国立大学法人 東京学芸大学 平成20年度 専門職大学院等における高度専門職業人養成教育推進プログラム「実践的指導力育成を保証する評価指標の開発」 平成20年度 専門職大学院等における高度専門職業人養成教育推進プログラム「実践的指導力育成を保証する評価指標の開発」
ルーブリック

ルーブリックの使い方

1 「課題研究」におけるルーブリック指標とは
このルーブリック指標は、各自が「課題研究」を進めていくにあたって、研究内容面や研究方法面、研究の推進面に関して、道しるべになるものです。問題意識を深めたり、テーマを絞り込んだりするなど、様々な時期に活用が図れるように、工夫した活用の仕方を身につけるとよいでしょう。
 

ここでは、特に次の4点について、留意することにします。
①研究の現在位置を確かめて、次のステップに向けた努力目標を見定めるのに使う
自分がどの段階にいるのかをチェックすることで、研究の現在位置が分かります。さらに、次のステップに移るには、何と何が必要だというハードルも同時に見えてきます。越えるべきハードルが何かを明らかにすることが大切になってきます。
②自己の評価と他者の評価の一致点やズレを意識する
自分で行うことで、自分の現在位置を自覚することができます。さらに、指導担当の先生方や、同じグループ内のメンバーなど、他者の眼から見た段階と比べてみることが必要です。その時に、一致している項目やずれている項目に着目して、研究の現在位置を妥当性のあるものにしていきます。
③話し合いで研究の大きな方向性を見いだす
指導担当の先生と指標をもとに話し合いをもちます。自分の研究で足りないところや弱いところはどこなのか。その問題点を明らかにすることと、どこに向かおうとする研究なのか、大きな方向性の検討資料となるように進めることが必要です。研究の方向性を見いだす活動は、常に意識していきたいことです。
④自ら気づいた新しい視点を意欲的に取り入れる
この指標に入りにくい点が出てきたら、自分なりの観点を出して加えていくとよいでしょう。自分なりの視点を設けることで、より自分らしい進め方ができるようになります。そのときにも、他の点については、この指標を基に考えを発展させていくとよいでしょう。

2 基本的な使い方の道筋
 
  ①他者の眼を通すこと
自分だけの評価にならないように、指導担当の先生や同じグループの人たちの目を通すようにします。そのことで、自分の気づかなかった点について、理解が深まるでしょう。
  ②話し合うことで意味を理解する
この指標をもとに話し合いを行うことで、研究内容の方向性や研究方法の有効性や妥当性を話し合ったり、研究の発展性までをも見通して、研究が進むようにしていきます。さらに、自信が持てるところまでステップアップできるようにします。
  ③自己のよさの伸張や弱点の補強を行う
見えてきたものが、自己の自信につながるよさであれば、さらに見通しをもって臨むことができます。ところが自分の弱い点については、引き上げるためのアドバイスをたくさんもらうことになります。何が問題で何をどう進めていくことがよいのか、自分の研究の羅針盤代わりになるのです。
  ④自分なりの視点を生み出す
その時々において、自分なりのユニークな視点に気づいたら、自由記述欄にメモしておきます。そのことで研究が進むようであれば、自分なりの視点も生かすようにします。

3 目的と時期について
このルーブリック指標については、目的にあった使用法を考えていくことで、効果をさらに高めていくとよいでしょう。
  ①アウトラインをつかむ【●現職;4月  ○ストレート;1年目の4月】
はじめのガイダンスで、課題研究に関する研究のアウトラインをつかみます。その時に、どんなことができそうなのか、研究に対するビジョンが描けるときの参考資料となります。この時期では、この指標をもとに構想をふくらませる使い方がよいでしょう。
  ②仮のテーマを設定する【●現職;5月  ○ストレート;1年目の5月~7月】
とりあえず自分なりに行ってみたい研究分野や研究方法について考えます。そして、およそイメージできたものを研究の出発点として、第一段階をクリアしているかを見ていきましょう。
  ③問題意識を絞り込む【●現職;6月~7月  ○ストレート1年目の8月~12月】
この時期は、教職経験をもとに、または実習校での取り組みをもとにして、自己の問題意識を明確にするために、絞り込みを行います。次のステップを意識しながら、絞り込みを続けます。
  ④テーマを変更修正する【●現職;8月~9月 ○ストレート1年目の1月~3月】
研究の方向性に確かな道筋ができない場合に、研究テーマの変更や修正が考えられます。また、教職大学院の授業科目の進展によっても影響を受けることでしょう。テーマ修正をもとに、研究の方向性をシャープにします。
  ⑤研究の現在位置を確かめる【現職;10月~ ○ストレート2年目の4月~】
研究の進展に伴って、各自の研究が個性的に積み重なっていきます。迷いが生じたり、時々位置を確認するときに、この指標を手元に置きながら使います。

4 実際の活用にあたって
このルーブリック指標の実際の見方について触れておきます。
  ①各項目について
課題研究を進める上での内容項目が二つ、方法項目が二つ、推進項目が二つずつあります。
  まず、内容面の項目からです。教育の実践性と現代性がどの程度意識されているかを見ます。実践性は、学校教育のどこを改善しようとしているのか、その内容領域を絞り切れているかがポイントになります。より実践的な内容となっているかを見ます。次に、現代性です。現代教育課題は、複雑多岐に及んでいます。国際化、高度情報化、少子高齢化など社会の大きな変化にあって、教育の課題も変化しています。基礎学力の問題や児童生徒の問題行動や社会性の問題、地域や保護者との連携の問題など、様々な教育課題に対して主体的な対応を内容としているかを見ます。
  次に、方法面の項目です。研究性と課題性についてです。研究性は、先行研究の水準を把握しているかです。先行研究には、理論研究と実践研究があります。その両者の研究水準をつかみます。課題性については、自己の教職経験や実習経験から、課題を分析的にとらえようとしているかです。さらに、研究の進め方に妥当性があるかを見ます。
最後は、研究の推進面です。協働性とリーダー性があります。協働性は、研究を進めていく上で、様々な機関や研究者・実践者と連携を取りながら進めていかなければなりません。リーダ性については、教職大学院の授業など、身につけた見方や取り組み方などを生かした進め方になっているかを見ます。
  このように、各項目の意味や意義をとらえて、指標としてほしいと思います。
  ②各項目の段階について
第1段階は、陥りやすい努力目標を挙げています。早い段階でクリアできる手だてを講じるようにします。第2段階は、必要最低限を示しています。充分クリアできるように取り組むことが求められます。第3段階は、研究水準の確保として、必要十分な目標値になります。この点をクリアできるように進めていきます。なお、第4段階は、かなり進んでいることで、自信につながる部分ですので、必ずしも全員が到達できるものではありません。そのことを踏まえながら取り組むようにします。
  ③記入について
その時期の段階チェックが残るように、これまでの研究の推移が分かるようにします。さらに、自由記述の欄に残すことで、自己の問題意識を掘り下げた活動が期待できます。
  ④時期をおいて使用する
この指標は、あくまでも研究の大きな方向性等を見いだすためのものです。研究が具体的な場面に入ったらリフレクションシートを活用するようにします。
  ⑤リフレクションシートと並行した活用法
研究の進展に伴い、リフレクションシートを使用しているとき、いつも横に置いて指標から外れないようにします。必要に応じて然るべき時期に何度でも行うことができます。