々な活動をとおして、課題が解決できるように丁寧に対応を重ねていき、対象児達は行き来する生活に慣れていきました。
保護者については、時には個別の対応をしながら、対象児達の成長を共有できるようにしていくなかで、担任保育者と保護者の信頼関係が育まれ、卒園時には、対象児達の成長を非常に喜んでいました。
幼保連携会議では、幼稚園、保育園の各々場で見せる対象児達の姿と保育者の手立てを共有するようにしました。
以下では、幼保連携会議での話し合いや対象児達の記録、対象児達の担任保育者と保護者へのインタビューを基に各々の場面ごと様子をまとめたものを説明します。

 1)生活場面
【お弁当】
幼稚園では、園児たちは保護者が用意したお弁当を昼食に食べていますが、対象児達の保護者は就労している為、毎日のお弁当を用意することが大変であるということから、保護者の要望で保育園が用意するお弁当(保育園の給食をお弁当用にアレンジしたもの)を食べることになりました。
お弁当について、幼稚園では「子どもが好きなもので、食べきれる量を入れる」という方針でしたが、保育園では、対象児達は食べる量は少なくないと認識されていたことから、連携開始当初は大きめな弁当箱に栄養バランスを考慮した様々なおかずが入っていました。
対象児1名は偏食傾向があり、保育園のお弁当を全て食べることができないこともありました。保育時間の長い対象児達にとっては、昼食は重要な一食となるため、お弁当が少しでも多く楽しく食べられるようにと、お弁当箱のサイズを小さくしたり、対象児が食べられるものを増やしたり、詰め方を可愛らしく工夫するなど、保育園園長や管理栄養士によってさまざまな工夫がなされました。
また、幼稚園の担任保育者と教育支援員も、対象児が無理なく楽しくお弁当を食べられるように、優しく声掛けをしたり、時には無理をさせないように見守ったりと、対象児の様子に合わせた様々な配慮がなされました。
その他、お弁当は保育園で調理ができた昼頃に、保育支援員(最終年次(平成27年度)は教育支援員)が保育園に受け取りに行き、対象児達のもとに届けられました。そのため、お弁当を準備する際に他の幼稚園児とタイミングが異なってしまうこともあり、時に対象児達を不安にさせる要因となりました。
これらの点は、たびたび幼保連携会議で話題となり、幼稚園、保育園での各々のお弁当の考え方についての理解や、各々の場での対応について共有しました。幼稚園と保育園の保育者の子どもの気持ちに配慮した対処により、安定した気持ちで徐々に苦手な食材も食べられるようになるなど、ゆっくりと変化していきました。

【送迎】
幼稚園の登降園は通常、保護者が送迎を行いますが、対象児達は保育支援員や教育支援員などが行いました。連携開始当初、対象児達は送迎が保護者でないことを寂しがる様子も見られまし。また、連携開始当初は保育園以外の場所に行くということに対しての不安が表れることもありました。保育者との信頼関係が形成され、自分は保育支援員が迎えに来るものと納得できるようになると、落ち着いていきました。対象児達の保護者からも心配する声がありましたが、幼稚園・保育園の担任や送迎を担当する保育支援員や教育支援員からの丁寧な説明によって、安心を得ることができました。
また、送迎のコースを、通常幼稚園に通う園児とは異なる近道にしたこともありましたが、送迎の間の他児とのやりとりの楽しさや気持ちを切り替えていくには、他児と同じコースの方がよいようでした。

【午睡】
対象児達が幼稚園から戻ると、身支度を整えて、午睡に入ることが常でしたが、連携開始時は、寝付きが悪い様子も見られました。保育園では保育者が対象児とスキンシップを多くとるなど個別の対応がとられました。幼稚園と保育園を行き来する生活に慣れるに従って対象児は徐々に落ち着いていき、対象児の保護者の安心を得ることができました。
年長後半になると、就学に向けて午睡を減らしていくなど、小学校に向けての生活を配慮するようになりました。

【夏休み】
幼稚園の夏休みには、対象児達は保育園で一日過ごしました。
対象児達にとっては、保育園の生活が長かったために保育園で一日を過ごす生活にスムーズに移行することができました。保育園では、時に年長の子どもが一日いるからこそできる活動も取り入れながら、基本的には安定感を持って生活できる場を工夫していました。
対象児達には、年少の子ども達とゆっくり関わって遊ぶなどの姿が見られた。夏休み後半には幼稚園に通う生活がスムーズにスタートできるように、幼稚園に遊びに行くなど、保育園側の工夫した配慮が行われました。
最初の夏休みが明ける時は、幼稚園に行くことに不安な様子も見られましたが、新学期が始まると、幼稚園での活動や友達と会えることを楽しみに元気に登園していました。

2)人間関係
幼稚園では、熟達した保育者の元で、同年齢の様々な子ども達との関係の中で様々な活動に取り組み、卒園時には、自己主張する力や自己調整する力などの成長の喜びが対象児達の保護者から聞かれました。
保育園では、長い園生活のなかで信頼関係を築いた保育者の元、安定した環境の中で異年齢の子どもと関わり、年少の子どものお世話をしたり、可愛がったり、リーダーシップをとったりするなどの姿や育ちが見られました。
子ども達は、時に保育園の人間関係に支えられ、時に幼稚園での人間関係によって気持ちが安定するなど、2つの園を拠り所としていました。2年目に同じ学年で保育園から幼稚園に通う子どもが増えると、その子ども達との繋がりが強くなり、幼稚園で仲間関係が狭まってしまうことが懸念されましたが、幼稚園の行事にむけたグループづくりなど、熟練した保育者の日々の保育実践によって、対象児達は幼稚園で多くの仲間と良好な関係を築くことができました。

3)遊び
幼稚園では広い園庭や様々な遊具のある環境の中で、様々な遊びに取り組むことができました。はさみなど、保育園では低年齢児の子どもがいるために使用する時間が決められているものでも、幼稚園では必要に応じて使用することができました。また、同年齢が多人数いる環境だからこそ出来る経験も可能となりました。
保育園では、異年齢の小さい集団の中で、安定して遊ぶことが出来ました。各々の場の特性を生かした遊びを保育者の支援を受けながら展開していました。
保育園では、対象児達から幼稚園で経験した遊びを保育園でも同じように遊びたいという要望などもありましたが、幼稚園のその日の遊びを再現することはなかなか難しく、幼稚園と保育園で連続した遊びを展開するというよりは、各々の場の特性を生かした遊びに取り組むことが、共立型幼保一体化においては、現実的だと思われます。
お互いの特徴とできることを幼稚園と保育園で共有していくことで、各々の場の特性を生かした保育を自覚的に展開することができました。

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