国立大学法人 東京学芸大学 平成20年度 専門職大学院等における高度専門職業人養成教育推進プログラム「実践的指導力育成を保証する評価指標の開発」 平成20年度 専門職大学院等における高度専門職業人養成教育推進プログラム「実践的指導力育成を保証する評価指標の開発」
ポートフォリオ

ポートフォリオとは?

1 ポートフォリオ及びポートフォリオ評価の定義

(1)ポートフォリオの定義:教育研究におけるポートフォリオとは、学生の「収集資料」や「研究成果物」、自己評価の「記録」、指導者の指導と評価の「記録」などを、系統的に蓄積していくものです。
(2) ポートフォリオ評価の定義:ポートフォリオ評価とは、ポートフォリオの作成を通して、学生の教育研究に対する自己評価を促すとともに、指導者も学生の教育研究活動と自らの教育研究活動を評価するアプローチのことです。

2 ポートフォリオ評価の意義

 ポートフォリオを用いた評価には、以下のような意義があります。
(1)ルーブリックを用いて課題研究等の実態に基づき目標準拠評価を行うことができます。
(2)ポートフォリオを介して、個に応じた具体的な指導を行うことができます。
(3)課題研究等への取り組みを通じて、自己評価力を育成することができます。
(4)課題研究等の成果や課題に関する説明責任を果たすことができます。

3 ポートフォリオ評価の6つの原則

 ポートフォリオを用いた評価には、以下のような6つの原則があります。
(1)ポートフォリオの作成は、学生と指導者との共同作業です。
(2)学生と指導者が具体的な「作品・記録」を蓄積します。
(3)蓄積した「作品・記録」を一定の系統性に従い、並び替えたり取捨選択したりして整理します。
(4)ポートフォリオづくりの過程では、学生と指導者、学生同士などで「ポートフォリオ検討会」を設定します。
(5)「ポートフォリオ検討会」は、学習の始まり・途中・締めくくりの各段階において行います。
(6)ポートフォリオ評価は長期的で継続的に行います。

4 ポートフォリオ評価の主な観点

ポートフォリオ評価における主な評価の観点例は、以下の5点を挙げておきます。
(1)視点Viewpoints:課題研究等の視点は明確か
(2)横断性Connections:課題研究等関わる横断的・総合的な領域を理解しているか
(3)論証Evidence:課題研究等の主張や結論の根拠はあるか
(4)表現の仕方Voice:課題研究等の成果や課題を簡潔に説明できるか
(5)書式Convention:課題研究等の報告書や成果物などは適切な書式でできているか

5 ポートフォリオの種類

 ポートフォリオの種類は、大別して3つに分類することができます。
(1)収集開始段階:ワーキング・ポートフォリオⅠ
・学生は、指導者よる指導のもと、課題研究等に関わるすべての「作品・記録」を時系列に沿って集積しながら、絶えず課題研究等の到達点と課題を確認していきます。
(2)中間総括段階:ワーキング・ポートフォリオⅡ
・学生は、指導者よる指導のもと、ワーキング・ポートフォリオⅠの「作品・記録」を課題研究等の進展に沿って系統的に整理したり、必要不可欠な「作品・記録」を抽出したり、中間段階での到達点と課題を明らかにしていきます。
(3)最終総括段階:パーマネント・ポートフォリオ
・学生は、指導者よる指導のもと、課題研究等の成果と課題を示すために、ワーキング・ポートフォリオⅡから必要な根拠資料や説明資料となる「作品・記録」を抽出し、系統的かつ総括的に整理します。

6 ポートフォリオ検討会

学生と指導者又は学生同士が、あらかじめ設定された「ルーブリック」等に準拠して、面接や対話を通して当該学生の自己評価を促し、到達点や成果、問題点や課題とその克服の方途などを明らかにしていきます。
ポートフォリオ検討会は、個別での指導、グループごとの指導、全体での指導等様々な場面に合わせて行います。学生は、課題研究等の省察や検討会において自らの到達点や課題等に対する根拠資料・説明資料としてポートフォリオを用意します。