【副学長インタビュー】陸上部、剣道部における教育研究活動について聞きました

陸上部、剣道部における教育研究活動について聞きました

陸上部顧問:繁田進 剣道部顧問:奥村基生 利き手:濵田豊彦

濵田:まずは陸上部の関東学生陸上競技対校選手権での2部優勝おめでとうございます。コロナ禍なのに学生さんたちはよく頑張りましたね。

繁田:29年ぶりの優勝です。この間1部に上がったこともあるんですけど、ちょうど今年の関東陸上は第100回の記念大会でしたしうれしいですね。キャプテンを中心にみんなよく頑張りました。

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濵田:剣道部も関東の学生ナンバーワンを決める一発勝負のトーナメント(関東学生剣道選手権大会)でインカレへの出場を3人も決めたと聞きました。一度に男子が3人もインカレを決めたのは初めてじゃないですか。

奥村:そうですね。関東の大会はインカレよりも勝つのが難しいときがあるんですよ。インカレは全国の大学の代表(剣道が盛んでない地域もある)なので1回戦、2回戦は実力的にも本学の選手が上回っている場合もあるのですが、関東は日本一になるような選手と1回戦からぶつかるので本当によくやりました。

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濵田:新型コロナの感染が1年以上続き、感染予防や学生さんのモチベーションの維持などご指導も難しかったんではないですか。教育研究活動としての許可にあたっても、教員の同行は当然として、指導計画の他に、器具の消毒や一度に参加する人数の上限、遠征の時の移動方法、学生たちの健康管理の徹底等々相当面倒なやり取りを僕のところでさせてもらっていますが・・・・。

繁田:陸上は感染対策に関して陸連がかなり厳しいガイドラインを出しているのでそれをきっちり守らせるということがまず基本ですね。特に毎日の健康管理を記録させるのですが、最初は紙ベースでしたが今はアプリでの管理になっています。紙での提出だと接触感染のリスクもありますからね。検温はもちろん、咳、鼻水等々詳細な記録です。特に、競技会前2週間から競技会中、競技会後も2週間は健康管理記録の提出が義務付けられています。

濵田:剣道は屋内での接触スポーツですから一層厳しいんではないですか。

奥村:そうなんです。剣道は入学試験でも実技を避けるようにと名指しされたくらいですから。

繁田:確かに声を出すし鍔迫り合いで顔も近づくもんね。

奥村:そうですね。それで剣道のガイドラインでは今は鍔競り合いになったらすぐに離れないと反則を取られることになっています。選手は練習や試合ではマスク着用のままで、かぶる面の前面にシールドを貼って飛沫を飛ばさないようにしています。

濵田:面の下でマスクもしたままなんですか!息が上がってしまいますね。

奥村:だから適宜休憩させるのも綿密に考えながらやっています。また、ウエイトトレーニングをするグループを分けたり、舞踏場なども使わせてもらってとにかく密にならないようにしています。

濵田:陸上も剣道もいい成績を残されたわけですが、先生方の教育研究ということで取り組まれていることがあったら教えてください。

繁田:陸上は競技種目も多いし部員も多いので、日頃の練習においてもあらゆる競技で動画を撮って即時フィードバックをしています。自分がどう体を使っているかはことばではなかなか伝わらないですからね。実際の姿を振り返ることで改善点が理解されます。選手同士で動きを確認したり、教え合うことにより、実践的な指導演習になっています。最近、コロナ慣れして学生同士が動画の確認をしているときにマスクしないままだったり近づいて話したりということが見られるので、その注意が大変ですね。

奥村:コロナ慣れは確かにあるので、僕も気をつけています。

濵田:コロナ慣れは、学生だけではなくて世間全体がそうだと思いますが、ここまで厳しく感染対策されてきたんですから、しっかり徹底してくださいね。

奥村:フィードバックに関しては、剣道も道場に4台の撮影システムをセットしてあって自分の動きを目で確認できるようにしてあります。

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でも、学生はただ見るだけでは十分に理解できないです。その動きを構成する細かい技能などに目が向けられるようにしてあげる必要があります。たとえば、剣道で必要な相手に対応する技能の習得を目指した練習を学芸大では大切なものとしてやらせていますし、必要な筋力をつけさせるためにウエイトトレーニングも積極的に取り入れています。剣道は武道で伝統を重んじる世界ですから、ウエイトトレーニングは普通やらないんですね。練習やトレーニングじゃなくて稽古ですから。他の大学から見ると筋力トレーニングや相手に対応する技能の練習は何のためにやっているのか理解されないかもしれません。

最初は学生もなぜやらされているのかがピンと来てないのですが、繰り返すうちに自分で細かい動きも意識できるようになります。そうすると、放っておいても自分から練習できるようになります。僕の研究の専門は運動制御・学習なんですが、究極的には指導者としての僕がいなくても学生自らがそのような練習を自分でできるようになることを目指しています。

繁田:奥村さんのような中堅の力のある指導者が教えると学生は伸びるんですよ。

奥村:今回インカレに勝ち残った3人はスーパーアスリートで入学した選手ではないんですよね。

繁田:ええ!それはすごいね。奥村さんの科学的な指導の賜物だね。

奥村:ありがとうございます。また今回の結果がスーパーアスリートで入ってきた学生はじめ勝ち残れなかった学生たちに、いい刺激を与えていると思っています。ですので、次回はその子たちが「なにくそ」と頑張ってくれることを期待しています。

濵田:コロナ禍で大会が中止になったり延期になったりする中で学生たちのモチベーションを維持するのも大変でしょう。

繁田:確かに制限が多いけど、今年は大会がまだあるから。去年は、練習は再開できたものの大会が中止になったからね。去年の4年生はほんとにかわいそうでした。

奥村:そうでしたね。

繁田:でも、最後の挨拶で「感染の広がっているこの時代に誰一人感染者を出さないで練習をやり通せたことが一番価値のある勲章なんだ」という話をしたんです。そういう悔しい思いをした先輩たちを見てきているから今年の学生は強いのかもしれませんね。

濵田:コロナ対策という制限だけでなく、大学生がスポーツをすること自体への社会の逆風みたいなものも感じながらですから、学生たちは多くを学ぶでしょうね。

奥村:そうですね。この状況で練習している学生を見ていると、自分の行動がみんなにどう影響するかをこれまで以上に考えることができるようになっているなと感じます。みんなというのは部員の仲間はもちろんですが、剣道をやっている全国の仲間、もっと言うと大学スポーツに取り組んでいる全員に対してですね。教壇に立った時、あるいは他の道を選んだとしても、みんなのことまで考えて自らの責任を踏まえた行動をする姿勢は生きるものだと思います。

濵田:いいお話を聞くことができました。学生が育っている話は何よりうれしいですね。

今年度はコロナ禍にあっても可能な範囲で大会が行われるでしょうから、感染対策を徹底しながら一層の活躍を期待しています。今日はありがとうございました。

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写真左より、奥村基生 准教授、繁田 進 教授、濵田豊彦 副学長(学生支援担当)
※撮影時のみマスクを外しています。

追記:

新型コロナ感染症の影響を受けて、本学は課外活動を緊急事態宣言が出るたびに制限をしていましたが、6月1日から公式大会に向けての練習は認めることとしました。運動系であれ文化系であれ、学生自身が主体的に活動し互いに切磋琢磨する場で、そこから学ぶものも少なくないことを承知しているからです。課外活動に関して自由度が少し広がったということは学生のみなさんの責任がその分増したということです。一人一人の行動が全国で感染予防に努めながら取り組んでいる学生全体の信用失墜につながることがないように気をつけて、意義ある活動にしてください。

文責 濵田豊彦 副学長(学生支援担当)