東京学芸大学 男女共同参画推進本部
Office of Promoting Gender Equality at Tokyo Gakugei Univ.

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第21回男女共同参画フォーラムを開催しました。

【掲載日】2017.1.25

2016年11月5日(土)、第21回男女共同参画フォーラムを開催した。小金井祭期間中を利用して、午後2時から5時30分まで、「性教育は今~若者と「性」-学校教育ができること~」をテーマに、大倉韻さん(首都大学東京大学院博士後期課程)と、田代美江子さん(埼玉大学教授)にご講演いただいた。大倉さんは、報告予定だった羽渕一代さん(弘前大学准教授)の代役として急遽ご登壇いただいた。

まず大倉さんには、「日本の若者の性愛に関する意識や行動の実態と変化~「青少年の性行動全国調査」報告~」と題して60分ほどのお話をお願いした。日本性教育協会が6年ごとに行っている全国調査をもとに、「デート経験率」「キス経験率」「性交経験率」や「性」に対する「関心の有無」「経験の有無」などを中学生・高校生・大学生/女子・男子で比較検討していただき、性行動が総じて低年齢化する傾向にある反面、恋愛至上主義的価値観は低下していること、また男子の傾向として問題視されがちな「若者の草食化」がむしろ女子において顕著であること、「草食」と「肉食」の二極化が進展していること、「性的関心なし・性交経験あり」の女子が増加傾向にあることなどが指摘された。また、男子の能動性と女子の受動性といったジェンダー規範が恋愛経験にも作用していることや、性暴力被害の推移と実態など、多岐に及ぶ論点を提示していただいた。

“人間と性”教育研究協議会(性教協)の代表幹事であり『季刊セクシュアリティ』の編集長でもある田代さんには、「日本における性教育の現状と課題―子どもの要求に応える性教育を―」と題して、やはり60分ほどの講演をお願いした。国際的な動向やアジア諸国・諸地域の取り組みを紹介していただいたうえで、日本のファッション雑誌や公共広告における性情報の氾濫、JKビジネスの実態、それに反して「性」を科学的に教えようとしない教育の現状や、人権学習の欠如、権利としての健康という視点の欠如などの問題点をふまえ、「性の権利」として「包括的性教育」を行っていくことの重要性が強調された。そして、現行の学習指導要領のなかでも、さまざまな教科で「包括的性教育」が実践できること、そうすることで「性」についてポジティブなイメージをつくり、何よりも性教育を受けた子どもが変わり、性教育を行った教師が変わること。そうした性教育は、子どもが信頼できる大人に出会い、大人が子どもに信頼される喜びを実感できる豊かな場であることなどが指摘された。

つづいて、男女共同参画支援室で協力してもらっている学生サポーターから、中学校保健体育の教科書記述を比較検討する報告が行われた。学習指導要領を前提にしながらも、「異性」や「性差」に関するあつかいに差があること、性感染症予防の項目で「性的接触の忌避」と「コンドームの使用」に言及する構成に難点があることなどが指摘された。これらをふまえ、座談会では本学教員(養護教育講座)の鈴木琴子さんより、若者の性経験に限らず、さまざまな場面で二極化現象が見られることや、性教育実践におけるジェンダーバランスについてコメントいただいた。また、学生サポーターの4名に参加してもらい、フロアとの質疑応答もまじえて、性教育のリアリティや多様な性をふまえたモデルのあり方、現場教員へのアドバイス、大学教育の現状などが討論され、日々の細かい実践のなかに、状況を変えていくきっかけがある点などが確認された。参加者は48名(本学教職員17名、本学学生16名、地域住民1名、その他14名)。(文責 及川英二郎)

大倉韻さん
  • 大倉韻さん

    田代美江子さん
  • 田代美江子さん

    発表報告する学生サポーター
  • 発表報告する学生サポーター

    学生サポーターと質問に答える鈴木琴子さんと演者
  • 学生サポーターと質問に答える鈴木琴子さんと演者