本学数学科卒,現附属国際中等教育学校の小林廉教諭が日本数学教育学会「学会賞(実践研究部門・中学校の部)」を受賞しました

本学B類数学専攻卒,および修士課程,連合大学院を修了し,現在は附属国際中等教育学校にて勤務している小林廉教諭が,日本数学教育学会「学会賞(実践研究部門・中学校の部)」を受賞しました。

2019年に発刊された『日本数学教育学会誌』に掲載された論文の中で,特に優れた論文であることが認められました。

受賞論文:
小林廉(2019),「ヒストグラム本来の意味理解を促す学習指導に関する一考察
-階級幅の異なるヒストグラムを創出する活動を通して-」,『日本数学教育学会誌』,101(1),3-11.

論文要約:
推測統計の素地指導としてヒストグラム本来の意味理解を促すために,階級幅の異なるヒストグラムを扱う必要がある.本研究の目的は,階級幅の異なるヒストグラムの認識に関する生徒の実態の一端を明らかにし,ヒストグラム本来の意味理解を促す学習指導について示唆を得ることである.そのために,中学校第1学年「資料の活用」領域において階級幅の異なるヒストグラムの創出を課す授業を実践し,抽出生徒にインタビュー調査を行い,生徒の認識を「モデル転換プロセス」を視点として分析した.結果として,度数や相対度数を柱の「高さ」ではなく「面積」で表すという認識に至るには,柱の「密度」を表すイメージを有していることが決定的であることを明らかにした.また,量的データをドットプロットに表す活動を基に階級幅が一定のヒストグラムを導入することによって,柱の「密度」を表すイメージづくりを行い,その上で階級幅の異なるヒストグラムの創出を課すと,ヒストグラム本来の意味理解を促すことが期待できるという示唆が得られた.

受賞理由:
本研究では,ヒストグラムの柱の高さが相対度数密度を表すこと,すなわち,確率密度につながるヒストグラムの本来の意味理解を促すために,階級幅の異なるヒストグラムを用いた授業を構想し,授業実践を行っている.そして,授業中の生徒の反応やインタビューを,筆者がこれまで精緻化してきた「モデル変換プロセス」に基づいて,RMEモデルと対比させながら詳細に分析することにより,階級幅の異なるヒストグラムを創出するプロセスを明らかにするとともに,学習指導上の示唆を導出している.高等学校の確率密度関数の学習指導に対しても示唆的であり,学会賞(実践研究部門)に値する論文である.

本学数学科卒,現附属国際中等教育学校の小林廉教諭が日本数学教育学会「学会賞(実践研究部門・中学校の部)」を受賞しました