東京学芸大学 男女共同参画推進本部
Office of Promoting Gender Equality at Tokyo Gakugei Univ.

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第19回男女共同参画フォーラムを開催しました。

【掲載日】2015.07.13

2015年7月1日(水)、第19回男女共同参画フォーラムを開催した。今回は、4限・5限の時間帯を使い、 「セクシュアルマイノリティ/私たち-学びのなかのダイバーシティ」をテーマに、 宇都宮大学教員の艮香織さんと、パフォーマンス・アーティストのイトー・ターリさんをお招きした。

艮香織さんには「学校教育におけるセクシュアルマイノリティ」と題して40分ほどの講演をお願いした。 セクシュアルマイノリティというテーマが“男女共同参画”や“男女平等”の“オプション”ではなく、 人権そのものに関する主要なテーマであることをふまえ、LGBT(レズビアン・ゲイ・ バイセクシュアル・トランスジェンダー)や性の諸側面(性別自認・性指向・身体の性) などについての基礎知識と、国内外での取り組みの経緯を説明していただいた。 また、そうした性の多様性の中にさらに多様性があるといった点や、教員の側の対応の適否、 マジョリティも当事者であるといった指摘など、授業実践の経験と家庭科教育の知見を ふまえた実り多い講演となった。

イトー・ターリさんには、1996年にご自身がレズビアンであることをカミングアウトしたさいの 作品「自画像」の縮約版を、ご本人の解説とあわせて視聴したあと、「セクシャルマイノリティを パフォーマンスする」と題して、やはり40分ほどの講演をお願いした。 1970年代から追求しているパフォーマンスという表現方法の意味やそこにいたる経緯、 1990年代にジェンダー概念と出会ったことが画期的な意味をもったことなどを説明して いただいたうえで、セクシュアルマイノリティを軸に制作された5作品「自画像」・ 「わたしを生きること」・「恐れはどこにある」・「虹色の人々」・「Rubber Tit」の 内容と趣旨を解説していただいた。カミングアウトするさいに感じた自己肯定の喜びや、 レズビアンという用語が主催者によって事前検閲されたときの経験、女性器を表象することの 意義。また、家父長制や異性愛中心主義・結婚制度のもつ諸問題や、石原前々都知事の ホモフォビア発言への抗議、他のマイノリティへの視点など、日本社会におけるセクシュアルマイノ リティのポジションについて多角的に考察していただいた。

さらに、今回のフォーラムでは新しい試みとして、男女共同参画支援室で協力してもらっている 学生サポーターと講演者との座談会の場を設けた。学生サポーターからは、 金澤良汰さん・佐藤紀鈴さん・井上敦司さんの3人に参加してもらい、 フロアーの来場者も含め活発な意見交換を行うことができた。 艮さんの講演との関係では、セクシュアルマイノリティをテーマにした授業実践のポイントや、 「ゲイ」ネタ・「ホモ」ネタで“笑い”を取る生徒への対応(そのなかにはゲイ自身が 自らの保身のために“笑い”に加わるケースも考えられる)、また、このテーマを教育実習で 取り上げる困難などについて議論された。 イトーさんとの関係では、社会の固定的なジェンダー秩序の問題や、「レズビアンの芸術」 として一方的に規定される窮屈な状況、他のマイノリティの問題といかに架橋するかといった点などが 議論された。その他、“まずは女性の問題から”といった通念の存在をはじめ、 日米比較の視点や現在の危機的な政治状況などについて有意義な討論を行うことができた。

今回の企画は、OPGE助成金制度の廃止にともない、全く新規の企画として準備したものである。 平日かつ雨天という不利な条件ではあったが、幸い58名の参加者を得て盛会となった (本学教職員15名、本学学生28名、地域住民6名、その他9名)。 協力していただいたみなさんには、この場を借りて厚くお礼申し上げる次第である。 (文責 及川英二郎)

艮香織さん

艮香織さん

イトー・ターリさん

イトー・ターリさん

会場の様子

会場の様子

学生サポーター

学生サポーターと講演者